「……はううッ!!?」
ルイは奇声をあげて飛び退いた。
一気に急上昇する体の温度。
舐められるとは思わなかったのだ。
「シ、シッ、シリウスッ!!?
い、いきなり何するの!!?」
「へ???」
シリウスは目をパチクリさせた。
無意識の内の行動だった様だ。
しばらく放心。
しばらく回想。
そして………
「──わ、悪ぃ……」
「う、ううん……」
両方ともかぁ…と赤くなる。
ドクドクと脈が聞こえる程、耳は真っ赤だ。
まだキスならそこそこ我慢出来た。
けれど、まさか舐められるとは…
ルイは熱い頬を両手で包み込んだ。
必死で、これは彼の優しさ故の行動なのだと解釈しようとした。
胸の甘い疼きは……消えないのだが。
「……、あの、さ。」
「へ!!な、何ッ!??」
…ぎこちなさ過ぎる。気まずすぎる。
シリウスはしばらくの間、『あー』とか『うー』とか唸っていたが、やがて覚悟を決めて話を切り出した。
「…リ、リリーに……ジェームズ達に、謝りに行くぞ。」
「…え…で、でも…」
「そこ、お前のの悪い癖だぜ。
そんなにリリーが信じられねぇのか??」
そんなワケない。
けれど、本当にもし嫌われてしまったら…
「…や、やっぱり…行かないと…駄目??」
「駄・目・だ。」
「……はい…」
「大丈夫だっての。俺がついてきてやるんだからよ。」
シリウスは笑ってみせた。
ルイはその笑顔にドキリとしたが、その疼きが何なのか分からないまま、そのまま笑顔を返した。
「あ、ルイ!!シリウス!!」
「(出来るだけコッソリ入って来たかったのに…)」
「(…ピーター、後でシメる。)」
ピーターの大声で、談話室中の視線がルイに集まった。
その中には当然……リリーもいた。
ルイは立ち止まってしまった。
きっと、何もかも全て知られている。
ルイがリリーに話しかけようとした途端、リリーはガタリと席を立ち、寮へ戻ろうとした。
「ッ待ってリリー!!」
ルイはとっさに、叫んだ。リリーがゆっくりと振り返る。
ルイは喉がカラカラになるのを感じた。
だが、そんな乾いた喉から必死に声を絞りだし、何度か深呼吸をしてみせた後、
「……ごめん、なさい……」
と、謝った。
シン…と静まる談話室。
リリーがルイに近寄る足音だけが響く。
下を向いていたルイの顔をグイと上げさせ、自分の顔と対峙させる。
「私が、何で怒ってるのか分かる??」
「…ゎ…私がずっと…嘘を
「違うわ。」それははっきりとした否定の言葉。
改めて見たリリーの目から、ポロリと涙が零れる。
「私が怒ってるのは…嘘をつかれたからじゃない。
貴方が一人で抱え込んで、私を巻き込ませない様にしたからよ。」 「…リリー??」
そっと涙を拭ってやった。
リリーはその手を掴み、そしてルイを抱き締めた。久しぶりに見た綺麗な赤毛は…震えている。
久しぶりに見たのにはワケがあるから。
彼女を巻き込みたくはなかったから。
「…一人で…悩まないでよ……。
私は…貴方の手助けにもなれないの…??」
ルイは笑った。
リリーに見えない様に。
そして『ごめんね』と呟いた。
リリーだけに聞こえる様に。
何だか、とても安らかな気持ちになった。
リリーの体温はすっかり冷えていたルイの体を無条件で暖めてくれた。
TO BE COUNTINUE…
→ちょっとその後&後書き
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