happy days | ナノ


□happy days LOS4
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「もうジェームズってば、一日どこで暇潰してたんだい??天下のエヴァンス様が授業中ずーっと僕らを物凄い目で睨んでたんだけど、何かまたやらかしたの??」
「す、凄い怖かったよぉ…」
「…別に??僕の憩いの時間に不用意に近付いて来たスリザリン生苛めてたら、いつもの様にお説教されて嫌になって逃げただけさ。」
「…また女の子苛めたの??
相変わらず君ってば懲りないねぇ。フェミニズムの優等生がそんなの許すはずないじゃないか。」
「マルチーズ装ったオオカミさんに言われたくないよ。」
「で、でも、その子も凄いね…
自分からジェームズに近寄って行くなんて…」
「なーんか頭悪そうな子でさァ、
ついでに僕に変な事言ってくんの。
最近のスリザリンは怖いねぇ、とうとうイかれた人間まで出てきちゃって、逆に可哀想。」
「…変な事…??」
「いきなり馴れ馴れしく名前で呼んだり、
僕の意見に勇敢にも『違う』とか言ってきたり…
あー思い出したら苛々して来た。」
「そ、その子なら僕も知ってるかも…」
「え??」



『夢は君の記憶がただ混在しただけの映画みたいなものなんだ。頭の中が勝手に作り出した物を気にしても、それは雲をつかむ様な話。』

緩やかな旋律で紡がれた言葉。
穏やかな笑みと共に包んだ言葉。
ルイは、それを信じた。
消え失せた夢に惑う事もあるだろうけれど、
それでも、今居るここが本当なのだと教えてくれた。
叶わなかった夢をまた、ここでゆっくりと実現すればいいのだと教えてくれた。
ルイは、そんな彼を信じた。

けれど誰でもないその彼の。
たった一言で、ルイの夢が。
夢でしかなかった、たった一つの願いが。
今、はっきりとした輪郭を持って、
ジワジワとルイの視界に現れていた。



「き、昨日の事なんだけど、中庭で転んだ子を助けたら、ジェームズと同じ様に名前で呼ばれたんだ…
おまけに、ずっと一緒に居たじゃないとか言って来て…」
「ワオそれ何てエロゲ??今度貸してよ。」
「じ、事実だよおおお!!!」
「あーそれ僕も証人。見てたし。」
「ど、同一人物かなぁ…??」
「…いや??もしかしたら、昔仲が良かったグループでのイジメを苦に自殺した…生徒の幽霊だったりしてえええ!!!」
「ギャー!!や、やめてよぉジェームズ!!」
「ちょっとちょっと、泣かすのも大概にしなよー??ピーターも幽霊なんてホグワーツにはわんさか居るんだから、今更いちいち驚かないでよ。」
「リ、リーマスぅ…!!」
「……そう言う君だって、図書室から帰って来るの嫌に遅かったじゃんか。好みのマカロン系女子でも見つけた??」
「まぁマカロンではなかったけど、結構可愛い子だったよ。梯子の上から落ちそうになってたから助けてあげた☆」
「あーその子も可哀想に…
マルチーズの凶暴な毒牙にかかっちゃったのね…」
「(マ、マカロン…??)」



『そこまで気に病んでしまうものだ、
それ程リアリティのある物だったんだろう。
自分を暖かく迎えてくれる楽しい場所で、
素晴らしい夢を見せてもらったと思えばいい。』

ルイは、初めて自分に問い掛ける。
あれは夢だと思った自分。彼らの反応に動揺するその根底には、自分が何故夢をこんなにも信じているのかが分からないという、そんな自身への恐怖があった。
ただ夢の中と現実の彼等の違いに、
やたらフラフラしやすい自分が怖かった。
──けれど、ルイは初めて。
そんな不安を生み出した自分に問い掛ける。
…あれは本当に、夢なのだろうか??



「いや、それが結構ガード硬いんだよ。
反応は凄く良いんだけど、
僕に対してかなり警戒心持ってるみたいで。」
「おお、なかなか根性あるね。
大抵の女子が君の文化部系の雰囲気に騙されちゃうのに…もう恋人居るんじゃない??」
「(ぶ、文化部系??)」
「…いや、最近コロッと落ちる子しか居なくて張り合いがなかったから、久しぶりに燃えたね…本腰入れてみようかな。」
「キャー逃げてーその子超逃げてー」
「ぼ、棒読み…!!」
「ま、その彼女っていうのが、
僕とピーターが会った変な子なんだけどね。」
「に、二段オチいいいい!!!?」
「…」



