happy days | ナノ


□happy days 59
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「…ッ貴様にも忠告した筈だ。
僕の友人には、一切手を出すなと!!!」

元々、アリスはかなり警戒心が強い。初見の人間と慣れるまで、かなり時間がかかる。
…けれど、今とそれとは桁違いだ。
ルイやキールでも、未だ嘗て見た事がないほどに、アリスは彼に向かい威嚇する様に、全身に憎悪を漲らせている。

「…忠告なんて、非道いですね。」

流れた氷点下の旋律に、ルイは目を見張る。彼の笑顔の中にそれまで欠片として残っていた人間性が、完璧に崩壊する。
それは…何て、冷たい笑みなんだろう。ぶるりと震えた拳を、ルイは思わず隠した。

「…僕はただ、彼女を、






助けてあげた、だけなのに。」

丁寧で恭しい口調。けれどそれは、同年代であるアリスに対しては明らかに異質で、むしろ強烈な皮肉にしか聞こえない。
…アリスとはまた違う意味で、敵意というのに敏感だからこそ分かる。
それは、彼に対する…
圧倒的な『侮蔑』だった。

「貴様の言う事など信用ならん。」
「こんなに忠誠を誓って居ますのに。」
「僕は誇り高きペベレル家の人間だ。
…財産と名声目当ての人間に対する礼儀など、本来ならばもっと最悪に出来る。」

いつもの上品なナイフの様に鋭い言葉が、今はただゴリゴリと相手を荒削りする為の鋸みたいな音を出して居るのが嫌だった。
それはまるで、アリスの持つ洗練された清浄な世界が、醜い言葉で穢されて行く様。
…そしてその元凶は、まるで穢れなど素知らぬという顔で、奇麗に微笑んでいる。
それが何よりも、恐ろしく感じた。

「…一言申し上げますと、」

つぃ、と視線の氷河は雪崩の様に、此方へ押し寄せて来るけれど、どうして、彼は未だ奇麗に、笑って居られるんだろう。
しかしルイは気付かなかった。その微笑が少しばかり、奇妙に歪んでいた事を。
意識の氷雨が肌をつついて行く。
もつれ合う髪の毛、裂け目のあるローブ、薄汚れたスカート、ぺたんこの鞄、そして…
今までの微笑を消し去り、彼は哄笑する。
唇を捲り、下瞼をにんまりと持ち上げて。






「…御友人も、
少しは選んだ方が宜しいですよ??」






最低最悪の、宣告をする。

「マールヴォロ!!貴様ッ…」
「そんなに怒らないで下さいよ。
僕は『誇り高きペベレル家の者』である貴方の為に言ってるんです。」
「ッ何処までも、腐った外道が…!!」
「…外道??心外ですね。」

流石に何処か腹の虫に収まらない所があったのだろう、奇麗な形の眉を顰めて、リドルはさも嫌そうに口角を上げる。
そして、そのままルイを見据えた。

「そう呼ばれるのは…
そちらの下民で充分でしょうに。」

視線、言葉、存在認識。彼の全てが体中をまるで蛇の様に這い回り、蹂躙する。
立ち去れと怒鳴られるよりも。
千の口で罵られるのよりも、辛い。
血が沸騰して、体を冷却して行く。
仕上げとばかりに、彼、トム・リドルは。
音も無くルイの正面に立ってみせた。
蛇だ。
彼は、獲物を狙う、狡猾な蛇だ。



「…忠告しておく。
これ以上、無様な姿を晒す前に、









僕の前から消えろ、××。














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