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一月拍手ss


一月拍手ss
【テーマ:成人式】



成人式とは奈良時代に起こった元服に始まる日本特有の風習で、外国にはこのような式典はないそうだ。
メイクと髪の毛を整えられたあと、色とりどりの花が描かれている振袖を着させられた。その一連の流れの中で私はまるで自分を着せ替え人形のようだと思っていた。
朝の四時に起床し、こうして始まった私の成人式であったが、最近心配されているような乱闘騒ぎなどもなく無事終えることができた。中学時代の友人とも久々に会い、あとはこの姿を彼に見せるだけである。

「というわけで、どうですか三成さん。かわいいですか」

そう言って私はくるりと小さく一回転をした。
年上の彼は私よりも一年早く成人式を終えてしまっていたのだが、ふと私がそのことを話すと妙にそわそわとした態度をとりはじめたのだった。それで私は、成人式が終わったら家に行くからついでに着物屋さんまで送ってくれと彼に頼んだのである。
彼は私の頭のてっぺんから爪先までにゆっくりと視線を下ろしていくと

「ああ。七五三みたいでいいんじゃないか」
「ヒ、ヒチゴサン……馬子にも衣装でもなくて、七五三ですか……」
「……すまん。ほんの戯れだ、忘れろ。よく似合っている」

複雑に編みこまれた髪の上に三成さんの手が置かれて、ぽんぽんと数回叩かれる。先ほどまで憮然としていたのが、現金なほどに自然とその感情が溶けていく。嬉しい、この人が愛しい、という気持ちが代わりに私の胸を満たす。

「どこか行くか。食事でもしに」
「着物屋さんに寄ってからですか?」
「いや、その格好で、だ。思い出にもなる」

そう言って彼は玄関に向かって歩きだした。私が異を唱えることなど考えもしていないような様子で。
けれど彼は正しい。たしかに私は彼に誘われたら断ることはできない。

「じゃあ二十歳の祝い酒おごってくださいね」

前を行く彼の背中を小走りで追いかけながら言うと、わずかに微笑む声が返ってきた。



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