happy days | ナノ


□happy days 11
75/497





「…ねぇ、リーマス。」

ルイが見えなくなった。
それとほぼ同時に、リリーが話を切り出した。

「何??」

笑って答えるが、リリーの反応は鈍い。
やがて、覚悟を決めた様に呟いた。



「……ルイのこと…好き??」



彼女の前では、嘘はつかない。
否、つけるはずがない。
だから、正直に答えた。

「うん。好きだよ。」
「…手助けを…必要とする気はない??」
「うーん…出来るなら欲しいかも。」

リリーはパッと笑顔になった。
胸の前で手を叩き、可愛らしく叫ぶ。
それだけで、リリーの思惑が手に取る様に分かった。

「良かった!!この頃シリウスったらルイにつきっきりで気が気じゃなかったのよ!!」

「リリーはルイに彼氏が居て欲しいとは思ってないの??」

「まだ初恋もしてないのに、ルイの最初の相手がシリウスだなんて絶対にイヤ。」

ムッとした顔でリリーが答える。

「シリウスって結構しつこそうなんだもの。
別れたのにいつまで経ってもやり直そうとしてつきまとって来そう。」
「しまいにはストーカーになりそうだね。」
「流石リーマス!!ナイスな喩えね。」

…リリーの中のシリウスって何なんだろう。
だが怖いので、その問いは胸の中にそっと閉まった。

「…でも、シリウスもちゃんと考えてるよ。
ルイの嫌がる事はしないと思うし。」

とりあえずシリウスの肩を持ってみる。

「私は貴方が適任だと思うの。
落ち着いてるし、奥ゆかしいし、何よりルイの事を一番に考えてくれるわ。」

深いグリーンの瞳は、その言葉を全身で訴えている。
何も知らない、無知で、純粋で、
……途徹もなく、愚かな瞳だ。

他人の事を考えている、と彼女は思うのだろう。
けれど、その自分勝手な決断が、一体何人の人間を心なしか苦しませてきたのか、きっと無知な彼女は知らない。
それこそが相手の最上の幸せだと決めつけ、相手の考えを無視した、相手の事を第一に考えいるフリをしている。
愚かな愛し方。
そして…狂おしい程に、優しい愛し方。

それは、万人に慕われ信頼された彼女の、
そして、善人の皮を被った自分の、
唯一無二の、人の愛し方。

自分と彼女は似ているのだとリーマスは思う。
違うのは、彼女のは本質だという事だけ。
その違いだけで、僕と彼女の愚かさの違いも、そしてその気持ちの純粋さも違う。
彼女はそれこそが真実だと信じ、あくまでも決してその意思を曲げようとはしない。

けれど、自分は………



「…リーマス??」
「!!…あ……ごめん…」
「顔色が悪いわ。どうかしたの??」
「ちょっとボーッとしただけだよ。」

…ほら。
真っ直ぐな彼女にさえ、こんな偏見を持ってるじゃないか。
心の中でリーマスは自嘲の笑みを漏らした。



「ピーターピーター………ッと。」

ルイは止まった。
ピーターの後ろ姿が目に映ったからだ。

「ピー……たぁ??」

そしてルイは一人首を傾げた。
…ピーターが椅子に座って、隣の席の知らない女の子と楽しそうに、そして一生懸命話していたからだ。

ルイはピーターがリリーと自分以外の女子生徒に話しかけているのを見たことがなかった。
輝かしい経歴(刑歴とも言える)を持つ彼の友人の所為で、ピーターはいつも目立ってはいなかった。
運の悪さではグリフィンドール…いやホグワーツ一とは言われてはいるが、まずピーター自体が極度の引っ込み自案な所為なのも原因である。
……ルイも人の事は言えないが。

それなのに、今のピーターは生き生きとしている。きっとジェームズ達でさえ、ピーターのこんな表情は見たことがないだろう。

お相手は、右目に泣き黶のある、ダークブラウンの髪の女の子。レイブンクローだ。
ルイはピーターの顔をみた。
相手の彼女が笑うと、ピーターの血色の良い頬がますますピンク色になった。

ルイは一人微笑んだ。
彼女にしてみれば、その顔はニンマリと意地悪く笑ったつもりのものだった。

「…何を一人笑っているんだ??」
「きゃ!!?」

ルイは後ろを振り返る。
セブルスだった。
ルイは胸を押さえ、フゥ、と胸を撫でおろした。

「何だ、セブルスだったの…びっくりさせないでよ…」
「ルイがボーッとしてたのが悪い。」
セブルスはプイ、とそっぽを向いた。
ルイはセブルスのローブの裾をクイクイ引っ張り、先程まで自分が見ていた光景をセブルスにも見せた。
ピーターの顔を見た瞬間、セブルスの眉間の皺は2本増えたが、隣にいる彼女の事に気付くと、ようやく合点が行ったのだろう。

「……なるほど…ペティグリューがこの頃良く図書室に来るのはこの所為か…」
「セブルス、相手の女の子が誰か、わかる??」

セブルスはしばらく考え込み、やがて呟いた。

「…名前はシエナ・レダム。
スリザリン生の中でも人気がある生徒だ。
あだ名が確か…『レイブンクローのお姫様』。」
「確かに、あんなに可愛いんならお姫様って呼ばれても不思議じゃないわよね。」

ルイは心底感心しながら言う。
セブルスが『…ルイもお姫様だぞ』と呟いたが、二人の姿に釘付けのルイには届かなかった。






[次へ#]
[*前へ]



[戻る]
[TOPへ]
bkm





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -