happy days | ナノ


□happy days LOS3
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次の日になると、熱はすっかり引いていた。
まだ休んだ方が良いのではと心配するミルをよそに、ルイは朝の授業に出ると言って大広間へ向かって行ったし、セブルスもあれだけ元気なら大丈夫だろうと言って、彼女の好きな様にさせた。



「ルイ、ランチ食べたら湖に行かない??
ザリスの提案なんだけど…」
「あ、良いねそれ。行きたい。」
「マジで?!じ、じゃあ決まりだな!!
最近大イカがシンクロにはまってるらしくて、なかなか見ものらしいぜ!!」
「本当??ふふ、楽しみだね。」
「(…アンタこれだけお膳立てしてやったんだから、今度何か奢りなさいよね。)」
「(返す言葉もありません…!!!)」
「そうだ、セブルスも…、??」

ルイはセブルスに誘おうと振り返る。然し、今まで隣に居たはずの彼は、いつ消えてしまったのか、どこにも居なかった。

「セブルス…??」
「また図書室にでも行ったんじゃない??
基本単独行動が好きなのよね、彼。」
「(…あ、)」

ミルの言葉に、ルイはふとある場所の事を思い出した。夢の中で、セブルスが一番落ち着くといって自分に教えてくれた、あの秘密の場所。もしかしたらあそこに…

「…ぼっち野郎とかほっといて、早く行こうぜ!!いい場所取られちまう。」
「待ってよ、まだ全部食べて…」
「…私、やっぱり良い。」
「ハァ!?ちょ…!!!」
「ごめんね、また今度!!」

ザリスの必死の制止も虚しく、ルイは席を立ち走り出した。人混みを掻き分けて進んで行く彼女の背中に、『そげなー!!!』という誰かさんの悲鳴が縋り付いて来たが、急ぐルイには聞こえるはずもなかった。

「…振られたわねー完全に…」
「…心折れそ…」
「…とりあえず湖行く??」
「行かねーよ!!!!」






チョキン、ハサミが鳴る。
羊皮紙が二つになる。
チョキン、ハサミが鳴る。
羊皮紙が四つになる。
チョキン、重ねて切る。
羊皮紙が八つになる。
チョキン、チョキン、ハサミが鳴る。
羊皮紙が十六の紙切れになる。
チョキン、チョ…ハサミを止める。
何時の間にかただの紙くずになる。
ため息をついて放り投げる。
羊皮紙がチラチラ宙を舞う。
今日もいつもと…

「…ん??」

人の気配がした。






「…、しょっと。」

夢の中とは違い、出入り口として使っていた窓は歪んでいて、開けるのに少し根気が要った。何とかこじ開けた窓から身を乗り出し、腕に力を入れて身体をひねり、勢いをつけて地面に着地する。
顔を撫でた風は、以前感じた心地良さを変えずに、矢張り穏やかに吹いていた。

「(、…誰か居る…??)」

木陰を作る木の根元に、誰かのスクールバッグが置いてあったが、人影はどこにも見えない。荷物を置いたままどこかに行ってしまったのだろうか…そろりと近付いて、ルイは鞄に目を落とした。

「…??これ…」

セブルスのじゃない、眉を微かに動かした時、視界の隅を何か白い物が横切った。
顔を上げると、ヒラヒラと舞う同じ様な白が額に落ちて来て、思わず目を瞑った。
手を伸ばしてみる。くしゃ、と軽い音を立てて手の平に掴んだそれは──羊皮紙??

「何で上から…」

突風が木の葉を揺らす。煽られたそれは簡単に手の平から吹き飛んで、彼方に広がる森の向こうに攫われていった。
乱れた髪を掻き上げて、視線を仰ぐ。
深緑の光の中、誰かがルイを見ていた。
クシャクシャの黒い髪。珍しくレンズ越しではない、どこか鬱屈とした榛色…






「──誰さ、君。」






ジェームズ・ポッターが、彼らしくもない淡々とした声でそう言った。







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