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六月拍手ss


六月拍手ss
【テーマ:梅雨】



延々と窓を打つ雨の音が聞こえる。
体をくるりと反転させると、三成くんの寝顔が目に飛びこんできた。
三成くんは雨が嫌いだ。低気圧の影響なのかなんなのか、頭痛がしたり吐き気を覚えたりするのだという。
だから彼にとって梅雨という時期は、とてつもない苦汁を味あわなければならない季節でもあった。
眠りながらでも気分が優れないらしく、眉間に濃いシワが浮かんでいる。
とりあえず私は朝ご飯を作ろうと思い、なるべく物音を立てないようにして上体を起こした。ベッドから足を浮かして床につける。
しかし、体が完全にベッドから抜け出る前に手首を掴まれて動けなくなってしまった。

「どこへ行く」
「……おはよう。三成くん」
「私はどこへ行くと聞いているんだ」

なんと三成くんが起きていた。しかも微妙に不機嫌だ。これはいけない。

「どこへ行くって朝ご飯作るんでしょう。ほら、離して」
「……許可しない」
「っ!」

拘束されていた手首を力強く引っ張られる。そのまま私はベッドの中に逆戻りして、三成くんに突っこむような形になった。

「どうしたの急に」
「なにも言うな。しばらく黙って私の胸に抱かれていろ」

三成くんの腕が背中に伸びてきて、私をぎゅっと抱き寄せる。隙間のない距離に、三成くんからは汗と柔軟剤の混ざった香りがした。
雨はまだ、止みそうにない。



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