main | ナノ
九月拍手ss


九月拍手ss
【テーマ:関ヶ原】



「関ヶ原駅って小さいんだね」
「まあ関ヶ原は古戦場が主だからな。城があったわけでもない」

大学の夏休みも終わりにさしかかった9月15日。私たちはサークルの日帰り旅行のために関ヶ原へ訪れていた。
なぜせっかくの旅行が関ヶ原なのかというと、私の入っているサークルの名称が日本歴史研究部という名前だからだ。元々歴史には興味があって様子を覗きにいったとき、顧問の先生に是非入ってほしいと頼まれてあれよあれよという間にサークルのメンバーにされてしまったのだった。
ちなみに人数は二人。私と、それから学部は違うけれど同い年の石田三成くんだ。あまりにも少なすぎるが特殊なサークルなのでしょうがない。顧問が血眼になって私を勧誘したのも頷ける。

「それにしても一番に関ヶ原に行きたいって言い出した竹中先生が体調不良で来れないなんて。遠足の日に風邪ひく子どもと一緒じゃん」
「半兵衛様っ! ああ、叶うことならば私が馳せ参じて半兵衛のご看病をしてさしあげたい!」
「ちょっと、その竹中先生から二人で言ってくるようにって連絡あったんでしょ。今頃ベッドの中で苦しんでる竹中先生の分まで私たちがしっかりやらなきゃ」
「……わかっている」

旅行といってもただ観光するだけではなく、古戦場や城の写真を撮ったり資料館などに行って勉強をしなければならない。まるで修学旅行みたいだ。

「とりあえずまずは遠いところから行こう。大谷吉継のお墓かな」
「ここから歩くのか」
「歩くと片道で30分くらいかかるからなあ。本当は竹中先生が車出してくれるはずだったし。しょうがないから自転車借りよう」

二人で自転車をこいで大谷吉継のお墓や武将の陣跡、首塚をまわった。三成くんと自転車という組み合わせが恐ろしく似合わなくて死ぬほど笑ったら怒られた。
資料館に行ってから最後に石田三成の陣跡である笹尾山へ訪れた。
10分弱登り続けて頂上に到着した。上からは古戦場を一望することができて、この場所で大きな戦があったのだなと考えると無性に感慨深い気持ちがした。

「400年前、ここに立った石田三成はなにを思っていたんでしょうか」
「どうしてそのようなことを聞く」
「いや、ほら偶然同じ名前のよしみっていうか」
「……大切なものを守りたかったのではないか。小早川秀秋に裏切られ伊吹山で身を潜めることになっても、きっとそれが最後まで石田三成を生かせていたのだろう」
「なんかやけにリアルだなあ。どこの受け売り?」
「受け売りではない。私は知っている。その思いを」
「なにそれ」

空が夕焼けでオレンジ色に染まっていく。

「竹中先生喜んでくれるかな」
「ああ、きっと喜んでくださるだろう」

目を細めて少し嬉しそうに言う三成くんの表情を初めて見たけれど、その一方で私はどこか懐かしさを感じていた。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -