誰にも関わりたくなかった。
誰にも関わられたくなかった。
孤独で良かったんだ。
なのに………
『あの……ここ、良いかな??』
文字の羅列から目を外す。
目に入ったのは、光に満ちた褐色の瞳。
ドアとコンパートメントの中間地点で、居心地が悪そうに立っていたのは、見るからに気の弱そうな、ロングヘアの女の子。声も弱々しくてか細い。
他のコンパートメントに行けば良いのにと思ったが、今自分がいるこの車両に入るのさえ躊躇いが見える彼女が、人の沢山いるコンパートメントに入れるとは到底思えなかった。
「…別に、構わないが。」
「あ、ありがとうッ…」
その女の子は余程苦労してここに辿り着いたのか、ホッとした顔で笑った。
静かに、静かに。
それはまるで、
地面に染み込む雨の様に。
静かに、静かに。
その笑顔は、
幼い心に染み込んでいった。
「…名前は??」
自分には珍しく、けれど出来るだけそっけなく問いかける。
何故か浮き立つ気持ちを悟られぬ様に。
彼女はそんなことも知らずに。
また、綿の様に柔らかい、日溜まりみたいな笑みを漏らした。
「ルイ・ホワティエ。」
それは、暗雲の中ふと差し込まれた光。
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