happy days | ナノ


□happy days 54
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本当なら彼女の肩を持ってやりたい所だが…今回は分が悪い。
ていうかあれ??となると自分がしているのはルイのじゃなくブラックの──…

「うわキショッ!!」
「あ゛!?テメェこら誰がキショイってか!!
流石の俺でもさり気に傷つくぞ!!」
「…ルイ、お前の気遣いは有り難いが、些かマイナス点が多すぎる。」
「そ、そうかな…」
「テメェも何納得してんだァァァァ!!?」
「いィィィィ!!ひぃぅう、痛い痛い!!」

彼の逆鱗に触れるのが上手いのか、ルイは頬をギューッと引っ張られる。漫画の様にそこまで伸びはしないが痛そうだった。
…何か、仲良いなお前ら。そうすんなり思ってしまったのにセブルスは驚いた。
今までならば、何かとケチをつけてそれを否定しようとしていたのにも関わらず。
以前とは…何かが違うのだ。
それはシリウスが現れてから気付いていた。

二人の間に、入って行けない。今までの様に、彼女の隣が自分だと主張出来ない。
固定された彼の位置が、退かせられない。
居座っても居座っても、唯違和感が募る。

…………嗚呼、苛々する。

「俺のマフラーはそこら辺に置いてある『ご自由にお取り下さい』とかのチラシみてぇにホイホイ誰かに貸すモンじゃねーんだよ!!」
「…ほぅ、僕には貸す価値もないと??」
「当たり前だろうが!!
…俺はルイだから貸したんだよ!!」

嗚呼、嗚呼、苛々苛々。
そんな研ぎ澄まされた感覚が、不意に彼女の方へと吸い寄せられて、凝視する。
未だシリウスの手に届く距離に居る彼女が…ルイが、静かに、けれど瞬時に。

「…ッ…」

顔を赤くして、目を見開いた──…









頭がぐらぐら沸騰していた。脳みそが今にも溶けたまま耳から漏れて来そうだった。
否、別に本当にそうな訳ではない。寧ろそうなられたら困る、非常に困る。
それでも何ゆえにそう言ったのかと問われると、一重にそれは今の自分の容態を説明するにあたって一番該当しそうな喩えだったからとでも言っておこう。
兎に角、今のリーマスは意識朦朧としていた。
それだけ伝わるならば十分である。

「(…まだ…帰って来ないのかな…)」

生理的落涙でぼやけた目で視界を凝らせど、同じ位判断能力のぼやけた頭ではそれらの実像を結ぶのですら困難なのだ。
然しそんな状態であるからこそ、リーマスの胸中には次第に、彼自身ですら得体の知れない不安が肥大していた。

何らかの病気にかかった獅子がその身の危険を感じて茂みから出て来ない様に、人間という哺乳類もまた、病魔に冒された時その身を隠す…存在を気取られぬ為に、休養という形で現実から離反する。

けれどその休養には思わぬ副作用…離反している間の自身の肉体への、そして離反した自身の意識への不安が生まれる。
それは混沌として、曖昧で、然し強力だ。
しかも、それは──他の感情も誘爆する。
寂しいとか、怖いとか、マイナスの感情だが普段なら何か事に当たれば相殺されてしまうような人間の個体適弱点を突いたそんな不安が、病人という弱者を蝕むのだ。

無意識に熱を──外部から与えられる人の熱気を求める。けれどそれを供給するには、冬の外気は冷え込み過ぎていた。
ぼんやりと、黒の一点。明るい不思議なカーキ色を頭に乗せて、ぶらぶら動いている。
リーマスは熱に浮かされたまま、そちらへ向かおうと腰を上げた。
視界は模糊として、何処か薄暗かった。






「…セブルス、行っちゃったね…」
「…相変わらずな奴だな。」

私何か悪い事したかな??と不安げにルイは首を傾げる…うん、そうだよなお前って奴はその位疎いもんな!!
俺も応援したい位にちょっと勇気出して自分の方にグイって引き寄せたけど、恥ずかしさが勝ってすぐに放して逃げちゃったのにそりゃあ気付かないよな!!
…あの反応を見て分からない自体が最早奇跡だ。否、一瞬驚きはしただろうが、その確証を彼女に植え付ける前に、セブルスが走り去ってしまったのも原因だろうが。

…毎度思うのだが…自分達に必要なのは彼女への最後の一押し、ではないのか??
直接的な行動に移しても片鱗しか見せない様な彼女へのアプローチは、まさかルイにとっては短すぎるのではないか??

「(───…!!)」

シリウスは一人勝手にハッとした。当の相手はお腹が空いたのか、袋の中のサンドイッチを物欲しそうに無闇にガサガサ言わせている。
そうだ、足りなかったのはそれだ!!
考えてみれば確かにそうだ。短時間でのアプローチこそ気付かないものの、以前のチョコレートと言い、今のマフラーと言い、長時間でのゆっくりコトコト煮込まれたそれには吃驚する程狼狽えたり赤くなったりしていた。
即ち、恋愛事に興味が無いとか実は女の子しか愛せないとか実は男でしたとか、そういう感じの拒否はして居ないのだ!!ついでに言うとそんな設定も無いのだ…!!

「(…そうと決まれば!!)」

ルイと二人っきりの今がチャンスだ。
これがジェームズとかリリーとかと一緒ならば、爆笑されるわ血祭りに上げられるわでR15並みなのだが、今は二人、そう、二人!!
此処に、シリウスの恋の戦いへのゴングが、
天へ高らかに鳴り響いた…!!(幻聴)







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