happy days | ナノ


□happy days LOS6
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にこにこ。にこにこ。にこにこ。うふふ。
ニコニコ。ニコニコ。ニコニコ。ウフフ。
キラキラ。フワフワ。ニコニコ。ウフフ。

「(…流石に飽きてしまいましたねぇ。)」

黒髪を流し、少女は溜め息をつく。
運命の林檎は、どこへやら。

キラキラ。フワフワ。ニコニコ。ウフフ。
ニコニコ。ニコニコ。ニコニコ。ウフフ。
にこにこ。にこにこ。にこにこ──

「(…うふふ、そろそろですかねぇ。)」

黒髪を流し、少女は怪しく嗤う。
運命の林檎は、どこへやら。







バン!!!と強く叩かれたのは教卓だった。
マクゴナガル先生が再び強く捲し立てる。

「これは完全なる破壊行為です!!!
彼等は即刻退学処分にするべきです!!!」
「まぁまぁ、誰も特に大きな怪我もなく無事で済んだのじゃから…」
「身体が正常だろうと精神が異常すぎます!!授業を放棄しただけで無く、空き教室での器物損害、生徒同士での乱闘!!!校長先生も御覧になったでしょう?!あんな末恐ろしい…正気の沙汰とは思えません!!!」
「兎に角落ち着くのじゃ、ミネルバ。
今回は皆も相当参っておる様じゃ…
ここは一つ、寮へ戻して休息させるという事で。
処分は明日まで、儂に任せておいて貰えぬかのう??」
「校長!!!」
「…という事じゃよ、諸君??」

怪鳥の如くけたたましい声を上げるマクゴナガル先生を尻目に、ホグワーツ校長のダンブルドアはその緊張した場に似つかわしくない穏やかで優しい笑みを浮かべた。
包帯や絆創膏だらけの生徒達は皆一様に首肯すると、親の仇の様に自分達を睨み付けているマクゴナガル先生に肝を冷やしたのか、誰一人声を出さずに、広い校長室の真ん中に一列に並べられていた椅子から飛び上がって、我先にと校長室の扉へ一目散に駆け出した。

列の左端の椅子に一人座っていたルイは、動かなかった。殴られた口元に手をやりながら、自分から見て反対側の、右端の椅子に足を組んで踏ん反り返っているジェームズにチラリと視線を向ける。
完全にそっぽを向いているので、彼の表情はルイからは全く見えなかった。

「…どうしたのじゃ??Ms.ホワティエ。
まだ言っておらぬ事でもあるのかのう??」
「いえ、あの…」

ルイは申し訳なさそうにダンブルドアを見て、それからほんの少しジェームズへと視線を目配せする。

「…おぉ、そうじゃ、マクゴナガル先生??
今からちとお部屋へお邪魔しても宜しいかのう??」
「はい??!何故いきなり…」
「お昼に戴いたライス・プディング。
あの味がどうも忘れられなくてのう…
善は急げじゃ、参りましょうぞ。」
「こ、校長先生!!お待ちください!!まだ処分が…」

そこは流石のホグワーツ校長、ルイの伝えたい事を即座に理解したらしい。さぁさぁとまごつくマクゴナガル先生を急かす様に背中を押して扉へ向かい、ルイの隣を通り過ぎる瞬間には、パチンと無邪気にウィンクまでしてみせた。

「では、若者同士、ゆっくりとな。」

最後に非常に場違いな言葉と笑顔で持って、ダンブルドアはパタンと扉を閉めて行った。






「ね、聞いた?!グリフィンドールの生徒が…」
「知ってる!!空き教室丸ごとでしょ??」
「犯人は絶対ポッターだよ!!!」
「あれ??私が聞いた話は…」
「スリザリンの女子じゃなかったっけ??」
「えーウソォ!!!?」
「殴り合いだったらしいよ!!」
「決闘だって話も…」
「挙句に殺そうとしたんだって!!」
「うわッ何それ怖ーい!!!」
「今校長室に居るんだって!!!」
「確実に退学処分じゃない?!」
「ばっかよねー!!!」

「……」
「ミル!!居たか!!?」
「ううん、寮の隅から隅まで探したけど…!!!」
「ったく、どこ行ったんだよ…!!」
「…僕も探してくる。」
「え、ちょッ…セブルス!!!」
「探すって、どこをだよ?!!
もう校舎は粗方探し尽くしたんだぜ?!!」
「心当たりがあるんだ…
二人はここで待っててくれ!!!」
「待っ!!…行っちゃった…」
「何だよあの自信、わけわかんねー…」
「…あら??あれって…」






