happy days | ナノ


□happy days 66
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「あ、もうこんな時間だ。」

右腕に付けた腕時計の短針が、思ったよりも進んでいた事に驚く様にジェームズが言った。
リーマスのベッドを囲む様にして、思い思い課題をこなしたりお喋りをしていた他の四人も、その声につられて医務室の隅にある柱時計に目を向けた。

「かなり長居しちまったな。」
「は、早く帰らないとマダムから怒られるね。」
「そうね、ルイも談話室に置いて来ちゃったし…」
「…え、寝てたんじゃ…」

リーマスは、あの心配性の彼女が、例えばそれが自分の為でなくとも、リリーと一緒に来なかったのを密かに不思議に思っていた。
息巻くリリーを何も言わずに放置するなんて(シリウスに対して)ドSな所業もやるはずがないので、てっきりもう寮で休んで居るのかと推測して居たのだが…

「あの子、ソファでぐっすり寝入っちゃってたのよ。
起こすのも悪いし、そのままにして来ちゃったから、きっと一人で待ってるわ。」
「…オイ、さっさと帰るぞ。」
「え〜??もうちょっと居ようよぉ…」
「言い出しっぺが何言ってやがる!!」

今帰ったらレアなルイの寝顔見れんじゃね?!とか、考えてるんだろうなあ…急にいそいそと帰り支度を始めたシリウスに、内心苦笑いした。
自分も恐らく、そんな表情はおくびにも出さないで、きっと早く帰りたがるのだろうけど。

「あ、イイよリーマスは寝てて!!!」
「…ううん、お見送りするよ。」

ゾロゾロと医務室を後にする彼等の背中を見つめていたら、何故か体が勝手に動いていた。
布団の上に掛けてある上着を急いで着て、裸足のまま革靴に足を通す。パクパクと乾いた音が、彼等の足取りの後ろからついて来る。

「寂しがり屋さんなんだから〜」
「誰だってそうだよ…」

からからと笑う ジェームズは、そんな自分の気持ちをさっくり見透かしている。けれど、それをさも当然の様に受け止めて居るのだから小憎らしい。

「あったかくして寝なよ!!」
「気分が悪くなったらすぐマダムに言うのよ??」
「また明日も来るから、大人しくしとけよ。」
「よ、夜更かししないでね。」
「…うん、ありがとう。」

寒さの所為か、巣で騒ぐ雛鳥の様にギュウギュウ寄り集まって口々に言う彼等に、微笑ましさを感じて微笑する。共に足を揃えて寮に帰れないのが少し残念だが、そんな事を思わせてしまうこの仲間たちの様子は、嫌いでは無かった。

手を振り、冷たい扉を閉める。
さっきまであんなに騒がしかった医務室に、彼等のざわめきが反響して居る様な部屋の温かさに、けれどリーマスは低いため息をついた。
背中に食い込む傷がまだ、疼いて居る。









「苦しい、なぁ…」






その嘆きを聞いてくれる彼女は、此処には居ない。




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