happy days | ナノ


□happy days 40
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──────『ルイ』

─────『ルイ』

────『ルイ』



呼ばないで。
呼ばない、で。

呼ばないで呼ばないで呼ばないで。
呼ばれたら、還りたくなる。
呼ばれたら、懐かしくなる。

一人ぼっちの自分には、それはなんて甘い囁きなのだろう。
頭では否定しても、体はそれを喜ぶかの様に反応するのが、余計に怖かった。



『ルイ』



痛い。痛い。
胸の中がそう、泣き叫ぶ。
痛いよ、痛いよと、転んでしまった子供の様に、
それは酷く稚拙でエゴイスティックなもので。

捕まえられる。
捉えられる。
がんじがらめに縛られる。
理由なんて大それたものはない。
ただそれは、泉の様に湧くただ1つの感情によってつき動かされるもの。

空気が体に絡みつく。
声が、視界が、意識が、歪んで行く。


『もう帰らなきゃ。』


誰かが金時計を見て囁いた。
その時計は誰のものだったっけ??









「ルイ。」

「ひあああああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁあッッッ!!??」

ルイは奇声を上げて飛び退いた。
声をかけた本人のセブルスもその声に思わずびっくぅ!!!と体を震わせた。
しばらくの間、ルイとセブルスは余韻で硬直していた。

「……へ…あ、…セブル、ス…??」

ルイは目をパチクリさせて聞き返した。
その途端、セブルスは溜めていた息を吐き、改まって眉間に皺を寄せてルイを見た。

「ッ…幾等何でもびびりすぎだぞ…」
「ご、ごめんッ、ちょっと考え事してて…!!」

慌てるルイに、セブルスは呆れながらも口許に人指し指を当てて、静かに、というジェスチャーでルイを黙らせる。
騒ぎを聞き付けたマダム・ピンスが怒り狂いながらやって来るかとヒヤヒヤしたが、カウンターを見ても彼女の姿は見られなかった。
どうやら外出している様だ。

ルイはしきりに謝りながらも、申し訳なさそうにはにかんだ。
いつもと変わりないその笑みにしかし、セブルスはそれがいつもと違うものである事に気付いていた。

「…ルイ、」
「あ。ねぇ、セブルスは今年のクリスマスはどうするの??家に帰るの??」
「は??」
「私と皆は残るのよ。今年はあんまり残るホグワーツ生も居ないから、きっと凄く楽しくなりそう。」

楽しみだわ、と言うルイの表情は、本当にそれを心待ちにしていた。
その笑顔に何となく嫌な気持ちがして、セブルスは寮に帰ったら、ルシウスに一番に書類を出して貰おうと思った。

「…その『皆』とは、今日は一緒じゃない様だな。」
「…あ…ちょっと今日の朝、具合悪くて。」
「もう大丈夫なのか??」
「えぇ。もうすっかり元気よ。」

ルイはにっこりと笑ってみせた。
けれどセブルスは、それが酷く虚像じみたものだと少なからず思っていた。

体調は順調。
何があったワケでもない。
表情だっていつも通りだ。
………なのに。

「(…この違和感は、何なんだ??)」

そう思っていた刹那だった。
ルイの視線が、また本棚を伝って行くのにセブルスは気付いた。

「…??何か、探しているのか??」
「え??う、ううんッ!!」

ルイはブンブン首を振り回して否定したが、それが本当かどうかは一目瞭然だった。
ルイと同じ様に、視線を本棚へと伝わせて、次第に眉間に皺を寄せた。

「…『『純血』の栄華』シリーズか。」

セブルスの目の前には、『純血』と詠われる一族の名前が刻まれた本達が、ズラリとひしめき合う様に並んでいた。
『マルフォイ家』、『ブラック家』、『ポッター家』。
何だか酷く見覚えのある名前ばかりだ。

「…良くこんなに、『純血』の一族が周りに集まったものだな。」
「そう、だね…セブルス、椅子に座ろう??」

ルイはそう言って、セブルスのローブの裾を引っ張ったが、セブルスはそれに動じず、そのまま本の背をゆっくりとなぞっていく。

『ウィーズリー家』、『プルウェット家』、
…そして……『プリンス家』。

セブルスはそれに密かに眉を寄せたが、やがてゆっくりとその中の一冊を手に取った。
見知らぬ名前の一族だったが、別にそんな事に興味はなかった。
本は全て古代ルーン文字で書かれている様だったが、背や表紙は驚くほど綺麗で、ページも黄ばんではいない。
どうやら入荷した時から、あまりというか、誰も読んではいない様だった。
ルイもこういう本を読む事があるのか…ぼんやりとそう考えたセブルスだったが、ふとある事に気付き、再度本棚を見やった。

背に書いてあるルーン文字を解読しながら、一族の名前を流し読みしていく。
また『プルウェット家』まで戻って来た時、セブルスは感じていた違和感が解けるのに気付いた。



「……ない、な。」



突然の言葉だった。

「……え。」

ルイはただ、聞き返す事しか出来なかった。









「『ホワティエ家』の本は、

ないんだな。」










『それは、誰にも言ってはいけないよ。



頭の良い君なら、



僕の言っている事が、






分かる、だろう??』











「……!!!」

背中がぞくりと泡立った。
冷たい何かが、背中を舐めあげて行った。
然しセブルスは、ルイから目を離す事が出来なかった。



ルイはただ、微笑んでいた。
無言のまま、セブルスを見つめていた。
けれどその目に、正気という光が宿る事はなかった。褐色はただ、冷徹な視線をセブルスへと向けていた。
張り付いた様なその笑みに、
恐怖を感じずには、いられなかった。



「なくなってるの。大分、前から。」

ルイは冷たい褐色に彼を映したままそう呟いた。

「マダム・ピンスに聞いても、分からないって言われたの。」

漆黒が、窓から入って来る風に揺られて、サラサラと哭いた。






「…どこ、行っちゃったのかなぁ…」






『魔法史』の授業中、リーマスは窓から漏れてくる光の温かさと、ビンズ先生の子守唄に似た朗読の声に誘われながら、一時の眠りについていた。

北東から吹いてきた冷たい冬の風は、彼の机に突っ伏した鳶色の髪を優しげに撫でた。
吹き付けられた北風が触れた本の別珍の表紙には確かに、古に描かれた文字で『ホワティエ家』と刻まれていた。



TO BE COUNTINUE...

後書き…

あへへぇ…ぐだぐだ過ぎてワッケわかんねぇ…
ターミネーター見ながらの更新はオススメ出来んです(オイ

うーあーホント微妙。
やばいくらい微妙。
できるなら全部書き直したい…(泣)

続きます!!







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