happy days | ナノ


□happy days LOS3
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「(そんな事、言わないでよ。)」

ルイが知っているジェームズは、魔法使いの自分に誇りを持っていた。
どんな魔法も呪いも、いずれは誰かを幸せにする為に生まれたのだと、生まれながらに知っている、ただ一人の魔法使いだった。

「先生も、生徒も、何もかも。
僕が知ってるマグルと何も変わらない。
特別な事も、抜き出た物も、何もない。
前に習えを延々と繰り返す、
人形みたいな奴等ばっかり。」

違うよ、

「僕の期待をぶち壊して、
僕の希望を打ち砕いて、
何が魔法だ。
何が…特別だ。」

違うよ、ジェームズ

「…こんな退屈な場所、」

違う、違うよ、






大っ嫌いだ。






「嘘だよ。」
「…はぁ??」

ジェームズが間抜けな声を上げた。
ルイは気付けば、膝の上に置いた拳を、白くなる程ギュッと握り締めていた。

「…そんな事、思いたくない癖に。」
「ちょ、ちょっと、何言ってんの??」
「…本当は、大好きなんでしょ??」

ピクリと、彼の髪の先が揺れるのを見て、泣き出しそうな声をぐっと飲み込んで、ルイはまっすぐに顔を上げた。
そこには、今にも怒鳴り声を上げそうな、けれど、どこか怖がっている様な、そんな奇妙な表情をした彼がいた。

「本当は、楽しい事をやりたくて、
ずっとずっと笑っていたくて、
…魔法が何よりも楽しいんだって、
誰よりも知ってて、分かってる癖に。」

いつも騒ぎを起こす時の彼は、
天国にでも居るかの様に笑っていて。
知り合う前はその笑顔が、どこか見せ付ける様に見えていた事もあったけれど。
やがて、それが心からの物だったのに、ちゃんと気付いた。

「授業にちゃんと出て、
たまに悪戯をして騒いだりして、
でも、みんなを笑わせてくれたじゃない。
ここは本当に素敵な場所なんだよって、
いつも私に教えてくれていたじゃない。」

だから、今の彼がルイには奇妙に見える。
どんな環境でも楽しむ事を、笑って生きる事を忘れなかった彼が、どうしてこんなに憂鬱そうにしているのか、ルイには全く分からない。セブルスが変わらずに居てくれたのに、彼がどうしてこんなに変わっているのか…全く分からない。

「…ねぇ、ジェームズ。
どうして、笑わないの??
どうして、そんな事言うの??
そんなの全然、ジェームズらしくないよ。
そんなの、そんなの…全然、違うよ…」
「ねー失礼だけど聞いていい??」
「え…」

涙で滲んだルイの目には、今の彼がどんな表情をしているのか上手く見えなかった。だから、突然こちらに突き出された手に気付くのが、ほんの一瞬遅れてしまった。

ダン!!!と耳を塞ぎたくなる様な音がした。彼の手が自分の肩を、爪痕が残りそうな力で、思いっきり木の幹に叩きつけたせいだ。頭の神経が揺さぶられて、意識とは反対に目が勝手に瞼を閉じ、衝撃を耐える。
掠れた小さな悲鳴が歯の間から漏れた。
目を開けた先には、燦々と差す木漏れ日を遮って、冷たく曇った榛色が、ルイを睥睨していた。

「頭おかしいの、君。」
「…!!!」

そこに、夢の中のあの優しさはなかった。

「僕は君の事、頭のてっぺんからつま先まで全く覚えがないんだ。
なのに、初めて会ったと思ったら、違うだの、嘘だの、勝手な事言ってさぁ。
妄想での設定語られても、他人から信じてもらえないってちゃんと分かってる??」

ルイはやっと実感した。
これが、スリザリンの存在位置。
これこそが、彼等しか知らない差別。

「おまけに馴れ馴れしくファーストで呼んだり…僕が何を大好きだって??
君の方こそ魔法を使いすぎて、頭がおかしくなったんじゃない??」

ルイは初めて、彼を怖く感じた。
いつも笑って走り回っていた彼は、どんなに嫌味を言われても、鼻であしらい気の利いた冗談でやり込めていた。こんなに敵意を真正面から向ける人間では、なかった。
矢張り、ここは違うのだろうか。
自分が夢見た、あの優しさと光に満ち溢れた場所で、日々を笑顔で過ごしていた彼等は、もう、どこにも居ないのだろうか。

「ジェームズ、お願い、話を…」
「…僕が言いたい事、まだ分からない??」
「!!!」

ヒヤリと頬に当てられたハサミの刃先に、ルイは腰から寒気がした。
それはスルリと彼女の髪の間に滑り込んで、酷く柔らかな音と共に、チョキンと一房、黒く長い髪を切り落とした。



「軽々しく、名前で呼ぶなって言ってんだよ。」









「やめなさいよ、ポッター。」

凛と低い声がした。彼女が本気で怒った時の、震える怒りを綺麗に飲み込んだ様な、こちらが畏怖すら覚える声だ。
ジェームズは一瞬驚いた顔をして、けれどすぐに榛色の目を眇めて、ルイの前から体を起こすと、ゆっくりと振り返った。
やれやれという、呆れた声の向こうに、ルイは揺れる赤いうねりを見た。



「何か用かい??エヴァンス。」



鋭く尖った視線には、あの鮮やかなエメラルドの色など、全く浮かんでいなかった。




TO BE COUNTINUE...

後書き…

うおおおお眼鏡セブウウウウ!!!>ハーフリムレンズはドリームだよね!!
話を進めるためだったのに、ただの眼鏡セブマンセー話だった…orz
ジェムが何時の間にか厨二病になってて驚いた。ハサミ常備とかどこのバスケのキャプテンだよ畜生!
ていうかリリーたんがまさかの主人公のライバル的な登場でカッコよすぎる…あれ親世代のイケメンってリリーだったっけ?

色々突っ込みたいことがあるけども、
とりあえずまた勝手に続きます!!




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bkm





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