◆ついつい…
2015/05/23 01:25

風がヒョウと歌い、それに合わせてチラホラ雪が踊っている夕暮れ時。
もはや氷と化している道をシワスは歩いていた。
今日も疲れた、や、明日はどんなふうに教えたら良いのか、など頭の中は目まぐるしい。
だが、不意に視界に入った人物にシワスはその思考を止めた。
――白い世界から浮き出たような綺麗な金髪。
空へと向けられている青年だった面影を少し残した顔。
コートを着ていても分かる線の細い身体。
自分も高身長の部類だが、それよりもスラリと高い背。
――セキラだった。
だが、佇んでいる彼の姿はどこか儚かった。
周りから女性のキャーキャーした声が聞こえるが、セキラは全くそれには反応せず、ただただ、雪の舞う空を見上げている。
……いずれにせよ、懐かしい顔だ。
久々に話したい。
シワスはセキラに声を掛けた。
「セキラか?」
ピクリ、と肩を揺らしてゆっくりと振り返ったセキラにシワスは息を呑んだ。
……お前、また一段とイケメンになったな。
「シワス先輩……」
お久しぶりです、と言った声は随分と掠れていた。
いつもと異なったセキラの様子にシワスは首を傾げつつ、どうしてここ(ドゥディーカ)にいるのか、を訊いてみる。
「ホノケくんに会いに来たのか?」
少なくとも自分に会いに来たのではないと分かっている。
……ちと、寂しいが。
返答までに数秒間があった。
そしてその返答は、彼らしくなく濁っていた。
「……悩んでいます」
「?」
シワスはますます疑問符を飛ばした。
「……」
「……」
二人の間で無言が流れる。
シワスは顎に手を当てて考えた。
……会うことを悩むほどの何かをした、ということか?
らしくない。
目を伏せ、眉を八の字にしているその表情も。
らしくない。
――シワスは良いことを思い付いた。

(続く)






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