happy days | ナノ


□happy days 2
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そして、ルイの家族との連絡は途絶えた。ルイの存在もまた、いつの間にかシリウスの中で、昔の記憶として消えかけていた。

けれど、ホグワーツ魔法学校への入学許可が来て、
ダイアゴン横丁のグリンゴッツ銀行で、
やっと彼女との再会を果たしたのだ。

小さい頃の面影は、全くそのままで。
あの笑顔も、全く変わらない。



ただ、



『シリウス…くん??
その…初めまして…』






彼女は、シリウスを覚えてはいなかった。






「やっぱり覚えててくれなかったか…
まぁ…当たり前だよな……」

ポツリとシリウスは呟いた。
小さかったルイにとって、両親の葬式は、最も忌むべき記憶だ。
それに同席していた人物を忘れることは、ルイが自分を衛る手段としての最低条件だった。



だが、今、こうして、目の前にいる。
運命だとは気恥ずかしくて言えないが、
これはある意味で…

《キセキ》と、呼びたい。



「…ん…」

思考に耽っていたシリウスは、ルイがもぞもぞ身動きし、ふとパチリと目を開けたことで我に返った。


「ルイ、やっと起き……っ!!」

シリウスは鼻血が出そうになった。

寝起きのルイはボーッとした虚ろな目で「…??」と可愛らしく小首を傾げ、まだ夢の中をさ迷っているようだ。
寝返りを何度もうっていたせいか、服は少し乱れていて、首の鎖骨が見え隠れしている。

「…しりうす…??んーと…
…まだ…ほぐわぁつじゃないの…??」

と、砂糖菓子のように甘い響きを持つ声で、シリウスの名前を呼ぶ。
かと思うと、ルイはすぐにまたコトリと首を窓に預け、心地よい眠りへと入っていた。

「…ね…寝言…??!」

だとしたら、何とはた迷惑な寝言なのだろう。
自分を試しているようにしか見えない。

(たッ…堪えろ、俺…!!)

シリウスは理性が吹っ飛びそうになるのを必死に堪えた。
外はいつしかポツリポツリと、雨が降り出していた。






しばらくすると、太った魔女が、お菓子が溢れんばかりに乗ったカートを持って、コンパートメントに入ってきた。
ルイはお菓子の匂いにつられたのかパチリと目を覚まし、うきうきしながら、カートのお菓子を買い占めた。
蛙チョコやバーティ・ボッツの百味ビーンズを食べながら、夏の間何をしていたかなどを話して盛り上がっていたが、ふいに開いたコンパートメントのドアから入ってきた来客に、ルイは顔をパッと輝かせた。

「ルイ!!久しぶり!!元気だった!!?」

グリフィンドールのリリー・エヴァンスが、ルイにボディーブロー並の威力で抱きついた。
ルイは思わずよろけて、危うくお菓子の海にダイブするところだった。

「リ、リリー…久しぶり…!!」

何とか体勢を持ち直し、冷や汗をかきながらも微笑みを返したルイに、リリーはニッコリと笑いかけた。

「どのコンパートメントにも居なかったから乗り遅れたのかと思ったわ!!
こんな最後尾にいるなんて思わなかったんですもの!!一人で乗ってたの??」
「ううん、シリウスと一緒に…」
「なぁるほど…急にいなくなったと思ったら…
我が友人のパットフッドは、姫君と同席していたのか!!」

そう言ってニヤニヤしながら入って来たのは、シリウスの友人であり、校内でも指折りの犯罪グループ(?)『悪戯仕掛人』のリーダーでもある、ホグワーツ一の問題児、ジェームズ・ポッターだ。
いつの間にやらリリーの肩に手を回している。
その後ろから、優しそうな顔立ちの、少しやつれた少年が入ってくる。
リーマス・ルーピンだ。

「やぁルイ。久しぶりだね。」
「久しぶり、リーマス。また痩せたんじゃない??ちゃんと食べないと駄目だよ?」

心配気にそう言って、ルイの手がリーマスの顔に触れる。
シリウスはムカッときて、フンと鼻を鳴らした。

「ねぇリリー…ピーターは??」
「見事に百味ビーンズのゲロ味に大当たりしてね。今コンパートメントで休んでる。」

あのいつもびくついているブロンドの男の子がいないことに気付いたルイが聞くと、リリーの代わりにリーマスが肩をすくめて教えてくれた。会いたかったのにな、とルイがため息をつく。

「…それにしても、二人じゃここは広すぎるね。
僕らのコンパートメントにもレイブンクローが居るし…ルイ、僕らもここに来ちゃ駄目かな??」

ジェームズは優しくルイに問いかけた。
シリウスに聞けば必ずNOと言われる可能性が高いことを知ってのことだったが。

勿論ルイの答えは…


「勿論いいよ!!」


だった。







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