happy days | ナノ


□happy days 54
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我が家から帰省し、学校の空気にようやく戻りつつあったホグワーツ生達を迎えたのは、授業の課題でもなく、体の芯から冷やす寒さでもなく…
ただの風邪だった。
いやしかし侮ってはいけない、恐らく空気感染なのだろう、グリフィンドールの一部男子を筆頭に、ほとんどの生徒が3日もしない内にバタバタと倒れ、寝込んだ。
マダム・ポンフリーが尽力して薬を調合してくれているからさほど心配はないのだが、残された人間…そう例えば、ルイ・ホワティエ…他ならぬ自分自身にとって、頭痛や高熱にうなされるルームメイト達をみるのは辛い以外の何物でもなかった。

「リリー…大丈夫??」
「…えぇ、心配しないで…」

また熱が上がったのか、苦しげに呼吸を繰り返すリリーの額に張り付いた髪の毛を払いながら聞いたルイに、然し彼女は心配をかけさせまいとわざと笑みを作る。
けれど彼女が苦しそうなのは一目瞭然で、逆に無理をさせてしまったと悔やんだ。

「きっと誰かが風邪を持ち込んだんですってポンフリー先生が仰ってたわ。
それに帰って来た日は皆大広間に居たから、そこで広まったんだって…」
「そう…ルイ、もう良いわ。
看病してくれるのは嬉しいけど、貴女まで風邪を引いたら大変よ。」

かすれ声でリリーはそう言ったが、ルイは首を振って此処に居ると告げた。

「薬はもうすぐ出来るだろうから、私が風邪になってもすぐに治るわ。だけどリリーが辛そうだし、何より寂しそうなんだもの。」
「…随分と甘やかしてくれるのね??」
「だって…一人は寂しいでしょう??」

クスリと笑ってくれたリリーに幾らか安堵しながら、ルイはリリーのベッドに肘をつく。

「私、兄さんと二人暮らしだったから分かるの。兄さんが仕事で居ない間、すごく寂しかったのを覚えてるから。」

身体的にも精神的にも弱るからだろうが、あの寂しさは如何様にも堪えがたい。
日の光も灯りも無い薄墨色の暗がりに、そのまま飲み込まれてしまいそうな。
そんな寂しさが襲って来るから。

「ちゃんと、リリーが寝るまで此処に居る。
だから安心して眠って??」
「…有り難うね。」

自分でも共感する所があったのだろう、熱で潤んだ目に感謝と、子供みたいな儚さを添えてリリーは笑い、やがて目を閉じた。
すぅ、すぅというゆっくりとした息遣い。
ルイは起こさない様に彼女の額の氷嚢を入れ替えてから、部屋を出た。






ところ変わって此方は男子寮。
むさ苦しいこの場所に乙女達の様な微笑ましい友情など別に期待はして居ない。
が然し、同じく風邪を引いておらずとも、ルイとは全く違った状況に置かれてしまった哀れな人間が一人居るのだ。

「シリウス〜薬い〜」
「うぅ…ティッシュ…」
「……(屍)」
「だーもう!!喋んなうるせぇ!!
ジェームズ!!起きて眼鏡拭く気力あんなら自分で薬くらい取りやがれ!!
ピーター!!それはティッシュじゃねぇローブだ!!
リーマス!!…は静かだな死んでねぇ?!」
「…勝手に殺さないでよ…」

うつ伏せのままそれこそ死屍さながらに身動き一つしないリーマスに思わずシリウスは安否の確認をしたが、熱にだれているだけで死んでは居ないらしく、弱々しく突っ込んだリーマスに少しほっとした。
最強と謡われる『悪戯仕掛人』でさえも、流石に万病の元である風邪には勝てなかった様で、今この部屋で動けるのはシリウスだけだった。
ちなみにジェームズも動けるには動けるのだが、本人曰く、動くと頭痛が再発するのだとか。いや絶対嘘だろうが。

「食事は兎も角、そろそろ薬も切れるな…俺、医務室行って薬貰って来る。」
「あ…それならリーマス連れて行った方がいいよ。熱上がってるみたいだし、医務室の方がまだ対処してくれるでしょ。」
「…そうだな。連れてくか。」

本当は寂しい思いをさせたくなくて、何かと理由をつけて半場無理矢理部屋で療養させていたが、どうやら限界らしい。
コートを羽織り、リーマスのベッドへ向かう。
手で額に触れる。まだ高いが、医務室までなら何とかなるだろう。
行くか??と聞けばやはり苦しいのか、焦点の定まらない目のままこくりと頷いた。

「背負ってやろうか??」
「大丈夫…多分、歩ける…」

見るからに危なっかしい足取りだが、頑固な性格が災いしたのかリーマスは一人で歩きたがった。無茶をして欲しくないのは山々だが、どうせすぐだと自分に言い聞かせ、シリウスはリーマスの後を追った。










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