リリーは硬直したまま動かず、ジェームズとピーターは自分を見てあんぐりと口を開けている。
リーマスとシリウスの何と間抜け面な事か。
一瞬吹き出しかけたが、何だか笑ってはいけない雰囲気な気がした。
「ど、どうしたの…ていうかココ何処??
わ、服まで違う…え??」
「……ルイ………??」
「うぇ???」
「……ルイ…なのか??」
「うん…??そうだよ???」
辛うじて言葉を思い出したシリウスの問いに、ルイは益々ワケが分からなくなる。
皆が変だ。頭でも打ったのだろうか??…
「……って、
痛ッ!!?あ、あああ頭!!!頭痛あああッ!!!?」
にうぉあああとルイは頭を抱えて悶えた。
何故かは分からないが、頭が猛烈に痛い。
後頭部辺りがヒリヒリしている、どうやら頭を打ったのは自分のようだった。
大騒ぎしている自分とは裏腹に、周りの5人は未だに自分を見つめたまま硬直している。
ルイは首を傾げ、隣に居たシリウスを見た。
「…??…シリウス??」
心地良い響きを持った、自分の名前。
あの親に付けられた名前でさえ、彼女は素敵な音色に変えてくれる。
それを実感した自分の胸に有るのは。
「…ッ」
歓喜だった。
「お
「ルイーーッ!!!!!!」ぐはッ!!!」
思わずルイを抱き締めようとしたシリウスを裏拳でぶっ飛ばし、リリーは一番乗りにルイを抱き締めた。続いてジェームズとピーターも。
三人の勢いで思わずルイがまた倒れてしまったと同時に、宙に飛ばされていたシリウスはべしゃっと音を立てて地面に落ちてきた。
「う、えぇ!!?ちょ、リリー!!?」
「…った…良かった…!!
ルイ…良かったぁ…ッ!!」
慌てるルイに然し、リリーは彼女をしっかりと抱き締めて放さない。
赤いうねりの中に垣間見えたその頬には、透明な涙がはらはらと流れていた。
リリーの涙に、ルイは益々困惑する。
何が何だか分からない…そんな気持ちを残して。
「…何、で…俺は駄目なんだよ…」
「あ、何だ…生きてたんだ。」
「死んでる前提ですかルーピンさん。」どうにか死の淵から舞い戻ってきたシリウスに、リーマスはびっくりしたような口振りで答えた。
シリウスは人間不信になりたいと切に願った。
「まぁ、君がこの中でも一番癖が強いからね。
そうでなくともリリーからの警戒度No.1なんだから、頑張りなよ。」
「…すげぇ人事だろ。すーげぇ人事だろ。」
「そうだけど何か??」「…ナンデモアリマセン…」
終いには地面に座り込んで拗ね始めたシリウスを見て、リーマスは微かに苦笑し、そして向こうにいる彼女を見やる。
未だに泣き止まないリリーに、明らかに慌てていた。
やがて助けを求めた彼女は、自分の視線に気付き、こちらを向いた。
生唾を我慢して、ごくりと飲み込んだ。
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