happy days | ナノ


□happy days 59
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「解せぬ!!」



アリスが愛らしい顔をグシャグシャに歪め、未だに変声期の訪れない甲高い声で叫んだ。
表情は見るからに険悪で、うっかり手でも出せば爪で手酷く引っかかれそうだが、ルイとキールにしてみれば、彼の癇癪などいつもの事。笑って流せるのである。

「そりゃ告げ口は嫌な事だけどさぁ、
向こうは日頃のストレスがそんな事でもしなきゃ発散出来ないんだからぁ、少しは我慢してやっても良いと思うけどぉ??」
「うわ、キール黒ッ。」
「譲歩だよぉ、ねぇアルジャーノン??」
「それで済ませられる物ではない!!」

にっこり自分の手のひらに笑いかけるキール。アルジャーノンとはその上に乗っている彼の蛙だ。そんな彼の反応にやきもきしたのか、アリスは更に声を荒げた。

「大体貴様らが毎回穏和に処理するから、味をしめて同じ行いを繰り返すのだ!!」
「はいマカロンあげるから落ち着こうねー」
「話を逸らすな!!然しマカロンは寄越せ!!」
「(マカロンは欲しいんだぁ。)」
「(可愛いなぁもう…)」

ピンク色のマカロンをはむはむする彼を眺めていると、二人はほのぼのした気持ちになる。因みにそのマカロンはイチゴ味とか可愛いものではなく、生ハム味とかいう酷いものだったが、食べる姿が可愛いので気にしない。

確かに彼等だって腹は立った。
寧ろ外に放出して喚くアリスとは違い、中でマグマの様に沸々と黒く煮えたぎらせるタイプの二人の方が、フィルチ少年に対する罵詈雑言は酷い物だったが、それを言わない分自分達は弱いのだと彼等は分かっていた。
だから、アリスの怒声を止める資格はない。
というか、彼がそうやってプンスカ怒り、それを笑っている内は、自分達はまだ平和な人間の部類で居られるのである。



「…同じ寮と言えば、近頃やたらと諫言して来る奴が居ったな。」

他者に対して労りや慈しみの心を持たない外道を嫌い、懲らしめる正義のヒーロー(やってる事は外道だが)みたいな事をルイやキールと一緒にやって居るお陰で、グリフィンドール生とは比較的に上手くやって居るアリスだが、実はれっきとしたスリザリン生だ。
一応ペベレル家と言う『純血』の家系の出でもあるので、雑種ばかりが集うグリフィンドールと彼が仲良くするのを、あまり快く思わない者は少なくない。

自分達にとって不利益な情報をアリスが流さない様に、スリザリン生は度々彼を監視したり、馬鹿な真似をするなと口を出してくる。
元々気は全く弱くないアリスなので、何を言われようが平然としているのだが…

「珍しいね、アリスが気にするなんて。」
「いつもなら聞く耳持たないのにねぇ。」
「…少し、あってな。」
「…ハッ、まさか美少女!!?
上のお姉さん達に弄くられた所為で軽く女性恐怖症なアリスにもとうとう春が!!?」
「アリスも男の子だったんだねぇ…!!」

「話を聞け阿呆共。」

何か手を取り合い感激する二人だった。

「…と言うか、女子ではない。」
「え、じゃあ男なんだぁ??」
「…!!アリス、そっちの道に走っちゃ駄目!!
この前誤って告白して来たボビー君(♂・マッチョ)が居るじゃないの!!!」
「あの後半殺しにしてたよねぇ。」
「…だから そういう 思考を やめろ。

一言一句区切りながら恐ろしく低い声で言ったアリスの気迫に、とりあえず黙った。

「…でぇ、本当に誰なの??それ。」
「うむ、名前だけならルイでも知っているだろう人物だ。」
「えー何それ私が馬鹿みたいじゃん!!」
「今の貴様は馬鹿にしか見えんが。」

紳士然とした男性が描かれた肖像画に、『男爵ヒゲ!!』とか言って落書きしているルイは、確かにそうしか見えなかった。









「トム・リドルだ。」






「誰それ、知らない。」
「…。」
「馬鹿って表明したねぇ、アルジャーノン??」
「え、キール知ってるの?!」
「名前だけならぁ。」
「ギャース!!裏切られた!!
友達だと思ってたのに!!!」
「寧ろ知らぬ貴様に裏切られた気分だ。」
「だってスリザリンとかに興味無いもーん。
大体性根腐った野郎か坊ちゃまだし。」
「まぁ基本はそうだよねぇ。」
「…ある意味、スリザリンでも異質だがな。」
「いしつ??」

ルイは首を傾げた。
アリスは眉間の皺を一層強くする。







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