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じゃんけんは最初にパーを出せ!!


「おじゃましまーっす!」
「じゃまするぜー!」
「ここが三成の新しい家かあ。いいところだなあ」
「なぜ貴様がいる家康うううううう!!!!!」

土曜日。朝の十時。玄関に男の人の声が響きわたっていた。四つ。
なにかを大声で叫んでいるお兄ちゃんと、挨拶をしている島さんの声。それからあとは聞き覚えのないものだった。たしか二人友だちが来てくれると言っていたはずだったが、もう一人増えたのだろうか。なんにしろありがたいことである。
私は階段を降りていって
「こんにちは。今日は来てくださってありがとうございます。よろしくお願いします」

玄関には、左目を医療用の眼帯で覆った大柄のお兄ちゃんとよくにた髪色をした男の人と、爽やかという言葉がまるでそのまま人に姿を変えたかのような笑顔が眩しい男の人が立っていた。あとは島さんとお兄ちゃんだ。
なんだかまた島さんとは雰囲気の違った感じの人たちだなあと思った。けれど全員が全員みんな異様に顔が整っている。

「お、君が三成の妹だな。詩織だったか」
「はい、ええとあなたは……」
「質問に答えろ家康!!!! なぜ貴様がここにいる!!!!」

思わず両手で耳を覆った。お兄ちゃんさすがにちょっとうるさい。いったいどこからそんな声出してるの。絶対今お隣さんにまで聞こえたって。
お兄ちゃんと暮らし始めてはや五ヶ月。こんなお兄ちゃん初めて見た。っていうかこんな鼓膜が破れるんじゃないかっていう人の声初めて聞いた。
きっとこの家康さんって人が理由なんだろうけど。なぜここにいるとか聞いているから。お兄ちゃんと彼の間になにがあったというのだろう。

「元親から聞いたんだ。引っ越しの手伝いをするって。水くさいじゃないか。ワシも誘ってくれればよかったのに」
「長曾我部!」

お兄ちゃんの鋭い声が眼帯の男の人むかって飛ぶ。
なんかわざわざ名前とか聞かなくても勝手に自然と耳に入ってくるなあ。

「だってよお、男手が多いに越したことはないだろ」
「チッ。余計なことを……」
「まあまあ、ちゃっちゃとやってちゃっちゃと終わらせればいいことじゃないっすか。ね。詩織ちゃん」
「え、あ、そうですね」

突然話の矛先がこちらにむけられたので、しどろもどろになりながら答える。
しかし、島さんの言っていることは実に的を得ているような気がした。その証拠にお兄ちゃんが渋々頷いているのが見えたし、満足そうに家康さんと長曾我部さんも笑っていた。
大方の荷物はすでにダンボール箱に詰まっていたので、下に降ろして長曾我部さんが運転してきてくれた大型の車に次々と荷物を積みこんでいく。バケツリレー方式でやるのが効率がいいということになって、二階の部屋から階段までを私が、階段から一階までを家康さんが、玄関までをお兄ちゃんが、そしてじゃんけんで負けてしまった島さんが一番大変なアパートの外に止められている車へとそれぞれダンボールを運ぶ担当になった。
ちなみに父と瑞子さんは不在である。自分たちがいると逆に邪魔だろうと言って、朝早くから買い物に行ってしまった。

「お、重い……」

それほど部屋から階段まで距離はないといえど、物を入れれるだけ入れた段ボール箱は重い。本って一冊一冊は軽いのに、こうやってまとめて持つと結構重量あるんだな。

「大丈夫か」
「あ、すみません。ありがとうございます」

ぱっとこちらに駆け寄ってきた家康さんが、すかさず荷物を私の手から取り上げる。

「いや。というか、引越し作業なんて男に任せておいていいんじゃないか。わざわざ女の子が力を仕事をしなくても」
「え、だって引越しするのはお兄ちゃんだけじゃなくて私もなんですから、それを人に任せて自分はなにもやらないっていうのはちょっと失礼じゃないですか。それに私、意外と力あるんですよ」

そう言いながら力こぶを作ってみせた。しかしなんとも頼りない膨らみがちょっとできただけだった。
家康さんは白い歯を惜しげもなく晒し、例の太陽のような笑みをその顔に浮かべて

「なるほど。三成が詩織のことを好きな理由がわかった気がするよ」
「へ」

その謎の発言を残したまま、家康さんはダンボールを両脇に抱えて階段を降りていってしまった。
好き。好き。好き。
私はしばし途方にくれ、家康さんが再び階段を上がってくるまでその場につったっていた。

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