happy days | ナノ


□happy days 29
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「…で??どうすんだよ。
昨日確認した通り、今のルイは俺達の事なんかこれっぽちも覚えてない。逆に怯えて逃げ回ってた。
こっちを知らない奴としか思ってない奴とどうやって仲良くなるんだ??」

ジェームズとリーマスは、仏頂面のシリウスから見えない様にテーブルの下まで屈み込むと、コソコソ話をし始めた。

『…シリウス、何か機嫌悪いね。』
『ルイから泣きながら逃げられたのが相当ショックだったみたいだね。
まぁ君やリリーは兎も角、あんな目付き悪い男が近付いて来たら確かに泣く以外h』
「聞こえてんだよてめぇ等ッッ!!」

シリウスがとうとうキレて怒鳴った。
今まさに口にポテトを頬張った瞬間の赤毛のグリフィンドールの1年生男子は、衝撃で喉に詰まったポテトと悪戦苦闘し始めた。

「まー逆ギレですわー怖いですわー」
「若い子はこれだからいけませんわー」
「(こんなに人を撲殺したいと思ったのは初めてだ。)」
「へぇそれって僕も入ってるの??」
「いや、ジェームズ限定。」
「正しい選択だけど軽い苛めだよ!!」
『あ、正しいんだ。』

「…何してるの貴方達…」

リリーは呆れて3人を見ていた。
しかしシリウスは構わずに続けた。

「大体ジェームズ!!!何でお前はそんなに嫌われなかったんだよ!!!
ていうか寧ろなつかれてたし!!!」
「確かに一番なついちゃいけない奴になついてたよね。」
「あの時はマダム・ポンフリーにルイの視力検査をお願いしようかと本気で思ったわ。」
「君達の中での僕って何なわけ??」
『変態眼鏡の他に??』
「…」
「(最早人間として扱われてない??)」

実はそれがビンゴだったという事を、ピーターは知らなかった。



昨日、リリー達はルイの元を訪ねた。
本当にルイの記憶から自分達の存在が抹消されているかどうかを調べる為だ。

しかし、調べる必要もなかった。
ルイはリリー達から遠ざかり、触れたり捕まえようとすると逃げた。
しまいには、後ろから羽交い締めにしようとしたシリウスに怯え、鼓膜を破らんとするかの如く大声で泣き始めてしまう始末(マダム・ポンフリーからはきッついお叱りを喰らった)。

「…ルイが僕になついたのは、まぁ僕のあふれんばかりのカリスマ性にも関係あると思うけど、一番はきっと刷り込み…インプリンティング効果に関係があると思うんだ。」
「前者は兎も角、後者は有り得るかもね。」
「(…酷い…)」
「刷り込みって…あれでしょ??
鳥のヒナとかが、卵から出て一番最初に見た物を親だと思い込むっていう…」
「その通り。」

驚いた様に言ったリリーに、ジェームズはパチンとウィンクした。リーマスとシリウスは真正直にキモイと思った。
ジェームズは自分の皿に盛ってある数個のプチトマトを、コロコロと転がし始める。

「ここが、リーマスとシリウスがいた所。
ここが僕がいた所ね。」

ジェームズはプチトマトを位置付けると、続けてパセリをフォークに差し、2個のプチトマトの隣に置いた。

「で、ここがルイがいたベッド。
これだと少し分かりにくいけど、ルイが目を覚ました時、リーマスとシリウスは屈んでた。

医務室のベッドって結構高度高いから、シリウスの頭でも半分位しか見えない。
それに、ルイは起き上がってた。
人間は、まずその時点での自分の高度の景色しか見ないから、二人の姿は見えない。

その点、僕はルイが起き上がっても充分に見える高さにあった。

周りには何もなかったし、ルイにインプリンティング効果が働く可能性は充分にあった…て考えてみたんだけど、どう??」

4人は納得した。
これならば、その刷り込みとやらの根拠も明確だ。

『(…ジェームズがこういう事にだけ頭を使う様になればもっと良いのになぁ…)』
「今滅茶苦茶失礼な事考えてない?」

皆は口を閉じた。
と、ジェームズは急に時計を見て叫んだ。

「あ!!もうこんな時間!!?
急がなきゃ!!!」
「何か用事でもあるのか??」
「うん、マダム・ポンフリーからルイのお迎えをお願いされてるからvV」
「へぇー気を付けて行ってってハァ!!!?

シリウスは思わず身を乗り出した。
ジェームズはどことなく自慢げに、わざと口笛を吹きながら鞄を整理し始めた。

「な、何でジェームズがルイを迎えに行くのよ!!!?」
「だから言っただろう??
今のルイは僕の事をいわば親だと思ってるんだって。
誰も知ってる奴が居ないのは精神的にも参っちゃうからってマクゴナガル先生からもOKもらったし。
ていうか何より何の代償も無しにルイのパパになれるんだよ??
最高じゃないか。
「「それが目当てかこの変態!!」」

そんな事するから皆からの風当たりがきついんだよ…とリーマスは思った。
しかしもう言われるのに馴れてしまったのか(それはそれで悲しいが)、ジェームズはマフラーをグルグルと首に巻き付けると、『じゃあ諸君、また後で会おう!!』と声を張り上げ、さながら竜を倒した勇者の様に麗々しく大広間から出て行った。
残された4人はただただ、呆然としたままその背中を見送っていた。







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