夢だ夢だと、胸が騒いだ。
不安を根こそぎ決壊させるその問いに、
ルイの体は、自然と震えた。

ならば、何故この本が、ここにある??
解りやすい図説も、ところどころにびっしりと書き出されたメモも、ルイには全く身に覚えがない。
けれど、これをセブルス以外から借りた記憶なんてない。誰に確認を取った覚えもないと言うのに、ルイにはその事実だけが、嫌にしっかりと胸に根付いていた。

決してセブルスではない、
けれどセブルスである誰か。
ぶっきらぼうで、ちょっと照れ屋で、
笑うのがあんまり得意じゃない、
でも、どこまでも優しかった誰か。
人付き合いが苦手なルイを、
一年生の頃からずっと支えてくれた誰か。
ルイがどんなに崩れても、
無理に立ち上がらなくて良いからと、
隣にいつまでも居てくれた誰か。
少しだけ、本当に少しだけ、
人に理解してもらうのが難しい誰か。
でも、知ればどこまでも人に好かれる、
とても不思議な人だった誰か。

とっても強くて──
魅力的な人だったあの人は。
その誰かは──…
ルイが一番良く知っている誰かは、けれど。



「……セブルスじゃ、ない。」






「君が今日苛めたのって、
もしかしたらその子なんじゃない??」
「…髪は??」
「腰までのロング。癖のある黒髪。」
「目の色。」
「結構薄かったなあ…褐色って言うの??」
「身長。」
「多分そんなに高くなかったよ。
僕よりちょっと小さい位。」
「性格。」
「おどおどしててピーターに近いかも。
色んな事にすぐ反応しちゃう感じ。」
「いつも居る奴ら。」
「ミルズ・スチュアート。
ザリス・レスタントリン。
それと…あぁ、そうそう。



セブルス・スネイプ。」






私が無意識に願った理想の世界??
私が夢見たもう一つの世界??
違う、そんなの、全くお門違いだ。
その証拠は、今ここにしっかりとある。
夢を現実に実現せしめる鍵は、ここにある。

『…最近、授業で良くやらかしてくれたからな。僕としても、途中で作業を中断されないのなら充分だ。』

『また何か分からない事があったら、遠慮せずに言え。「魔法薬学」なら、エヴァンス達よりも得意だから。』

あれは夢ではない。
そして、これは現実ではない。
境界を曖昧にして、限界を膨張させて。
ルイは、たった一つ、思い付く。
存在ごとその実体を吹き飛ばされてしまいそうな恐怖を、必死に飲み込んで。
ルイは、もう一つの違和感に気付く。



「…何か、違う。」






「──で、名前は??」
「ルイ・ホワティエ。」
「…なかなか良い名前だね。」
「…君が他人を褒めるの初めて聞いたよ。
特に名前なんて、いつもなら『僕の方が語呂がいい』とか意味わかんない事言い出す癖に。」
「──何となく思っただけさ。
何だかとっても、耳に馴染むなぁって。
親のセンスだけはまぁ認めるよ。」
「…それでも、苛めちゃう訳だ。」
「まぁね。仲間外れは良くないよ。」
「と、特に嫌いだもんね、あの三人…」
「一度嫌ってほどコテンパンにしてやったのに、全然懲りないんだもん。さすがの僕もそろそろ我慢の限界だし、身の程ってやつをもう一度教えてやらないとね。」
「…まぁ、なかなか愛されてるみたいだし、
ダメージくらいは与えられるだろうね。」
「よーし、久々に僕も久々に本腰入れるかなー!!
ピーター、明日の朝までに準備お願い。」
「え、ええ?!僕一人で?!」
「やれ、速攻、命令。」
「イエッサー!!!」
「(あーあ、ごめんねルイ〜…
僕とんでもない事言っちゃったかも。
あ、でもそれで泣いてる彼女を慰めたら、意外といけるかも。よーし頑張ろう。)」






何かが違う。
何かが変だ。
とても、とても大事な物が。
このホグワーツにはない様な気がする。
ルイが知っている。
そして多分、彼等も知っている。
そんな誰かが、居ない気がする。

忘れてはいけない何かが。
忘れてはならない誰かが。









「──さぁ、お姫様??
お祭り騒ぎの時間だ。」









この世界には、居ない気がする。



TO BE COUNTINUE...

後書き…

ただポニテリリーが書きたかっただけ。
相変わらずセブの話し方が一定でない。
そして思いがけず誕生したチャラ男系リマ。書き始めた途端に「かっるううううう!!!」と絶叫したくなったのは秘密。

ミルちゃん=フォークという方程式が成立しそうな今日この頃。ザリスが今まで以上にかませ犬になっててわろた。

何で彼等があんな性格になったのか。
まぁそれはおいおい考えていきます()
最近毎日更新だなおい!
どんだけ楽しいんだおい!

(勝手に)続きます!




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