happy days | ナノ


□happy days 39
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『邪魔するぜェェェ…??』



そう言うが早いか、頑丈そうな扉は半場突き破る様にして開け放たれた。扉が壁にぶち当たり、その所為で部屋全体がギシギシと軋む様な音を立てて揺れた。
部屋に響いたのは、上品さの欠片もない、人の神経を逆撫でする様な声。

部屋の主は不快の意を示した。
長年付き合いをしてはいるが、相変わらずこの男を好きにはなれない。
彼の伸びすぎ黄色く変色した爪は赤黒く汚れている。
野良猫の様に縺れた灰色の髪からは悪臭が漂い、静かで清浄だった空気を侵蝕していくのが手に取る様に分かった。

彼は眉をひそめた部屋の主の顔が可笑しいのか、喉の奥でクックッと笑いながらこっちを下卑た笑みで見つめている。
捲れ上がった唇から、鋭い牙の様な歯がギラリと光を走らせているのが見えた。

『そんな怪訝な顔すんじゃねぇよォォ…
俺は貴様に呼ばれたまでだ、睨まれる筋合いはねぇなァァァ…』

やはり…嫌いだ。
この全てを見透かしたみたいな態度も、顔に似合わない途方も無い位の、頭脳の明晰さも。
けれど彼が任務に失敗した事がないというのも事実だ。
やはり…どこか間違っていると思ってしまう。
強者に恐ろしい程優しいこの腐敗した世界を。

『この前の件だが…
そう難しい事じゃなさそうだぜェェェ…??』

どういう事だと言う反論の答えの代わりに、眉をピクリと震わせる。動体視力がずば抜けている彼ならば、自分が何を言いたいか位は分かるだろう。
彼…フェンリール・グレイバックはニヤリと笑みを浮かべた。
血色に染まったその唇からはまだ、生暖かさを持つ生肉の臭いがこびり付いていた。



『居るんだ、あそこにはよォォォ…






俺と獣の血を分けた、親愛なる兄弟がなァァァ…!!!










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bkm





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