始まりの風が吹く日2
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「ごめん、ごめん。ちょっと待ってて。今なんとかするから…」
そう言ってオレは辺りを見回した。
「ほっとけっつってるだろっ!こんな穴、足を挫いてなきゃ簡単に…」
穴の中から強気の言い訳。
「そりゃ、無理っしょー」
いくらオレ達がすばしっこいって言っても、それは水平方向への話であって、垂直方向には無理でしょ。
爪があるわけじゃあるまいし…。
「あ、あった!」
オレは少し遠くへ転がっていた木の枝を拾ってきて、穴の中に差し入れた。
「届く?足、大丈夫?オレが降りてって、おんぶしたげようか?」
その申し出を、
「いらねぇ!!自分で昇れるっ」
驚くほどの勢いで拒否されて、腹が立つよりも、可笑しくなった。
きっと今、穴の中の子は真っ赤になってるんだろうな…。
声から察するに、男の子みたいだけど、どんな子かな?
きっと、声と同様可愛い子に違いない。
この手のオレのカンは、外れたことないんだよね。
早く出てこないかな…。
オレはどきどきわくわくしながら、穴の入り口を見詰めた。← | → [ TOP ]