「どうしてくれるのさ。」

実に不機嫌そうな声だった。
慌てて向き直った先には、顰めっ面全開の彼が居る。

「あいつ等は兎も角、僕と君は十中八九退学だろうね。君は教室一個半壊させちゃったし、僕なんか目の前で女子フルボッコだよ??まず免れないよ、現行犯だもん。」
「……」
「まぁ僕もやり過ぎとは分かってたし、今更言い訳されてもとは思うけど、何もあそこまでやる必要あった??修羅場知らない奴程大掛かりなモノにしちゃうんだよねーこっちも参っちゃうよ。」
「……」
「…あのさ、僕がこんなに気を遣ってやってんのに、何も言わないのってどうよ??」
「…ご、」
「ご???」

「ごめんなさい…」

ずるりという音がして、ルイは真っ赤に腫れた目でそちらを虚ろげに見た。
音はどうやら…ジェームズが椅子からずり落ちた音だったらしい。どうしていいか分からないで居ると、座り直した彼がやれやれとばかりに先に口を開いた。

「…君ってホントにびっくりする位ネガティブだね。」
「え…だ、だって…」
「ッあのねぇ!!!普通に世間体考えたら完ッ璧に僕が悪いでしょ僕が!!!シャンデリア数個ぶっ壊したくらいで世紀の大悪党きどらないでくれる!??
僕なんかホグワーツの全敷地の3分の1は一度は壊した事あるよ!!!『グリフィンドールの歩く削岩機』だって自負してるよ!!!」
「こ、壊したのは…変わらないし…」
「そりゃ変わんないさ!!
変わってたら僕だって今頃監督生レベルの良い子だよ!!!
そんなに後悔する位なら最初からすんな!!
全世界の問題児敵に回してるよ今の発言!!!」
「う、うん…ごめん…」
「壊すのなら盛大に!!ドカンと!!派手に!!
伝説と呼ばれる位に完璧にやりこなす!!!
その点では僕が褒めてあげるくらいの快挙だよ!!
自信持てよ!!才能あるよ!!!
「…あ、ありがとう…」
「どう致しましてさこの野郎!!!」

怒られているのか励まされているのか、何だか分からなくなって来た…性格は違えど、悪戯に掛けてのプライドと思想は矢張り変わらないらしい。少し、嬉しかった。
微かに緊張と罪悪感が解けて、ふぅと息をついて居ると、再びジェームズから声がする。

「…ところでさ、」
「うん、何??」
「…さっきの、



『シリウス』って、誰??」



「──え??」

ルイはポカンとした表情を浮かべた。
さっきの??シリウス??何の事だろう??
返答せずに考え始めたルイに痺れを切らしたのか、先ほどよりも強い口調で再び問い掛けられる。

「だからさぁ、さっき叫んだじゃん。
僕に髪切られそうになった時だよ。」
「…私、何か言ったっけ??」
「言ったよ!!鼓膜張り裂けそうだったよ!!
凄く必死に、『助けてシリウス』って!!」
「お、覚えてない…かも。」
「いやいやいや、そんな訳ないでしょ!!
僕がマクゴナガルに『失神呪文』掛けられるまで、ずっと言い続けてたじゃん!!!」
「ずっと…??」

あの時は兎に角必死だった。
恐怖と、悲しさと、自分に対しての不甲斐なさで、胸がはち切れそうだったのだけは覚えている。
けれど、そんな名前はおろか、助けてと言った記憶もルイにはサッパリない。全く意に介さずに胸の奥の言葉を告げた…無意識の発言、という事になるのだろうか。

「…まぁ別に君が覚えてようとなかろうとどうでもいいか。で??誰なのさそれ。」
「……わ、分かんない。」
「…ハァ…何なんだよ君…」

ジェームズは、何故かとても残念そうにガックリと首を垂れる。ごめんねとまた謝るルイ。現在の状況を見た恐らく全ての人は、まさかこの二人が数時間前に壮絶なタイマンを張ったとはとても信じないだろう。

「…ねぇ、ジェ、…ポッター。」
「あーもうジェームズで良いよジェームズで!!
ていうかさっきまで普通に呼んでたじゃん…
敢えてもう何も言わなかったけど。」
「ジェームズ…あのね、」
「うん、」
「何で、そんな事知りたいの??」

それまで緩慢だった彼の動きが、急に固定した。言葉で言うなら正しく、ピタリと。
あっとルイは声をあげそうになった。
確かさっきもこんな感じだった気がした。

「…」
「ジェームズ??」
「……」
「ねぇ、何で知りたがるの??」
「………」
「…ハサミで切ろうとした時も、
確かそんな風だったよね。」
「ギクッ!!」
(口で言った…)シリウスを、知ってるの??」
「ギクギクッ!!!」
「(もう何も言うまい)…ねぇ、ジェーム…」

「知らないんだよ!!!!」

今度はルイが動きを止める番だった。







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