happy days | ナノ


□happy days 17
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リーマスは走っていた。
角を曲がり、階段を駆け降りる。
目指すは凍てつく様な水の流れる噴水のある中庭。



『…クィディッチの試合の後…中庭に来てくれない??』
『??』
『きっと皆寮に居るから、誰も居ないだろうし。』
『……何の用??』
『お願い、聞かないで。』
『……??』
『何も言わないで、来てくれればいい。



………きっと、これが最後だから。』







ザッと中庭を見た。
白い靄さえ見え始めた季節の月は、いつもより数倍美しく見えた。
そこに居たのは………



「……!!!!」



夜空色をした、漆黒の一角獣<ユニコーン>。



「…シエ…ナ…??」
『……今日でね、
もう、終わりなの。』

意識に直接響いてくるその声は、確かに彼女だ。
そっと近付き、その体に触れてみる。
人間だった名残は何処にもなかったが、
リーマスには…ちゃんと分かった。

『私の血は、家族で一番強かったから。
…一度姿を失えば、もう人間に戻る事が出来ないの。』

「…校長先生には…」

『もう言ってあるわ。
シエナ・レダムとしての生活を終える事も、
今日を最後に、ホグワーツを去ることも。』

「………」

『…楽しい、学校生活だったなあ。
ダンブルドア先生に頼み込んで、
3年間だけ、学生として居させてもらって。
…居なくなる事が分かっていたから、
正直、少し退屈もしていたのだけれど。
やっぱり最後はとても、楽しかった。』

「………」

『…だから言ったのよ??
もっと私に出来る事はないかって。
貴方を支えてあげたかったから。
…私がまだ人間でいる内に、
貴方といた時間を増やしたかったから。』

「………」

『…ねぇ、リーマス。



私、貴方にもっと笑ってほしい。



だって、貴方は、



あんな素晴らしい子を好きになれたんですもの。』

「………」

『………リーマス、どうしたの…???』

「…………」

『……ああ、そうなのね…』

「…………」

『……ありがとう。



こんな私の為に…



泣いて、くれて、いる、のね……』



段々と、シエナの声がか細くなっていく。






『………ねぇ、

リーマ、ス。

お願いが、あるの。

あの子を、ルイを、

嫌いに、ならないで。



ルイは、人に好かれる、

そうする事で、生きている。

人に、好かれていれば、

悲しみだって、乗り越えて、行ける。



でも、彼女は、

人から、嫌われる、事を。

誰よりも、ずっと、怖がる。

人から、嫌われて、しまったら、

彼女は…

きっと、壊れて、しまう。

だから…



どんな事が、あっても、

彼女を、好きで、居続けて。



お願、い。

リーマス。






あの儚い少女を、

壊さないで…』









「……シエナ……」



彼女の微笑みが、見えた気がした。















『最後に、貴方を好きになれて良かった。』















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