「───!!!」
「……思い出した??」
忘れていた。
ホグワーツに戻って来て間もない日に、自分はルイをホグズミードに誘っていたのだ。
セブルスが相当間抜けな顔をしていたのか、ルイはクスクスとしのび笑いをしている。
あんなに心臓を高鳴らせてやっと誘えたのに、言い出した方の自分が忘れてしまうとは…
「す、すまない…忘れていた…」
「仕方ないわ、大分前の事だもの。
私もやっと今朝思い出したし。」
ルイは首をすくめてみせた。
セブルスは思い出してくれたルイに深く感謝した(しかし少しだけ、今の今まで忘れていたルイを恨めしく思った。自分など彼女が言ってくれたおかげで思い出したのだが)。
「(…然し……)」
せめて、忘れてほしくはなかった。
そう思うのは、ワガママなのだろうか??
「セブルス??」
不思議そうにセブルスを見上げて来たルイの、未だにボサボサだった髪を整えてやる。
「本当に…変な奴だな。」
そう呟くと、ルイは『どういう意味よ』とセブルスをムッとした顔で睨んだ。
セブルスは、また口元を緩ませた。
「…あ、そう言えば今日ね、夢を見たの。」
「…、夢??」
そのキーワードに、思わず眉を動かす。
しかし、ルイの目は何故か悲しげだ。
「…小さい女の子が、一人で泣いてる夢。
涙が止まらなくてね、とても辛そうで。
その内に…涙に呑みこまれちゃう、夢。」
痛くて。痛くて。
悲しくて。悲しくて。
だから………捨てた。
「…その子は言ったの。
『辛いのなら、忘れてしまえば良い』って。」
ルイは顔をうつ向かせる。
もうセブルスの目線では、
ルイの顔は見えない。
悲しげな響きを持っていた声はいつしか、
感情も持たないような、冷たい音になっていた。
セブルスの背に悪寒が走る。
ルイは顔を上げる。
冬の風が無情にも吹き荒んだ。
あんなにまで光に満ちていた褐色の双眸は、眼光鋭く、然し虚ろなものへと変わる。
「…辛いことなんて、
忘れてしまえば…良い、って。」
もう一度そう呟いたルイの顔には、
何処か不気味な薄ら笑いが張り付いている。
彼女は、今自分の目の前にいるこの少女は、本当にさっき駆け寄ってきた少女と同一人物なのかと、疑いさえ持ってしまう。
自分は今、誰と話している??
自分は今、彼女の『何』と話している…??
その時だ。
「ルイ!!」
聞き慣れたあの声がルイを呼んだ。
ルイはフッとロウソクを吹き消す様に張り付いた笑みを消すと、何事もなかったかの様に、後ろから走ってきたリーマスを振り返った。
「やっと見つけた…
みんなで探してたんだよ??」
何も知らない彼は、息を整えながら何かをルイに差し出す。
「はい、マフラー。
大広間に忘れてたよ。」
リーマスからマフラーを渡されてやっと、ルイは自分がマフラーをしていない事に気付いた。慌てて首にマフラーを巻き付け、モゴモゴとお礼を言う。
『別に良いよ』と笑って答えるリーマスとルイを見ると、何だか置いてけぼりを喰らった様な気分になり、自然とセブルスの眉間に皺が寄る。
そんなセブルスの心境を感じとったかどうかは分からないが、不意にリーマスがチラリとセブルスを見た。
セブルスはムッとした顔で睨み返す。
リーマスはにっこりした。
しかしその笑顔は、セブルスに今世紀最大の寒気をもたらした。
…完全に気迫負けしている。
「セブルス??どうかしたの??」
「…何だか具合が悪そうだね。
僕、スネイプを医務室まで送って行くよ。」
「……!!?」
「ルイは先にリリー達と合流してて。」
「でも…」
「大丈夫だよ、ねぇスネイプ??」
またあの絶対零度の微笑みをセブルスに向ける。
恐怖を感じたセブルスはブンブンと首を縦に振り回した。
ルイはしばらく躊躇っていたが、リーマスに任せようと思ったのか、セブルスに『お大事にね』とだけ言葉を残すと、パタパタと人通りの多い廊下の方へ走って行った。
TO BE COUTINUE…
後書き…
一週間分位悩み抜いて結局ブチキレかよ!!的。
てかリーマス黒くしたい志望。
何故だかリーマスはある意味ヴォル様より邪悪だ。
セブ、ルイ様に見捨てられました(笑)
続きます!!
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