happy days | ナノ


□happy days 53
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意、識、が、揺、れ、る。
立、っ、て、い、る、の、か、
そ、う、で、な、い、の、か、
分、か、ら、な、い、く、ら、い、
世、界、が、揺、れ、て、い、る。
冷、た、い、痛、み、が、
脳、を、突、き、抜、け、て、
目、が、閉、じ、れ、な、い。
助、け、て、と、
誰、に、も、聞、こ、え、な、い、懇、願、を。
漏、ら、し、た、唇、す、ら、
震、え、は、静、ま、ら、な、い。
刹、那。
音、が、耳、を、か、す、め、る。
い、つ、も、聞、い、て、い、た、
酷、く、悲、し、か、っ、た、旋、律、は、
何、故、か、今、日、は、静、か、に、

狂、っ、て、い、た。





『先生』




凄まじい激痛に、ルイは叫喚した。
声にならない悲痛が、夜の黒に融ける。
胃の中のものが反旗を翻して喉元までせり上がり、炎を飲み込んだ様な焼け付く痛みに耐えられず、ルイは体の摂理に反してすべてを白雪の上に吐き出した。
低く重く張り詰めた嗚咽に、涙と脂汗がどっと鼻梁を伝って流れ落ちて行く。
痛みはやがて口一杯に溜まり舌を焼いた。
吐き出せ吐き出せ消化途中のヌガーもえげつない色のチキンもどろりと糸を引くプティングも吐き出せ全部全部全部全部!!!
誰かにそう叱責されている感覚が五感を支配して来て、ルイはただただその声を恐れてその通りに従った。
体の中の異物を出しきると、後は黄色い酸味の強い液体しか唇を濡らさなかった。






『先生』



『先生』



『先生』






「…ぅ…ッぐ…」

誰を呼んでいる。誰を求めている。
ひたすらその事を考えた。
彼が教えてくれた言葉を指に巻き付けて、激流に呑まれない様にひたすら耐えた。

前に進まなければ。前に、前に。
自分が望むものに進まなければ。

彼の横をすり抜けた星の様に。
彼の背中を流れていった風の様に。
望んだ場所はもしかしたら、あまりにも遠すぎて届かないかもしれないけれど。

「…ッ…」

それでも、望んだのだ。
あの場所に立ちたいと、願ったのだ。
綺麗だね、と、光輝く世界を共に賛美しあいたいと、確かに祈ったのだ。

言ってくれた。背を押してくれた。
暗闇の中独り善がりの戯言を叫び散らした自分の愚かさを、受け入れてくれた。

『帰って、来いよ』

優しく額にキスをして。
信じていると願ってくれて。



これだけの愛に満たされていたなんて、
教えてくれる人がかつて居ただろうか??










「シリウス」



涙でぼやけた銀月の光に。
何故だか彼の瞳を重ねて。
ルイは飲み込まれるまま、混沌の沼へと崩れ落ちていった。







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bkm





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