happy days | ナノ


□happy days 3
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「…って、そんなことあるわけないか。」

(『魔法薬学』はともかくとして)ルイは自分が『闇の魔術に対する防衛術』が得意だと思ったことはなかったし、ただ帽子がスリザリンに自分を入れたがっていたのだと勝手に思いきった。

「ルイ!!」

不意に呼ばれて、ルイは飛び上がる。
見ればもう夕食の時間だろうに、大急ぎで終えてきたらしいシリウスが、息を切らしていた。

「シリウス…??」
「もう起きても大丈夫か!!?痛い所とか…」
「大丈夫よ。マダム・ポンフリーが怪我なんか見逃しちゃうはずないの、知ってるでしょう??」
「…そ、か……」
「心配してくれてありがとう。
シリウスが助けてくれたの??」

にこやかに笑いかけたルイに、シリウスの頬が朱に染まった。

「お…俺と、リーマスで助けようとしたんだ…
でも間に合わなくて…リリーがマクゴナガルを呼んで…
ハグリッドにここまで運んできてもらったんだ…
俺が運ぶって言ったんだけど、ハグリッドはいいって言って…」
「そうだったの…ごめんなさい、心配かけて…
あとでハグリッドにもお礼言わなくちゃね。
マクゴナガル先生にも、リリーにも、リーマスにも。」
「…ごめんな…」
「…ううん、本当にありがとう。」

しゅんとした顔をしているシリウス。自分が助けてやれなかったことを後悔しているのだ。
けれどルイは嬉しかった。シリウスがこんなにも心配してくれたのを見て、何となく心が軽くなった。






「お前、突き飛ばしたのが誰か覚えてるか??」

ルイは首を横に振った。シリウスは頭を掻きながらため息をついた。大広間への道のりを、貧血で時々ふらつく体をシリウスに支えてもらいながら、ルイはシリウスと、自分を突き飛ばした犯人について話し合っていた。だがルイが後ろにいた犯人は見ているはずがなく、一通りの事を聞いたシリウスとルイはしばらく黙りこんでしまった。

「ハッフルパフやレイブンクローがここまで酷いことするはずない…よね。」
「…となるとやっぱり…」

答えはすぐにわかった。
ルイとシリウスは扉を開けた。

今までざわめきで埋め尽されていた大広間が、一瞬だけ静まり返った。
真っ白な生地に、じんわりと赤い染みがついたガーゼを着けたルイは、はたから見れば異様だっただろう。
ルイは視線に少ししり込みしたが、シリウスは『気にするな』と言って、ルイの手を強く握り締め、まっすぐにグリフィンドールの席へと向かった。

「ルイ!!あなたもう大丈夫なの!?」

ルイを見た瞬間、パッとうるんだ目でリリーが叫び飛びついて来た。
またもやボディーブローを喰らい、ルイはまた出血するのではないかと心配した。

「頭が少し切れたってマダム・ポンフリーが言ってたけど、思ってたより軽かったな。痛むか??」
「ううん。大丈夫よ。」
「顔色悪くないか??熱とかないよな??」

シリウスが心配そうにルイに聞く。
自分に責任を感じているらしく、心配してくれてはいるが他人行儀だったのに、ルイは少しむずがゆくなった。

突然、シリウスのひんやりとした冷たい手が額に触れた。ルイはその冷たさに驚いた。
シリウスはもう片方の手を自分の額に当てている。
本気で熱があるとでも思っているのか、熱を測っているようだ。
その冷たさに、ルイはしばし時を忘れた。
添えられた手はとても心地好い冷たさで、出血で熱を帯びていたルイの顔には有り難かった。

「…どうした??」
「シリウスの手、冷たいね。」
「っはあ?!」

シリウスは顔を赤くして仰天した。
ルイは悪気があって言ったワケではなかったが、シリウスはその微笑みにズキュンときた。

「それに意外と大きいし…ほら、」

手が額から離れ、ルイの手とシリウスの手が合わさる。
ルイの手は白くほっそりしているが、シリウスの手はがっしりとしていて男らしい。指も、シリウスの方が長いのだ。
向こうがわからにっこりしながらそう聞き返してきたルイに、シリウスは火が出るのではないかと思うほど真っ赤になり、コクコクと頷いた。




「ルイ、早く食べないとピーターが全部食べちゃうよ??」




リーマスがにっこりと絶対零度の微笑みを浮かべながらそうルイに声をかけた。大広間の温度が一気に2〜3度下がった。
ピーターは、リーマスの言葉に固まっていたのだが、ルイは思い出したように空腹が押し寄せてきて、慌てて料理を口に詰め込み始めた。
無邪気なルイを見ながら、リーマスはニコニコと微笑んでいたが、グリフィンドール生は妙な悪寒が体を突き抜けたのを感じた。



「…で、本題なんだけど。」
「ルイを突き落とした犯人は誰か…だろ??大体見当はついてる…アイツだ。」

ルイはその言葉にピクリと身を震わせ、慌ててシリウスに向かって叫んだ。

「もしかしてセブルスだとか言わないよね??セブルスは違うよ!!
私がシリウスだったらどうなっていたか分からないけど…」
「違う違う。」
「セブルスがルイにそんなことするはずないでしょ??」
「(ていうかシリウスだったら断言できないんだね…)」

シリウスとリリーは呆れて言葉を返した。
首を捻っていたルイに、苦笑するリーマスが助け舟を出した。

「シリウスが言いたい犯人っていうのは…」

リーマスとシリウス、そしてジェームズの目が同時に動き、スリザリン寮の席を見据えた。
黒いローブの群れに埋もれる様にして居るセブルスの眉間から皺がなくなっていて、こっちをじっと見つめていたのに、ルイは気付いた。
ルイがまた手を振ると、セブルスは少し表情を和らげた。
だがシリウスは、セブルスを見てはいなかった。
見ていたのは、ルイのガーゼを指差しながらニヤニヤ笑いを浮かべている、とあるグループ。
その中で一番見映えのする顔立ちをした、銀髪の少年、ザリス・レスタントリンを、強い眼力で見ていた。







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