happy days | ナノ


□happy days 51
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「あら、二人共もう戻るの??」

折角可愛く飾られたノエル・ケーキに半分も手を付けず、さっさと寮へ戻ろうとするジェームズとシリウスにリリーは不思議そうに声をかけた。
が、二人がにやりと口元を歪めて顔を見合わせているのに気付くと、呆れた様に手で彼等を追いやるジェスチャーをする。

「あぁ…ハイハイ、止めないわよもう。
さっさと二人で用意しに行きなさい。」
「ご好意感謝するよ、リリー。早く準備しないと夜中になっちゃうからね。」
「私達の他に誰も居ないんだから心配要らないでしょ。」
「エヴァンスの言う通りだな。
さっさと行くぜ、ジェームズ。」
「はいはーい☆あ、リーマス。僕等のケーキ平らげちゃって。」
「こちらもご好意感謝するよ。」

削られた丸太の様なケーキにチラチラと視線を向けていたリーマスは、その言葉ににっこりして二人の皿へと手を伸ばした。ついでに一緒にケーキを見つめていたルイにも、ジェームズの分のケーキを分けてあげた。
シリウスのケーキではないのがミソだし、ルイもまた何の躊躇いもなしに平らげた。
先生達も羽目を外して居るのか、それぞれのグラスに宝石の様に瞬くワインをなみなみと注ぎ、時折口元に傾けつつも楽しげに会話をしていた。

リリーがテーブルに肘をつき、ふぅとため息をつく。ルイが一人になっていたセブルスの元へ行ってしまったせいで退屈しているのかと思い、リーマスは空席へスルリと座り、いる??と魔女カボチャジュースの大瓶を掲げる。
曖昧に笑い、お願いと傾けられたゴブレットに注ぐと、空気がジワジワと山吹色の水面の下から浮かび上がるのを見て、何故かリリーはクスクスと笑った。

「??どうかした??」
「いいえ、何か凄いなぁって。」
「凄い??」
「だって私とリーマスったら、ほんの二ヶ月前まで本気で喧嘩してたのよ??
あの時は仲直りしてこうして一緒にまたいるとか全く予想もしなかったのに、何だか変な気がしちゃって。」

気まぐれというか、何だか軽いものだったわねとリリーは笑って言い、ぐいとゴブレットを仰ぐ。その動作につられる様に、テーブルの反対側で二人で仲良くミートパイをつついているセブルスとルイをちらりと一瞥して、リーマスも言えてるねと笑ってみせた。
分かっている事に勝る物はないのだ。
少しぬるくなったカボチャジュースが喉の奥へと消えて行った。






談話室に戻り、真っ先に中へと入って行ったルイは思わず感嘆の声を上げた。
大広間のツリーに負けず劣らず様々な光に飾られたクリスマス・ツリーを見たリリーは、少し派手過ぎやしないかと顔をしかめたが、ルイはそんな事ないわとはしゃいだ声を上げた。
テーブルの上には一体何処から持って来たのかと不思議に思う位の(しかしルイは何となく分かった。『隻眼の魔女』の抜け道を通って、ホグズミードから買って来たのだろう)量のお菓子が今にも雪崩を起こしそうな位高く積み上げられている。
ソファには汚さぬ様の配慮なのか、清めの呪文が掛けてあると思われる純白のシーツが被せてあるのも、何だか特別っぽくてルイは嫌いではなかった。

「すごい!!すごいよ二人共!!
何だか全然違う部屋みたい!!」
「当ったり前じゃないか、僕とシリウスプロデュースだよ??」
「…ちょっと、それにしたってこのお菓子どうしたのよ!?
どう見てもこれハニーデュークスにしか売って…」
「細かい事気にすんなって!!
お前通信販売があるって知らなかったのかー??」
「…そ、そうなの!?」
「そーそー勿体無いよ!!
ホラ、リリーも早く座って座って!!」
「え、えぇ…」

何だか納得の行きにくそうなリリーを、ジェームズとシリウスは無理矢理ルイの隣に座らせた。
もしや嫌だったのかもしれないと、途端に眉を下げてリリーに謝り始めた彼女のダブル効果もあってか、リリーは次第に警戒心を解き始める。
二人はニヤリと口を歪ませた。相変わらずの腕捌きだ、リーマスはそう思い苦笑した。

「よーし、今日は無礼講だよ!!
嫌な事はパーッと忘れて騒いじゃおう!!」

高らかなジェームズの声に、他の皆も寄って集って歓声を上げる。
カンパーイ!!という六人の歓声が、降り頻る外の雪の中へと静かに消えて行った。







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