「……」
「……」
「ただいま、リリ〜」
「お帰りなさい、ルイ☆」
何だその新婚夫婦みたいな台詞。
ていうか無視すんな、とか何とか考えていたシリウスに対して、リリーはルイに向けていた笑みを呆気なく吹き飛ばし、腕組みをして『で??』とふてぶてしく聞いて来た。
「病人に何か御用かしら。」
「…なぁ、誰かカメラ…」
「誰も持ってないわよ。」
「私も持ってない〜」
「…まぁ…うん。」
ぶっちゃける。
破壊的に可愛かった。
彼女の場合は咳だったらしく、たまに肩を震わせて苦しそうに咳をして、けれど感染源は絶つべきだとばかりに、その口元は真っ白い清潔そうなマスク。それと同じくらい白く、垣間見える内側は熱の所為かほんのりピンク色をした、血統書でもついてそうな滑らかな毛並みをした猫の耳が、彼女の赤毛の中からぴょいっと顔をだしていた。
良いモンみた。別人の様なルイに軽く恐怖しながらも、白猫化したリリーを見てみたいという気持ちと共に、必死になって一緒にもこもこ叫んでお見舞いに来た甲斐がある。
寝てなきゃ駄目だと口を尖らせて、リリーをベッドへ向かわせるルイに感謝だ。
ジェームズ、残念だな…シリウスはフッと笑った。
「あら…二人共、もう出て行くの??」
「うん、マダム・ポンフリーのお手伝いに。」
「一応仕事だってよ。」
「…そう…」
ずっと寝て起きて薬を飲んで、少しだけ何か口に入れてからまた寝てを繰り返している分、元気に外を歩き回れるルイとシリウスが羨ましいのか、それともただ単に寂しいのかは曖昧だったが、リリーはしゅんとして俯いた。一緒に白い猫耳もしゅんと下を向く。同じく白いしなやかな尻尾がゆらりと一揺れした。
「…ッ!!」
「はいストップな。」
その可愛さにあてられ、リリーをがばっぎゅーぐりぐりしようと身構えたルイの首根っこを掴んで引き戻した。リリーがチッと舌打ち…したのは気のせいだろう。
「いやー!!離してシリウスー!!!
リリーにがばっ(略)するのー!!」
「誰かさせるか阿呆!!寧ろ俺がする」
「りりーぱーんち☆」
リリーの音速の拳を喰らい我に帰った。
…シリウスちょっと間違えた。自分も思いのほか、無意識に混乱しているらしい。
これ以上醜態を曝す訳にも行かないので、シリウスはさっさと帰りたがったが、寂しがりやの白猫はなかなかルイを放そうとはしなかった。
やっとこさ戻って来たルイはにやにやしている…いやさっきもしてたけど、今回は何だかまた意味の違うにやにやだ。
「…何笑ってんだお前??」
「えへ…リリーがね、『お大事に』って。」
「??俺は風邪引いてねぇけど??」
「違うよ…ホラ、」
「……ああ、なるほど。」
シリウスも同じくにやりと笑った。
素直じゃない白猫が真っ赤になって彼女にそう伝言する姿を思い浮かべるのだから、そりゃ誰だってにやにやするか。
「…ッやっぱりがばっ(略)って…」
「行くぞ阿呆、戻られてたまるか。」
ホグワーツはもうお昼だった。
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