happy days | ナノ


□happy days 28
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「…ルイに、」

涙が一滴流れたが、すぐにそれを拭う。
泣いてはいけない。自分の弱さに甘んじて、彼を責めてしまうから。

「あの子が、」

あの時の、私の様に。

「どうしようもなくて、
泣いてしまった時に、」

『大丈夫だよ』と。
『ここにいるよ』と。

「何も言わずに、
慰めてくれる、」

そんな。

「そんな、人が」

居て、くれる。

「傍に、居て、くれる人が…居る、」

それが

とても

「それが、とても、」

とても

とても









「嬉し、かった…」









顔を俯かせ、リリーは呟く。
拭いても結局、壊れた水道のように溢れて来た涙は、そのまま石畳の上にポロポロと落ちていく。
リーマスはリリーの肩にそっと触れようとしたが、リリーはそれをやんわりと拒否した。
彼女をまた泣かせてしまったような気がして、ばつの悪そうな顔をしたリーマスに、リリーは涙を拭きながらも微笑む。



「…でもね。リーマス。
私、気付いたの。
私がリーマスやルイに要求してたこと…
あれは全部、私の我儘でしかなかったの。
誰が誰と一緒になれば『幸せ』になれるか、なんて、
私が考えてあげなくても、良かったの。
人の『幸せ』の感じ方なんて…
同じものなんて。一つもないのにね。」

人の『幸せ』には、色んな形があって。
それが組み合わさって初めて、
他人と同じ様な『幸せ』を感じられる。

でも中には、
形が凸凹なくせに、
無理に組み合わさって、
飛び出てしまった部分で、
傷ついている人も、いる。

だって、その形は、人間の目には見えないから。

その形に気付かずに、苦しんで、傷ついて。
自分の本来の形を、紙やすりで削ってしまった人だっている。

人間は皆、寂しがり屋なのだ。
中には例外が居たりもするが、結局は、怖いのだ。

そしてその形をボロボロにしてしまった事に気付くころには、人間は、その命の灯火を喪う。
他の人間に、『幸せ』の形の大切さを教える前に。



「皆、自分の物差しでしか、
『幸せ』を計れないのに。」



そして、自分も。
たった今、自分の愚かさに、気付かされた。
後悔も、謝罪も間に合わないくらいの、
気付いたときには遅すぎた、自分の愚かさを。



「…ごめんなさい。
ぶったりなんか、して…」



彼とて、それを見失い、迷っていたのに。
悲しみと悲しみを、比べる事なんか出来ないのに。

謝らなければいけなかったのは。
慰められなければいけなかったのは。

涙、を。
優しい雫を。
誰、よりも。
堪え続けて、いたのは。








「一番、辛かったのは、
貴方、だったのにね。」










驚いて目を見開いた彼に、リリーはゆっくりと微笑む。

「仲直り、したいの。」

まだ、大丈夫だろうか。
まだ、元の様にやり直せるだろうか。
そんな不安が頭の隅にちらついた。
しかし、自分の脳の大部分は。
喜んでいた。安堵していた。



目の前にいる彼女の視界に、
自分がやっと、映った気がした。



「…え、ちょ、
な、何泣いてるのよ!!!」
「…っ…っっ…」
「何も泣く事ないじゃない、もー!!!」

「…丸くなったねぇ、リリーも。」
「ていうかリーマスもだろ。」

リーマスが泣いているという事に、最早今自分がいる世界は現実なのかという疑問すら浮かんで来たシリウスは呆れて答えた。
しかしジェームズはどこか満足気に、向こうにいる二人を見つめている。

あの時自分が彼女に言った事。
あれは間違ってはいなかった。
少し不安になってはいたが、
今になると、そう確信出来る。

「…良かったね。」
「??何か言ったか??」
「んーん。独り言。
さて!!二人も仲直りした事だし、」

ジェームズはんーッと背伸びをする。
そして、医務室の方向を見た。
真っ直ぐ、間違えないように。






「お姫様を、迎えに行こうか!!」
















「居たなら居たって言いなさいよ!!」
「いやぁ、二人共二人の世界に入ってたからさー邪魔したら悪いし??
それにほらぁ、泣きじゃくる可愛いリリーも見れたし☆」
「ッああああ!!!黙んなさい!!!」

泣いている自分を見られたリリーは恥ずかしいのか、照れ隠しなのか、ジェームズを殴る。
しかしジェームズはどこか嬉しそうだ(変態)。
リーマスとシリウスはそれを後ろから見ていた。
ふと、リーマスはシリウスに問掛ける。

「…ねぇシリウス。」
「あ??」
「シリウスは、ルイが解離性障害になる事…知ってたんだよね??」
「あぁ…あ、でもちょっと違ぇか。」
「…え??」
「ルイの解離云々は、遺伝だから。」

リーマスは歩みを止めた。
鞄の重みが、より一層リアルに感じられた。

「俺は実際見た事ねぇけど、元々血筋の所為らしいぜ。
精神科の癒者に見せても、どうしてなのかも分からなくて…
でもただそういう体質なだけだし、大体魔法族には良くある事みたいだし…」

シリウスの言葉が霞んで行く。
視界がゆっくりと、揺らぎ始める。
急に世界が嘘臭く感じてくる。
鞄に詰め込んだ本が、
サラサラと音を立てて、砂になり、
どこかへ飛んで行きそうになる。



また、一つ。
網が、張られていた。
それは、破り抜けて良いものなのかと。
不安に、なった…






歯車は 落ちた。

きヰん と 高い 音を 立てて。






TO BE CONTINUE…



後書き…

やっとUP出来たァアアア!!!
ヤバイ最後超グタグダ…ノン!!!
起きぬけに最後のページ書いたから…(逃

あ、解離性云々についての解釈は管理人のオリジナルです。
色々掻き集めて書いたんで、ホントの事とは多分違います…すいませんアホで…

次からはABC…と分裂します。
見たいものだけ見れる様にしたいです。
ジェムVer.とかベラVer.とか書きたいなぁ…
あ、セブも書きたい!!!
現実噺と過去噺がごっちゃになる可能性大。
なので時々状況の整理をしてからまた読み始める事をお勧めします。
やっとルイ様喋りました。やっと!!!


続きます!!!






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bkm





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