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十二月拍手ss


十二月拍手ss
【テーマ:クリスマス】



クリスマスはどうするつもりだ、と彼が言ったとき私は自分の耳を一瞬疑った。私には彼がそんな言葉を口にするなど信じることができなかった。硬派な彼と、浮ついたクリスマスという単語が一致しない。

「どうして急にクリスマスなんて」
「刑部と左近が……」
「大谷さんと島さんがどうかしたの?」
「いや、やはりなんでもない」

彼が言葉を濁すのは珍しい。おおよそ、その両者からなにか言われたのだろうな、と考える。

「でもクリスマスなんてどこも混んでるしなあ。私たち人混み苦手じゃない。ああ、クリスマスケーキでも作ろうか」
「ケーキ? 店で買った方が手間がないだろう」

私がまだ幼かったころ、毎年クリスマス当日になると両親が一緒にケーキを作ってくれた。市販のスポンジケーキを買ってきて、それ に生クリームとイチゴを飾りつけるという簡単なものだったけれど、普段は共働きでなかなか一緒に過ごせなかった両親といられることが私には嬉しかった。
私はそう昔の思い出を三成くんに語ってから

「だから三成くんとも一緒に作りたいなって思ったのかな。それだけの理由じゃだめ?」
「そんなことは、ない」
「じゃあ決定ね」

私はすっかり満足して笑顔を作る。当日のことを考えると、高揚感がじわじわとこみあげてきた。



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