happy days | ナノ


□happy days 58
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「…うー。」

特に意味もないけれど、唸ってみた。
うー、うー、うー、獣みたいに唸ってみた。
けれど途中で飽きてしまった。元々唸るという行為は、他者を威嚇し遠ざける為の行動なので、意味も無くする物ではない。

「どうしたの??そんなに唸って。」
「リリー…うー、うー、」
「ちょ、何その愛らしさ…やめてルイ!!
私達まだ清らかな関係で居るべきよ!!」
「いきなり!?ていうかまだって何?!
いずれはそうなりたいとかいう願望!!?」
「…愛らしさって…罪ね…」
「お願い戻って戻って来てリリー!!
別世界に飛び立ってしまわないで!!」

女の子だって人間だもの、男性陣が居ない時、意外とこういうアホなやり取りをする。
『大丈夫、まだそっちには走らないわ☆』と、いそいそと何か偉く乙女チックな、というか乙女と乙女が居る煌びやかな表紙の雑誌をしまうリリーを見て、唸るのはもうやめようと固く心に決めたルイだった。

「…でも本当にどうしたの??
そんな風に悩んでるなんてらしくない。」
「そうかな…??」
「そうよ、ルイの売りは『内心ドロドロ考えて涙を堪え、たまに病みながらも誰かにビシッと諭されてほんのり赤くなりながら解決策を見つける』所なのに…!!」
「リリーカムバック!!何か当社比10%位美化された妄想が頭からはみ出してる!!」

相手が居ないからと言っても暴走気味である。とりあえず深呼吸するルイだった。

「…あのね、リリー。
おかしいかも知れないけど…」
「なぁに??」
「…その、ね。



放っておかれると、
…寂しいなって、
そう思うのって…
おかしい、かな??」



リリーの目玉が、点になった。



「え…と??
よ、要はどういう事??」
「…さっき、ハグリッドの所で、
ほら、シリウス…怒らなかったじゃない??
あの時…な、何て…いうか。






寂しいな、って、思った。」






「ぶぃきしっ!!!」
「うわ、久々だねそのクシャミ!!」
「ああ…??何か嫌な予感がする。」






「ルイ。」
「??…リリー??」



目を閉じて、また開ける。
完璧に三日月形に曲がる、目尻。



「ちょっと出掛けて来るわ。」



そう言って、リリーはひらりと身を翻して。
何故か…男子寮へと猛進して行った。

「な…何か、まずい事、
言っちゃったかな…」

ごめんなさいと頭を下げる。誰に??

「…うー…」

ルイは抱き締めていたクッションをそのままに、ソファにゆっくりと寝転がった。
柔らかい衝撃と共にばさりと髪の毛が顔にかかったけれど、無視して放置した。

何でだろう。どうしてだろう。
どうしてこんなに気になるのだろう。
そんなに腹を立てて欲しかった??
そんなに彼を嫌って欲しかった??
…違う。今まで考えた答えはどれも、自分の中のモヤモヤに全く当てはまらない。

「…シリウスの、馬鹿…」

呟いてから、ふあんと一つ、大欠伸。
雪かきの所為か、体の中に鉛の様な疲労が溜まっている。雪合戦よりは疲れないが。
そうだ、自分をおいて雪合戦をした癖に。
ハグリッドに任された仕事だからと、黙々とそれをこなしていた自分を尻目に。
元はと言えば彼がふざけてピーターに雪玉を投げたのが始まりだった様な気もする。
そうだ、それにジェームズが便乗、悪く言えば悪ノリして、リリーに当たってしまったのだ。

「…誘ってくれたって…」

良かったのに、という言葉は、眠気に吸い込まれる様にして消えてしまった。
嗚呼駄目だ、まだやる事はある。今からリーマスのお見舞いに行って、図書館で本を返して…それからなんだっけ…なにをしようとしていたのか…おぼえきれな…い…



嗚呼、眠いなぁ。




















「ルイ。おい起きろ。
もう授業は終わったぞ!!」

今まで嗅いだ事の無い匂いだ。
やけに甘ったるく、意識を朦朧とさせる為に焚いて居るとしか思えない様な曖昧な。
あ、でも良く考えたら…ローズマリー??
きつすぎてトイレの臭い消しみたいになっているけれど、高飛車っぽい石鹸みたいなこの癖で何となく分かった。

睡魔が腰掛ける目を開けてみる。
目の前には丁度赤ん坊の頭位はありそうな、水で出来た様な水晶玉。
何故か今は鏡の様に周りの風景を反射して、無闇にキラキラと輝いていた。
…そこでまず、疑問が一つ。







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bkm





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