happy days | ナノ


□happy days 29
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幼い頃から、不思議に思っている事がある。



「…セブルス、どうしたの??
具合悪いなら医務室に…」
「あ、いや、その…大、丈夫、です。」

何だか具合が悪そうにしていた後輩に、そぉ??と首を傾げて言ったのは、愛しい愛しい、自分の妹。
朝陽を浴びた彼女の緩やかにウェーブしたブロンドの髪は、キラキラと瞬いている。
吸い込まれそうに蒼い目には、髪と同じ色をした長い睫毛。
血管が薄く見える位白い肌は人形の様で、同じ位白い、けれど病的なまでに蒼白な自分の肌とは大違いだ。

体格だって正反対。
長身の自分に対し、今の彼女はまるで成長が止まってしまったかの様に、その年齢にしてはあまりに小柄だ。きっと3年生の中にいてもさして違和感は感じないだろう。
それとは対照的に、自分はまだまだ伸び続けている。道を通れば、男子が思わず振り返り、目を丸くするほどだ。
小さい頃は姉妹だとどう説明しても気付いてもらえなかったりもした。
まぁその時の相手の大概が子供で、少し制裁を加えてやれば済んでいたが。

そんな彼女に、いつから自分は全てを捧げる様になったのだろうか。
確かに可愛くて可愛くて仕方ないが、それとはまた別の理由があった気がする。

ピタリと足を留めると、たちまち人波が自分の両脇をすり抜けて行く。
幾人かの7年生がジロリとこっちを睨んで通り過ぎて行ったが、気にはならなかった。

目に浮かぶのは。
エメラルドの様に輝く木陰の下の眩しさ。
真っ白に色付いた黄土色の散歩道。
背に感じる、小さな存在の脈拍数。
自分の顎のラインを伝って行く汗の感触。
そして─────…






「────…ねぇさん??」

気付けば目の前に居た妹の声に、ベラはハッと我に返った。
蒼い目がさっきと同じ様に、こちらを心配そうに見つめていた。

「どうしたの??具合…悪いの??」

今にも泣き出しそうな彼女の声に、あわてて首を横に振った。心配させてしまったのか。
しかしナルシッサは、ベラの返事に安心したのか、その綺麗に整った顔にたちまち天使の様な微笑みを浮かべた。

「良かった…ねぇさんたらいきなり立ち止まっちゃうんだもの。
びっくりしちゃったわ。」

ああ、何て可愛いのだろう。
どうして自分はこうも彼女と似ていないのだろう。
可愛いものというのはとにかく何でも得をするというが、本当だとベラは思った。

この笑顔を…いつから守り始めただろう。

「行きましょ。早くしないと午前の授業に間に合わないわ。」

ナルシッサは小さな白い手で、ベラの骸骨の様に細い手を引っ張った。
ベラは黙ってナルシッサの意のままに歩いて行く。

この声を…いつから守り始めただろう。
この存在を…いつから守り始めただろう。



約束を、した。
あの暑い夏の日に、誰かと。






(…誰だったっけ??)







ベラはふとそう思った。
実に数年振りに浮かんだ、自分への疑問だった。







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bkm





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