happy days | ナノ


□happy days 66
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「ねぇ、リドル。」
「もう『とむ』って呼ばないの??」
「う、うっさい。」
「で、何??」
「…これから、どうするの??」
「特には考えてない。」
「──え」
「そもそも、ユニコーンを殺したからって罰せられるものじゃないし、こんなに森の奥深い所で僕らが襲われたなんて思わないだろう。特に群れる種族でも無いんだし、まぁ格別何か策を弄する事は無いかなって。」
「そ、そっか…」
「仲間のユニコーンにもう一回刺されるとか考えてた??」
「そんなの考えてないよ!!馬鹿なの?!」
「馬鹿に馬鹿と言われるほど光栄な事はないね。」
「そうだよ!!あれ、今更馬鹿って言った?!」
「あー寒い寒い、早く帰ってあったかい物飲みたい。」
「くそぅ舌火傷しろ!!二日位塩味がしみろ!!」
「…ルイ、上。」
「え??」
「月だ。」

顔を上げて緩やかに呟いたリドルの声に、やや膨れっ面をしながらも、ルイは空を仰ぐ。
雪雲に埋められていた夜空は何時の間にか晴れて、満足気に丸く輝く月の周りに、薄く張られた雲の下でその銀色の明かりが、大きな円を描いていた。
綺麗だね、という声が聞こえた。ルイは微かに驚く。
ルイの知っているリドルは、月が光ろうが太陽が燃えようが、知らぬ顔をして素通りする様な人間だった。

「たまにああなるんだ。
僕も見るのは久しぶり。」
「…珍しいじゃん。
さっきの頭突きが効いた??」
「未遂じゃないか。
僕だって月くらい見るよ。」
「…ふーん。」

少しだけ彼の背中が暖かくなったのは、人一人背負っていた歩みが止まったからだろうか。
数刻前までどくどくと血を垂れ流していた腹からは、もう痛みを感じる事がないのに、何だか涙が出そうだった。



「──僕は、もう戻らないよ。
僕はこれからも、
誰の隣にも居る事なく、
誰の痛みを知る事もなく、
悲鳴と苦痛と、死を振り落として行くよ。
多くの人を苛んで、
多くの人を苦しめて、
多くの人を、不幸に突き落として行くよ。
『とむ』を犠牲にして、
『ヴォルデモート』を解き放って、

『トム・リドル』を、
この世から完全に消去して行く為に。



は、止まらない。
誰にも、止めさせはしない。
こんな、誰も『幸せ』にしない世界、
砕いて、握り潰して、粉々にしてやる。
殺しても殺しても死なないこんな世界、
何度でも切り裂いて、何度でも首を締めて、
二度と生きたいなんて思わせなくしてやる。

『幸せ』なんて得られないなら、
『幸せ』になんてなれないなら、



こんな世界、あったって意味がない。」
















じゃあ、















「じゃあ、私が殺して止める。」






それは、





「──私は、もう歩かないよ。
私はこれからも、
誰の隣にも居てあげて、
誰の痛みも知り尽くして、
笑顔と喜びと、生を与え続けて行くよ。
多くの人を慈しんで、
多くの人を愛して、
多くの人を、幸せで満たして行くよ。
『とむ』を攻撃して、
『ヴォルデモート』を食い止めて、

『トム・リドル』を、
この世に完全に生存させて行く為に。



私は、止まらない。
誰にも、止めさせはしない。
こんな、誰も『幸せ』にしない世界、
砕いて、握り潰して、粉々にしてやる。
殺しても殺しても死なないこんな世界、
何度でも切り裂いて、何度でも首を締めて、
二度と生きたいなんて思わせなくしてやる。









それでも、












『幸せ』なんて得られなくても、






『幸せ』になんてなれなくても、









こんな世界、あったって良いんだって、









アンタにいつか、思い知らせてやる。」



息が止まっていた。
心が完全に停止した。
それは、リドルも同じだった。

世界で唯一燃え尽きた森の中で動くのは。
その上で息づく月の光だけだった。



言って欲しい言葉があった。
伝えたい想いがあった。
たった一人に届けたい、
それは呪いの様な絆だった。

もう離れたくはなかった。
もう一人で居たくはなかった。
だから、いつまでも、どこまでも、
一緒に居る為の、一度きりの賭けだった。



リドルが手の力を抜いた。
ルイの足はフワリと地についた。
振り返ったリドルの目を見据える。
ルイはもう、目を逸らす事は無かった。
紅い目をした蛇も、悲鳴をあげる少年も居なかった。
そこにはただ、硬く微笑む青年が居た。

「──唇、切れてるよ。」
「誰のせいかっての。」

ボロボロで、ズタズタになっても。
ルイの瞳は、彼を見ていた。
思えば、彼女の目はこんな色をしていたのか。
黒く、どこか金の混じる、不思議な色だ。






「ねぇ、ルイ。
『幸せ』って何だと思う??」

「んー…そうだなぁ…」



冷たい手で顔を包まれて、

月明かりの混じる口付けをされて。

血と土と涙の味が微かに遺るなか、

ルイはふっと笑ってそう言った。






「今がそうなら、死ぬ程嬉しいかも。」









TO BE COUNTINUE...

後書き…
短い。
初期の短さを思い出しますねこれ。
続けようとも思ったけども、ちょいとここで一区切りっていつも言ってる気がするなあ。
ていうか一応恋愛モノアリなのに、こんなにちゅっちゅしてない夢も珍しい。ホントはもっといちゃこらさせたいけどねみんなヘタレだよバカヤロゥ!!





追記でこれからの事について。
正直去年で閉鎖しようと思いました。
筆を取ることが完璧に出来なくなってます。
もう個人的にこの話は完結してるので、そろそろ親世代に戻って馬鹿みたいな話かきたいです。まあ書いてないからそれもできるわけ無いけども。
ポタ自体にもそこまで萌えを感じる事が出来なくなったっていうのもあります。
でも、やっぱりかきたいとおもうんだよね。
だからもう少し頑張る。まだ続けたいから。

辛気臭くなったけども、ルイさんたちの末路(←)を書き上げてからまた考える事にします。
あれ、何で後書きこんなながいの。

続きます!!




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bkm





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