happy days | ナノ


□happy days 3
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談話室で一通りの課題を終わらせ、次の悪戯の計画に精を出しているジェームズ達におやすみと声をかけ、リリーとルイは女子寮に帰っていった。

「何かルイとリーマス、おかしくなかった??」
「え?!別に!?普通だったよ??!」

どう聞いても怪しいルイの口ぶりに、リリーはニヤニヤした。

「だって貴方『数占い学』があった日は、リーマスにベッタリじゃない。
なのに今日は何だか余所余所しくしちゃって…意識でもしてるの??」

「そ、そんな事ないよ!!意識なんて…リーマスは友達だもの!!
…それに、リーマスはそういう風に私を見たりしないし…」

最後の言葉は恥ずかしいやら虚しいやらで、ルイは真っ赤になってゴニョゴニョとしか言えなかった。『あの態度見て分からないなんて…ルイの天然も国宝級ね…』とリリーは一人そう思った。
その後もリリーからあれこれと詮索されたが、ルイは決して口を割らなかった。
しばらくするとリリーの方が先に折れ、1つ大きな欠伸をしてから『明日また聞くから覚悟してね』と言い、さっさと布団に潜り込んでしまった。

ルイもベッドに横になったが、ローブの中に入っている日記帳が、頭から離れない。
誰もが寝息を立てて寝ている事を確認して、ルイは窓を開け、月の光を部屋の中に招いた。
ローブのポケットをごそごそ探ると、あの良い手触りの日記帳が手に当たった。
忍び足で窓に近寄り、窓枠に身をもたれさせ、ルイはページを捲った。






【『魔法薬学』の時間はグリフィンドールと一緒だった。
何故だかアイツらはこの頃、一人一人が別々の席に座って、グリフィンドールとスリザリンの生徒が同じ席になるよう仕向けているようだ。
ジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックが笑っているのを見て、これは計画的な犯行だと分かった。】

そういえばこの前、ジェームズとシリウスが大声で他のグリフィンドール生に何かをよびかけ、二人が喝采を浴びていたような気がする。
生憎その時ルイは『数占い学』のレポートを必死になって書いていたので、二人のスピーチは耳に入っていなかった。

【何でもピーター・ペティグリューが、絶対にスリザリン生が話したり群れたり出来ないような座席表を作ったらしい…
いつも笑い者の癖に、こういう時にだけ才能を発揮して、将来は一体何になるつもりなのだろうか。クロスワードの王者か??】

ルイは思わずクスリと笑みを溢してしまった。ピーターの悪口が書いてあったのには腹が立ったが、書き主の上手い表現にすっかりノってしまったのだ。

【兎にも角にも、一番一緒に座って無難なのが、『魔法薬学』の成績が良い女子だ。もしくは反対にルイ・ホワティエのような…(ルイは内心ドキリとした。)『魔法薬学』の駄目な、比較的大人しい奴等である。もしスリザリン生が間違っても、駄目なグリフィンドール生と一緒だと、そいつが減点される。ピーター・ペティグリューは格好の的だが、奴は危険だ。あいつの飛び散った薬のせいで、ネパロ・ロバートソンの歯が全部抜けた時には失礼だが吹き出しそうになった。これでアイツの嫌味な八重歯を見なくてもいいと思うと(アイツの顔を見ていると何だか小さい頃に買っていたハツカネズミを思い出す。アイツは今頃どんなマウス・ライフを送っているのだろうか。)、ピーター・ペティグリューを胴上げしたくなった。…最も、それこそマダム・ポンフリーの話相手を3週間はしないといけなくなる事は想定出来得る、それだけでは例え拝まれても絶対にお断りだ!!】

ルイは笑い転げそうになる自分を必死に抑え、痙攣しすぎて痛くなった横腹を押さえて、顔を真っ赤にして笑いを堪えた。
話からして、これを書いたのはスリザリン生だ。けれど、スリザリンにこんな人物がいたのに、ルイは感嘆した。

自分が『魔法薬学』がからっきし駄目なのは火を見るより明らかだが、改めてスリザリン生にそれを馬鹿にされると、ちょっと傷つく。
けれど、その日記の著者はけなしてはいるが、ルイを絶対に嫌な気持ちにはさせなかった。スリザリン生の書いたものだから、人を嘲笑うような中傷的なことや、下品なジョークでも書いてあるのかとルイは思っていた。こんなにも面白く書かれた日記を、読書好きなルイでも読んだことはなかった。

ネパロ・ロバートソンの歯が抜けたのは、学校が始まってすぐだ。
となると、この日記を書いたスリザリン生は一ヶ月前かそこらに、これを落とした事になる。
何週間か前、この日記の前にいたスリザリン生の才能は、あっという間にルイを虜にしてしまったのだ。

(一体…誰なのかな…??)

ピュッと冷たい風が吹いた。その低温に、ルイはブルッと体を震わせた。
続きはまた明日にしよう…毛布を体に巻き付けて、ベッドに戻ったルイは幾らか遅い眠りへと落ちていった。



それからほぼ毎日、日記の続きを読むことがルイの日課になってしまった。
何しろ日記は一日分が半端なく長いのだ。びっしりと事細やかにその日の事が綴られていて、時には何ページにも渡って書かれていた。
3年生は授業も課題も沢山ある。なぜ1年生の時に落としてくれなかったのだと、名も知らぬスリザリン生に文句を言ってみたりもした。
けれど、彼(彼女かも知れないが、途中で『俺』と書いてあったので多分彼で合っている)の鋭い観察力と多様な表現力は、ルイを掴んで離さない。

夜、ルームメイトが寝静まると、ルイはこっそりベッドを抜け出し、月明かりを頼りに日記を読んだ。
月が出ていない時には、トイレに行くと嘘をつき、一人きりになれる場所を見付けては、そこでページを開いて読んでいた。

読んでいると、著者のスリザリン生は大分変わっていることに気付いた。
ダンブルドアの事を以外と好いていたり、あまり自分の寮の監督生を好きではなかったり、何より驚いたのが、クィディッチにあまり興味がないことだった。
魔法界で長年生活してきたルイにとって、クィディッチが好きではない男の子はみたことがなかったのだ。

意外にも、ジェームズ達のことはそこまで酷くは書かれていなかった。ジェームズのあのくせ毛を全部綺麗に直した頭を見てみたいだの、シリウスの自信過剰には手を合わせてしまうだの、リーマスが顔色が良いところは見たことがないだの、他愛もないことばかり書いてあった。
リリーはいつジェームズと付き合うか見物だとは書かれていたが、ルイは最初の日記以来自分のことが書かれていないことに、少しがっかりした。
自分のような影の薄い人間に気付くはずはないのだと自分でいい聞かせてはみたが、それでも気は晴れなかった。







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