振られ待ち
夏の蒸し暑い夜、外からは先程から降り始めた雨音がテレビの音をかき消していた
俺は何をするでも無くクッションを抱きながらぼーっとテレビを眺めている、画面越しに聞こえる陽気な笑い声は俺の耳を揺らしては抜けてった
ふとした拍子に出たため息は思いの外重く、気を紛らわすように立ち上がると冷蔵庫を目指した
取り出して来たそれを勢い良く乾いていた喉へ一気に流し込むとジワジワと喉が熱くなって行くのが分かった、気にせずゴクッゴクッと飲み干すと見計らったようにインターホンが鳴る
こんな時間にと思いながらも玄関に向かう
ドアに手をかけたとこで雨音が一層強くなった
何か不気味だ、雨の日のしかもこんな夜中にだ。先日見た本怖が脳裏に浮かぶとすっと寒気が走った。まさかなと思いながらも恐る恐る覗いてみると
ずぶ濡れの長い髪の女がうつ向いて立っていた。思わず『ギャァァァ、』と俺は不甲斐ない声を出して尻餅をついた
すると俺の声が聞こえたのかその幽霊は苛立ちを隠しもせず「俊太居るんでしょ?早くして」と言って来た
その声は強い口調とは裏腹に少し震えていた