「ごめんねセブルス…」
また人混みに流されるといけない、とセブルスは、ルイの手を他の人から見えないようにつないで、グリフィンドール寮の近くまで、ルイを送ることにした。
廊下は大分人が少なくなっていて最初よりは歩きやすかったが、『ルイは人が少なくても流されやすいのだ』というセブルスの言葉には、ルイも反論出来なかった。
「監督生の人に怒られない??」
「スリザリンの監督生は、自分達が不利になるようなことはしないと思わないのか??」
「……。」
ルイとセブルスは、しばらくの間黙りこんだ。ルイはちらりとセブルスの顔を見た。
いつもジェームズ達といるときは、眉間に皺を寄せた怖い顔しか見られないのだが、今日のセブルスは何だかとても優しい顔をしていた。
心なしか楽しそうな顔に見えるのは、自分の気のせいだろうか…?
「どうした?」
ルイの視線に気付いたセブルスが問掛けた。ルイは慌てて『何でもない…』と顔を背けた。セブルスが少し怪訝な顔をして自分を見ていたが、ルイは何故顔が赤くなるのか分からなかった。
「あ…こ、ここで良いよ!!」
さすがにスリザリン生にグリフィンドール寮の場所を教える気にはなれなかったので、近い場所でセブルスにお礼を言い、別れた。セブルスはついていきたそうな顔をして見送っていたが、やがてロウソクの光が揺らめく廊下を、足音を立てながら戻っていった。
談話室の『太った婦人』の肖像画の前には、リーマスがいた。
こっちに歩いてくるルイを見つけると、リーマスは青白い顔を幾らか上気させた。
「良かった…一体どうしたの??急にいなくなったから、みんなとても心配してたんだよ??」
「ごめんなさい…ちょっと人に流されちゃって…
でもね、セブルスが連れだしてくれて、近くまで送ってもらったの。」
リーマスは終始笑顔だったが、ルイの口からセブルスの名前が出てくると、その笑顔は氷河の冷たさを放った。だが、ルイはセブルスの話に夢中で気付かなかった。
「そう、セブルスってとってもいい人だね!」
リーマスはニッコリ笑ってそう言ったが、その瞬間、スリザリン寮に戻る途中だったセブルスは盛大にズッコケた。
談話室では、ジェームズ達とリリーが待っていた。
リリーは今にも泣きそうな顔をして、『どこに行ったのかと思ったわ!!』と叫んでいた。
『誰かに連れてきてもらったの??』とジェームズから聞かれたが、シリウスの前でセブルスの話題をする気にはなれず、『ほとんど首なしニック』に連れてきてもらったと嘘をついた。
リリーから合言葉を教えてもらい、ジェームズ達におやすみと告げ、やっと、住み慣れた天蓋付きのベッドがある部屋に戻ってきた。
シャワーを浴び、石鹸の良い香りをたっぷりと楽しんで部屋に戻ると、先にシャワーを浴びていたリリーが手招きして、長い髪を魔法で乾かしてくれた。暖かい風が、頬をくすぐった。
「ねぇ、リリー…」
「なぁにルイ??」
「一緒に…寝ちゃ駄目かな??」
サクラ色のパジャマを着たルイは、大きい真っ白な枕をギュッと抱き締めながら聞いてきた。
リリーは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに顔を緩め、『良いわよ』と答えた。
ルイは子供のような笑みを溢し、そそくさとリリーのベッドに潜り込んだ。
他のルームメイトの邪魔にならないように、ヒソヒソ声で会話をしては、二人でクスクスと笑いあった。
そんな他愛もないことを喋っているうちに、ルイはいつの間にか、深い眠りに落ちていった。
傍らに、リリーの温かさを感じながら。
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