「…ッあ…!!!シリウスー!!!
こっち!!こっちだよおおお!!!」
ピーターの嬉しそうな声に、3人はバッと振り返った。リリーは既に涙目だった。
向こうからゆっくりとしたテンポでやって来るのは、寒くなったのかしっかりとマフラーを首に巻いて歩いて来るシリウスと、彼の後ろからチラチラ見える2本の足。
リーマスはたまらず彼に駆け寄った。
ジェームズとリリー、ピーターもそれに続いた。
「…ルイ…ッ良かった…!!
怪我とかしてなくて…ッ!!」
厳しい表情のまま顔をこわばらせていたリリーが、安堵のあまり泣きそうな声を出した。
リーマスもリリー同様、今にも泣き出しそうな顔を何とか引きつらせて我慢していた。
「どこにいたの??!」
「『叫びの屋敷』の前。
コイツの物好きにもほどがあるぜ…」
「あー…それは確かにねぇ…」
「…寝てるの…??」
リーマスはルイの顔から目を反らさずに聞いた。
シリウスは頷き、試しに彼女をユサユサと揺らしてみたが、ルイはピクリとも動かなかった。
「運んでる途中に寝ちまってよ。幾等揺らしても何しても起きないんだわコイツ。
こっちが寝たいくらいだってのによ…」
「あはは、お疲れさんだね。」
ジェームズは苦笑しながら言葉をかけた。
シリウスもそれにつられて笑った。
…と、背中にいる彼女がムズムズと動いた。
「あらら…起きちゃうね。」
「シリウス!!貴方がうるさくするから!!」
「俺かよ!!」「(僕はリリーだと思うんだけどな…)」
シリウスとリリーがギャーギャー言っている間にも、彼女は寝苦しいのかムニャムニャとぼやいた。
…あ、でもそんなに動いたら…
ごすっ「「ルイーー!!?」」
「(…やっぱり…)」
リーマスの思惑通り、彼女は後頭部から真っ逆様に倒れた。
地面の硬さは音で分かる通りだった。
シリウスとリリーが慌てて彼女に駆け寄る。
リーマスもそうしたかったが、ふと足を留めた。
何故だか、それから体が動かなかった。
「ルイ!!?だだだ大丈夫!!?」
「ちょ、オイ!!起きろよ!!!」
流石はシリウスとリリーだ。
二人は眠っている彼女をがっくんがっくん揺さぶっている。
「…??どうしたんだい、ムーニー。」
ジェームズは不思議に思ったのか、突っ立ったリーマスの顔をヒョイと覗き込む。
然し、彼の目線は目の前の三人を…
否、揺さぶられる彼女に釘付けだった。
虫の知らせか、風の便りか。
どちらにしろ、不思議な直感があった。
確信にも似たその事実に、愕然とする。
どうしてなのかは、自分にも分からない。
けれど、確かな真実だと体が叫んだ。
目の前に居る人は。
目の前に居る彼女は…
「…ルイ……????」
その瞬間、彼女の瞼がピクリと動いた。
何度か小さな瞬きを繰り返し、その重い瞼はゆっくりと開く。
その中から現れたのは、
もう、闇に染まった褐色ではない。
どこまでも、どこまでも澄んだ光を湛えた、
綺麗な…綺麗な、瞳だった。
キラキラと輝くその瞳に、リーマスは拳を握った。
ドクリドクリと、血が騒いだ。
それは、待ち望んだ光。
どこまでも、透き通った光。
自分を人間として支えてくれた彼女の。
自分を大好きだと言ってくれた彼女の。
愛しくて堪らない、光に満ちた褐色。
「……リリー???」
ルイは目をパチパチと瞬いた。
自分の見ている光景は、まるで下手なコメディ映画のワンシーンの様だと思った。
体をヒョイと支えて周りを見れば、シリウスもジェームズもピーターも、リーマスもいた。
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