happy days | ナノ


□happy days 58
402/497







「あれ??」



自分は何故、『占い学』の教室に居るのだろう??
この時間、自分は『数占い学』の方に居るはずだ。延々と続く計算と数字の羅列に頭を打たれながら堪える筈なのに、どうして今現在、水晶玉を前に置き、寝そべっているのだろう。
…そして次に、疑問が一つ。

「…やっと起きたのか。
愚鈍と怠慢は身の破滅を喚ぶぞ。」



目の前の彼は、誰なのだろう??
艶やかな金髪をした少年である。
目元はややつり上がって居て、気の強さはシリウスと同じ位か、それ以上に見えた。
リーマスの様な可愛らしい顔立ちをしている…にも関わらず、その表情はかなり気難しそうで、何だかセブルスみたいだった。

シリウスとリーマスとセブルスを足して3で割って…嗚呼あと、ピーターの色を分けて貰ったらこんな人になるだろう。そんな感じの。
ふん、と胸を張って腕組みしたまま動かない彼に、とりあえず声をかける。
見た事も無い人にかける、第一声。

「…どちら様ですか??」
「寝言は寝て言うが良い愚か者が。
貴様の数少ない脳細胞はもう寿命か。」

ずけずけと荒い口調の癖に言葉遣いはかなり上品。切れ味抜群のナイフの様だ。

「行くぞ。プルウェットが待って居る。」
「え…っと、え!!?
あ、あの…何が何だか…!!」

歩く、歩かされ、引っ張られ、歩く。
びっくりした。ていうか躊躇った。
想像してみるといい。いきなり顔も知らない人間に手を掴まれ、荷物を放置し、そのまま何処かへ連れ去られるその光景を。
誰で何故何処に何時どの様なのか、頭の回転が混乱に追い付けないその感覚を。

「…睡魔に負けた貴様に、それでも寛大な僕が自ら優しく教えてやろう。」

歩く、歩かされ、引っ張られ、歩く。
目を白黒させる自分に呆れたか、彼はくるりと振り返り、真正面から見つめて来る。
その目はエメラルドの様に瞬く、深海みたいな緑色。嗚呼、これだけならリリーにも見える、なんて無駄に思ってしまった。

「僕の名前はアリストクレス・ペベレル。
貴様は気安くアリスと呼ぶぞ??」
「…え、ア、アリス…君??」

何となく彼…アリス??が不機嫌そうに見えたので、自分なりに親しみを込めて呼んでみる。
然し彼は悪寒が走った時のようにぶるりと体を震わせて、化け物でも見るみたいな驚愕の視線で此方を見た。

「…貴様…正気か??
報復者に毒でも盛られたか??」
「え、えええぇぇぇ…!!?」
「五臓六腑が冷え渡ったぞ…何だ、いめちぇんとやらか??独り身が寂しいから今更きゃら変更でもするのか??やめておけ恐らく皆が凍りつく。今すぐやめろ。」
「だ、だって…」
「だって…だってだと!!?
貴様やはりいめちぇんか!!?しおらしさあぴーるでぽじしょん変えか!!?」
「話聞いてー!!」



「仲良しさんだねぇ」



突然、空気から抽出され浮き出てきたみたいに、そののんびりした声は現れた。
あの見慣れた彼みたいなもじゃもじゃ頭。それだけで、その下にある細い目はやはり違う色だけれども、笑顔なだけかなり安心する。
何故か鬼気迫る表情で詰め寄って来るアリスに泣きかけていたので、思わず。

「ジェームズ!!」
「んん??」

と叫んで勢いで抱きついてしまった。アリスが何だかギャーギャー騒いで居るが無視だ。
ジェームズ(っぽい人)はしばらくぼんやりと瞬きをしてから、喚くアリスに呼びかける。

「…ねーアリスぅ??
何か変な物でも食べさせたぁ??」
「知らん!!『占い学』で居眠りしてからこうなのだ!!!
誰だとか訳の分からん事は言うし、あといめちぇんか妙にしおらしいし…」
「あぁ…それちょっと思ったぁ。
何か妙に小動物っぽいよねぇ。」
「ジ…ジェームズ…??」
「じゃないんだなぁ。それ、お祖父ちゃんの飼ってる金魚の名前だし。」

ジェームズよりひょろりと背は高い。にっこり笑った顔は、嗚呼、リーマスに似ている。

「キール・プルウェット、でしょぉ??」
「…キー…ル…??」
「あ!!貴様何故プルウェットだけちゃんとファーストなのだ!!
僕はアリス君だった癖に!!」
「うわぁ面白い呼び方だねぇそれ。
意外過ぎて鳥肌立っちゃったぁ。」
「ご、ごめんなさい…」
「…ッもう我慢ならん!!ルイ!!
元の貴様を骨の髄まで思い出させてやる!!!」

細い金糸を振り乱し、アリスはずかずか廊下を走り出す。その後をキールとかいうジェームズ似の少年が、頼りない間延びした声で笑いながら追い掛けて行くので、何だか酷く不安になり、足の向くまま追い掛けた。






「…あ、の…アリス君…??」
「動くな。またこの前の様に茹で卵型の頭になりたいのか!!?」
「ゆ…茹で卵??」
「頭頂部が平たい感じだ。」
「ひィィィィィ!!!?」
「流石に命には代えられないしねぇ。」
「あとアリス君と呼ぶな!!」

…嗚呼、死ぬ(?)前に疑問が後一つ。
何故こんな混乱している時に、自分は箒に縛り付けられ、あまつさえ頭に頑丈なヘルメットを被せられて居るのだろう??
居るのは恐らくホグワーツで一番高い塔の、屋根の上。下を見るのも自殺行為。上を見たって空が近すぎて自殺行為である。

「ね、ねぇ、こういうのやめない??
ホラ、多分私達まだ分かり合えてないのよ、話し合えばきっとこう、わだかまりとかそういうのは無くな…」
「…うむ。そうだな。」






金色の天使は、それを聞いて。
超絶スマイルで微笑んで。







[次へ#]
[*前へ]



[戻る]
[TOPへ]
bkm





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -