happy days | ナノ


□happy days LOS4
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「全く、とんでもない話だわ!!!
私がそこにいたら、ポッターに噛み付くなり引っ掻くなりしてやったのにー!!」
「髪、大丈夫なのか…??」
「うん、ちょっとしか切られてないから…」
「そういう問題じゃねーだろ!!!量じゃなくて質の問題…つーか行動そのものが一番ダメだろ!!」
「で、でも別に殴られたりとか、怪我させられたりとかじゃないわけだし…」

夢の中では自分にやりたい放題だったザリスにここまで擁護されると、何というか微妙な気持ちになって笑うしかなかった。
ミルはというとこっちもこっちで、『女という人種への名誉毀損だわ!!!』とか叫んでキャンキャン騒いでいるし、その後同じグリフィンドール生に助けてくれたという話も、耳を傾けてくれそうにない。
ルイはため息をついて、隣で苦笑していたセブルスに小さく耳打ちした。

「リ、…エヴァンスの事、言ったら駄目かな??」
「僕からはあまり勧められないな…
彼女は純マグルの生まれだから、良くスリザリンから中傷の対象になっているし、彼女自体もそうやって侮蔑して来る僕らに徹底的に反抗しているから、あまりこちらでの評判は良くないんだ…上手く話しても、多分信じて貰えないだろうな。」
「…そっか…」
「……あまり、嫌わないでやってくれ。
最近僕ともあまり話してはくれないが、根はとても優しくて、今回みたいな事は黙って見ていられない子なんだ。
例えルイがスリザリンと知っていたとしても、同じ結果になっただろうに。」
「…うん。」

とっくに知っている。少なくともセブルスが来るまでは、彼女の自分への対応は、それが見え隠れしていた。
きっとジェームズを探している時にルイ達を見つけて、無我夢中で来てしまったのだろう。
そういうところはやっぱりリリーなのだ。

「ムキーッ!!!今度会ったらフォークでも投げつけてやろうかしら!!!今通販で絶賛注文中なんだから!!!」
「おう!!そのままポッター専属フォークになってくれたら俺は嬉しいぜ!!!」
「ミル、ザリス、もう少し声を落とした方がいい…マダム・ピンスが物凄い目つきでこっちを睨んでいるぞ…」
「わわ、そうね。」
「完璧に狩る者の目だな。」

また一つ変わって居ない事に、ルイはホッとした。人一人撲殺しそうな雰囲気の人間に安堵するのもどうかと思うが。

「私、本戻しに行ってくるね。」
「気を付けなさいよー、一度本棚全部倒して大惨事起こした真犯人なんだから。」

そんな事起こしたんだ…今ひとつ実感がないものの、ルイは自分の罪深さを感じて苦笑いした。マダム・ピンスの鋭利な視線も伊達ではなかったらしい。

「…あ、ここだ。」

分類法の貼り紙に従い、目的の棚へとたどり着く。指で本の背をなぞって行くと、そこには見上げる様な高さに並べられた棚へと行き着く事に気付いてしまった。
手を伸ばしてみた──届かない。

高いところはあまり好きではないが、どんなに爪先立ちしようと目的の棚に本を戻す事は出来なさそうだ。しょうがないと腹を括り、移動式の梯子を隅っこから引きずって来る。かなり年季が入っているのか、埃だらけの段に手を掛けただけで、ギシッと嫌な音で梯子が鳴いた。

「…よし、」

ふん、と気合いに鼻を鳴らして、ルイは梯子の段に足を掛けた。
決して軽くない体重を受けて、嫌な音が大きくなる。
一段一段確かめる様に登る。一瞬でも踏み忘れてしまえば、本日二回目の怪我を致すことになってしまう。
ギシ、ギシィ、ギシィィ!!
梯子が軋む声が段々大きくなっている気がする…考え過ぎだろうか??
あと三段、あと二段、あと一段…
そろそろだとルイが上を見上げたところで。
スカッ!!タイミング良く、足の感覚がなくなった。

「え、ひゃ…わわわわッ、」

変な悲鳴を上げながら、宙ぶらりんになった足をバタバタ動かすが、間に合わない。
逆にそれが仇となったのか、長い梯子はルイの抵抗で不安定になり、支えとなっていた棚からフワリと音もなく離れる。
ああ、また保健室のお世話になるのか…真っ青に青ざめたルイの顔にひくりと、涙交じりの引き攣った笑みが浮かんだ…



ガシャンッ!!



「ッ!!!…??」

ルイは暫く目が開けられなかった。下で大きく音が鳴ったのと、身体を揺らした衝撃を、自分の何らかの骨が砕けたのだ(曲解しすぎだ)と思ったからだ。
──だが、あの落下時独特の、劈く様な痛みは襲って来ない。それどころか足はしっかりと梯子の段に乗っているし、梯子にしがみついていた頬には、何だか肌触りの良い、硬い何かの感触がある。
ルイは恐々と目をこじ開けた。

「……あれ??落ちてない…」

頬にあった感触は、棚に隙間なく並べられた本の背表紙だった。ピントが合わなかったそこには、ルイが戻そうとしていた本と一字違いの表記があるのが、目が慣れるうちに徐々に見えてきた。
どうしてだろう??確実に落ちると思っていたのに…

「早く直しなよ。」
「!!!」
「あ、下は見ない方が良いよ。
またパニックになって落ちるかも。」

突然下から声がして、驚いたルイの行動を予測した様にまたその声が言う。
途端に、今までの恐慌状態から抜けたルイの感覚が不安定になった。ひぃぃ!!と悲鳴をあげたルイは、慌てて目の前の棚に持っていた本を突っ込んだ。

「そのまま、段だけ見ながら降りて。
そうそう、急がなくて良いから、ゆっくり、ゆっくり…
はい、もう下見て大丈夫だよ。」

先程の恐怖に震えながらも、ルイは声に従って、ゆっくりと降りて来た。やっと床が見えたのに一気に安心したのか、最後の言葉と共に一気に飛び降りる。
ジンと足の裏が痺れたが、ルイはやっと心の底から安堵のため息をついた。
地面だ…まごう事なき地面だ…どっしりと構えたその感覚に、涙すら出そうだった。

「あ、ありがと…」
「ううん、落ちなくて良かっ…あれ??」
「え、何…、あ!!」







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