僕は、いつも同じ夢を見る。
僕の前からみんなが…消えていく夢を…
仲間も‥愛する君までも…

僕を…

見捨てていく夢を…


『MAKUBEX‥MAKUBEX…大丈夫?』

ボーっと何かを考え込んでいるような顔でパソコンの画面を見つめていたMAKUBEX。
いつもと様子が違うことに気づいたDOLLは、心配そうにMAKUBEXの顔を覗き込むように見つめていた。
それにやっと気がつくとニコッと微笑み「大丈夫」と言わんばかりの笑顔でDOLLの心配を拭おうとした。

『ん〜…少し休んだ方がいいよ。』

M:大丈夫だよ。少し考え事をしていただけだから‥

『そんなに考え込むようことなら私にも話してくれない?一人で考え込んでいるより他の人に話を聞いてもらうと気が楽になるんだって、友達が言っていたんだ♪』

M:そんな大した事じゃないよ。

「やっぱり‥私だと役不足なのかな…。」

DOLLでは、MAKUBEXの考え込んでいることの相談解決出来ないと思ったのかしょんぼりと落ち込んでしまった。
それを見ていると悪いことをしてしまったと頭を掻きながら小さなため息を吐き出し、「じゃ、少し話を聞いてもらおうかな。」と、DOLLに話しかける。
その言葉を聞いて、先までしょんぼりしていたのが嘘のように明るい笑顔を見せ大きく頷いた。


M:最近、同じ夢を見るんだ。僕の前から銀次さんや花月くん、士度くん‥僕の周りにいた仲間達がみんないなくなる夢を…。僕は、一人無限城に残され‥どんなに大きな声で呼んでも、誰も僕のところに来てくれないし、何もない真っ暗な世界で一人ぼっちになる夢を毎日見るんだ。

『…………』

M:前にそんな経験をしている所為なのかな。また、そんなことがいつか起こるんじゃないかって‥勝手に思い込んでいるのかもしれない。ましてや、いつか君も僕の前から消えてしまうんじゃないかって‥そんなことも考えるようになったら、DOLLが消えていく夢まで見るようになっちゃったんだ。変な夢だよね。

苦笑しながら話を終わるとMAKUBEXの袖をDOLLは、ぎゅっと握り締めながら下を向いていた。

『MAKUBEX…私、どこにもいかないよ。…私は、MAKUBEXのぉ〜…お嫁さんになるって‥言ったよね?ヒック…』

M:DOLL‥

『…MAKUBEX、私のこと嫌い。』

M:嫌いになるわけ無いよ。僕は、ただ夢の話をー‥

『夢は、夢だよ。私は、絶対MAKUBEXのところから離れない!!だって、MAKUBEXのことが大好きなんだもん!!!』

袖で涙を拭うとMAKUBEXの首に抱きつき優しく唇にキスをした。
触れるだけのキスをしばらくしているとMAKUBEXもDOLLの腰に腕を回し、キスを続けた。
触れるだけのキスがいつの間にか激しくお互いを求め合いかのように唇をついばみ、息が続かなくなったのか少し顔を離し、お互い呼吸を整えるとMAKUBEXがDOLLの頭をそっと自分の胸に寄せる。

M:‥DOLLが居なくなるなんて考えてごめんよ。

『大丈夫だよ。MAKUBEXが寂しそうにしていたら、いつだって私が抱きしめてあげるね。いつだって‥こうして、抱きしめ合おうね。』
























M:いつだって、僕のことを抱きしめて居てくれるって言ったのに…

パソコンの画面をボーっと眺めながら独り言を呟き、息を吸いながらゆっくりと床に寝転び吸った息を吐き出した。
薄暗い部屋にパソコンの青白い光だけが部屋の明かりを灯していた。

M:DOLL…なんで‥僕の前から消えてしまったの。僕を一人にさせないって言ったのに‥どうして。なんで‥なんで君は、死んでしまったの…。僕がもっとしっかり君を見ていれば、あんなことにはならなかった。‥僕が、ちゃんとっ〜…

3ヶ月前、無限城の中を一人で散歩して来るとDOLLはそう言って散歩に出かけていった。帰りが遅いことを心配したMAKUBEXが部下を使って、DOLLを探すように指示し数時間後、帰らぬ人となっていたDOLLをMAKUBEXが見つけた。
誰にも見つかりそうのない路地裏で一人痛みと戦いながら必死にどこかに向かおうと体を引きずる姿がその場に残されていた。
震える足にムチを打ちながら大量の血を流し冷たくなっているDOLLの体を持ち上げ、溜めていた涙が次々と洪水のようにMAKUBEXの目から溢れ落ちていった。
その後、犯人が捕まえると「MAKUBEXへの恨み」と、犯人はクスクス笑いながらそう言いっていた。
自分の所為でなんの罪も無いDOLLに手を掛けられたと知るとその犯人をこの世から葬りさった。

M:DOLL‥もう一度君に会いたい。君の笑顔がみたい…DOLL

涙が込上がってきたのか腕で目を隠し、何度もDOLLの名前を小さく呼び続けていた。
するとー…

《MAKUBEX‥泣かないで。》

M:DOLL!!

一瞬、DOLLの優しげな声が微かに聞こえると上半身を起こし、周りを見渡すと誰もいなかった。
目を下に向けるとDOLLの優しげな笑顔が蘇り、その顔を思い出す度胸の奥が苦しくなり、胸を抑えながら涙を堪え泣いていた。
すると、誰かが自分の首に腕を回し抱きしめられるような感覚を背中で感じると耳元で聞き覚えのある声が聞こえてきた。

《泣かないでMAKUBEX、私は‥いつだって、MAKUBEXのこと抱きしめているよ。だから、泣かないで…笑っていて。》

M:DOLL‥君なの?

《そうだよ。》

M:DOLL…

《何、MAKUBEX?》

M:君は、いつも僕の傍にずっと居てくれるの?

《当たり前だよ。MAKUBEXのことが大好きだから‥ずっと傍に居るよ。何があったとしても…》

M:約束だったもんね。

《約束だもん♪忘れないで‥私は、ずっと貴方の傍に…いるからー……》

微かに遠のいていく声に気づき、後ろを振り返ると誰もいなかった。
幻を聞いたのかと落ち込むとほんの僅かな温もりを首元と背中に感じ、目を大きく開かせた。
あれは、幻ではなかった。
すると、涙が込上がってきたのか、自分の肩を強く抱きしめながら泣き出した。

M:DOLL‥君は、僕の傍でずっと居たんだね。‥気づいて上げられなくて、ごめんよ…

姿も形もないDOLLが《大丈夫だよ♪》と微笑みを浮かべながらMAKUBEXをぎゅっと抱きしめているなんて……


END

2014.2.21
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