じわじわと、心の奥底からやってくるもの。
それは、自分が過去に犯した過ち。
いずれ、この時が来ると分かっていた。
けれどどうしても、直面する事は出来なかった。
何といわれるのだろう。
罵倒されるのか、非難されるのか。
どちらにしろ、それは心に決めている。
もう慣れてしまったようなものだった。
けれど今、一番怖いのは…
自分を拒絶されること。
『ルイは、リーマスを許すよ。』
ねぇ、ルイ。
今だけなんてずるいかもしれないけれど。
君のあの時の言葉を。
信じてみても、いいかな…???
「リーマス??どうしたの??」
夢、かと。
そう、思った。
「……え…??」
「ふふ…今日は何だか皆変ね。
リーマス、さっきからぼーっとしたままだったけど。」
薄く笑い、優しくフワリとした笑顔を浮かべる彼女。
その背中に後光が差していたとしても、リーマスはそれを認められると思った。
彼女の後ろを見ると、ジェームズがいた。
ジェームズもまた、ニッコリと笑っている。
ホラ、僕の言うとおりだろう??
そうとでも言いたげな笑顔で。
「…っ…!!!」
嗚呼もう、と思う。
どうやら自分はしてやられたようだった。
どうして目の前の人たちは。
こんなにも自分に甘いのだろう。
我儘な自分はそれに甘えて。
すぐに駄々をこねてしまうと言うのに。
けれどそれが彼女であり、彼であり。
彼等のような人間を構成する最も重要なものだ。
自分のような狡猾な人間にしてみたら。
きっとそれは、一生理解する事など出来ないけれど。
けれどだからこそ。
この欲に塗れた世界で、彼らは輝いている。
燦々と、世界に恵みを惜しみなく与える太陽の様に。
或いは、銀色の光で人々を導く月の様に。
純粋な人間と言うのは、だからこそ。
誰にも穢される事のない光を持っているのだ。
愛しくて、愛しくて。
自分が与えられた物は、途方もなく大き過ぎて。
返せと言われたって返しきれない位だ。
きっと自分は、彼らを裏切る事は未来永劫無いのだろう。
彼らを裏切るのなら、死んだっていい。
それだけ彼らが大切で、大切で。
愛しくて愛しくて、たまらないのだから。
『『たいせつなともだち』は、
『たいせつなともだち』を、
その命で、その運命で、その涙で、
心の底から、許してあげたから。
心の底から、大好きだから。』
あり、がとう。
ありがとう、ありがとう。
何度呟いても足りない位、ありがとう。
僕の『たいせつなともだち』さん。
君は、僕の世界を治しに来てくれたんだね。
ずるい僕は、馬鹿なオオカミは。
こうやって、呟く事しか出来ないけれど。
世界中のありがとうを君に贈れるのなら。
僕は命さえ投げ出しても構わないから。
だから、だから、せめて。
今贈れる最大限のありがとうを、君に。
「え、え、ちょ…リーマス!!?
な、何で泣いてるの…!!?」
ルイは明らかにあたふたしている。
けれど、零れて来る涙を止めることは出来ない。
心配になり駆け寄って来た彼女の肩を借り、その細い首筋と漆黒のうねりの中にゆっくりと顔を埋める。
緊張と驚愕で彼女の体は硬直した。
けれど、そんな事どうでも良かった。
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