happy days | ナノ


□happy days 3
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朝、談話室に降りてくると、シリウスが待っていた。
昨日のことでがっかりし、いっそ夢だと思いたいと願っていたルイにとって、それは有り難いほど自分を幻想から現実に引き戻してくれた。

「ジェームズ達は??」
「先に大広間に行ってる。『護衛なら主人が降りてくるまで待ってろ』だとよ。」

面倒くさそうにシリウスは言ったが、内心ジェームズに(初めて)心から感謝していた。
声をかけると、『う、うん…』と相槌を打って、ルイが自分の隣に歩いてくる。
朝取り替えたばかりのガーゼは真っ白で、どうやらやっと治り始めたようだ。
マダム・ポンフリーは絶対安静が必要だと言っていたが、あの広い医務室にルイ一人残しては可哀想だという口実を作らなければ、きっと今日のような日は来なかっただろう。

「…あ、シリウス、髪にゴミついてるよ。」

ルイのその言葉に我に帰り、頭をガシガシと掻くが、ルイは『取れてないわ』とクスクス笑って言った。
女子生徒が黄色い声を出すほどの存在であるシリウスの間抜けな姿を見て、幾分は機嫌が良くなったようだ。

「少ししゃがんで。取ってあげる。」
「いや、別にそこまでしなくても…」
「駄ー目!」

頬を幾らか赤くして断ったシリウスだが、怒ったように言うルイには逆らえない。
渋々体を曲げ、ルイに頭を預けた。
ルイの細い指が、シリウスの漆黒の髪に触れた。髪をすいてゴミを取ろうとするルイの仕草で、時々顔に手が当たる。
ルイの顔はしゃがんで居たため分からなかったが、シリウスは何となくドキドキした。

「はい、取れたよ。」

顔を上げると、ルイの笑顔があった。
シリウスは顔を朱に染めながらお礼を言う。
はたから見れば…恋人同士に、みえてほしかった。






午前の授業は『魔法薬学』だった。
ガラリ、とドアを開けると、スリザリン生が馬鹿にしたような視線を送ってくる。
どうやら今日はグリフィンドールの作戦に乗るまいと、一致団結してグリフィンドール生より早く来たようだった。
前と同じように、グリフィンドールとスリザリンがまっ二つに分かれている。
リリー達はもう他のグリフィンドール生に囲まれていて、一緒に座るのは無理そうだ。
日記の著者が気になって仕方がなかったルイはがっかりして、後ろ辺りの席を取った。

すると、ルイの隣の席に、シリウスがドン、とカバンを置いた。
平然と椅子に腰かけるシリウスを見て、ルイは呆然とした。
いつものシリウスならばジェームズの隣に座る。
ルイの隣には、リリーとリーマスとピーターしか座ったことがなかった。

「ジ、ジェームズと座らないの??」
「俺が隣に座るのが不満か??」

ルイはグッと言葉に詰まった。
別に不満な訳ではない。優秀な人間が一緒に居てくれるのは寧ろ大助かりだ。
だが…落ち着かない。カチコチに固まったまま座ったルイを見て、シリウスは失笑を漏らした。
『いつもジェームズと座るから…』と呟くと、『護衛は姫君の側にいなきゃ駄目だろ??』と返してきて、ルイは返す言葉がなかった。

「では作業に取り掛かって下さい。
くれぐれも失敗は起こさぬように。」

『魔法薬学』の先生が意地悪く、ピーターとルイを見てそう言った。
スリザリン生の席から馬鹿にしたような笑い声が爆発し、二人は真っ赤になって縮こまった。

「気にしたら敗けよ。アイツ等人を見下すようなことしか知らないんだから。」
「うん…」

様子を見に来てくれたリリーが、ルイを慰めるように呟いた。ルイは弱々しく笑い、頷いた。
別にピーターみたいに、調合や材料の目分量を測るのを間違えるわけではない…ルイは材料を擦り潰したり刻むのが苦手なのだ。
おまけに今日は運が悪く、ドラゴンの肝が目の前にある。ルイは吐きそうになるのをグッと我慢し、ナイフを手に取り、刻み始めた。
生臭い臭いが鼻孔をつく。ルイはしかめっ面のまま、必死で刻み続けた。

ザクッ…

「た…!!」

ルイは声を上げた。人さし指の根元から、赤い血が肌の上に溜り始めた。

「大丈夫か!!?」

シリウスが直ぐ様飛びついてくる。
ルイは大丈夫だと嘘をついたが、思ったよりも深く切ったらしい。
指は段々と熱と鈍い痛みを主張し始める。歯を噛み締めて痛みに耐えた。
幸いにも、すぐに来たリリーがハンカチを指に巻いてくれたので、出血は止まった。








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