LOOP 020



 僕の意識がはっきりすると、そこはD.Q.O.のロビーだった。
 何度経験しても突然この宇宙船のどこかに飛ばされるのは慣れない。
 僕の隣にはセツがいて、セツも心なしか疲れているように見えた。
 
 ロビーには僕らの他に沙明とナマエ。
 ソファに座ったナマエを見つけて、沙明がぴったり横に座ったところだ。

「ナマエ!?」

「わ、びっくりした。どうしたの?」

 僕が驚いて声をかけると、ナマエはそれ以上に僕の大声に驚いたようだった。僕の隣のセツも驚いていた。申し訳ない。

「何だよオイ、ナマエかまちょってかァ?ンー?」

 沙明はナマエの肩に腕をまわすと僕を睨みつけてきた。ついでにまわした方の手でナマエの横髪を触っている。
 ナマエは顔色を変えずに沙明の腕を外して、僕の答えを待っている。

「い、いや。なんでもないよ。元気そうで何より。」

 意味不明だと思われているんだろうとナマエと沙明の視線はシャットアウトして心配そうにしてくれているセツと向き合った。

「ナマエがどうかしたの?」

「いや……ナマエと会うのが、最初のループぶりで驚いちゃって。」

「なるほど、そうだったのか。私もナマエの情報はなかなか集まっていないよ。」

 ループにまつわることなので、セツと僕はコソコソと話す。
 なぜなのか聞くと、セツは腕を組んでうーんと唸った。

「ナマエは自己犠牲的というか――『生』にあまり執着がないようでね、そういった性格のせいもあるのか……グノーシアに狙われやすいみたいなんだ。」

 たしかに僕が経験した一番最初のグノーシア犠牲者はナマエだったと思い返した。

「ナマエの情報を集めるのはなかなか手強い。お互い頑張ろう。」

 僕はコクリと頷くとセツとともにメインコンソールへと向かった。





 今回のループは16人全員参加のようだ。役職も多く、騙りも出るカオスな回だ。
 僕は守護天使なので、誰を護るべきか静観するつもりだ。
 
「間違っていたら、ごめんなさい。だけど……私にはジョナスが怪しく見える。」

 ジナの疑いの言葉を皮切りに、多くの人が賛同し、ジョナスがコールドスリープされることとなった。





 ジョナスのコールドスリープを見届けた後、各々は散らばり空間転移前までの時間を好きな場所で過ごすようだ。
 僕は食堂でレムナンに声をかけておこうと思い向かう途中、地下への階段を沙明とナマエが降りていくのが見えた。
 その後ろ姿を目で追いながら、次はナマエと話したいから、グノーシアよ消されないでくれと願った。





 何度かの話し合いと空間転移後、残っているメンバーの大半が食堂に集まっているので覗いてみることにした。
 食堂の入口付近のテーブルには、しげみち、ステラ、コメット、シピの4人が座っている。奥のテーブルではまたも沙明とナマエが2人で並んで座っている。4人はどうやら、沙明とナマエを観察しているようだ。
 
「絶対アヤシイってあの2人!」

「たしかに、しげみちの言うことにも一理あるんだよなァ。」

 しげみちは熱弁し、コメットはニヤニヤしながら話している。
 僕の気配に気づいたシピは、こっちに来いと言わんばかり視線を僕に寄越した。

「お前はどう思う?」

「どうって?」

「沙明様とナマエ様、おふたりのご関係について話し合っていたのです。」

 ステラの瞳が心なしかキラキラと輝いているように見える。どうやら色恋の話が好きらしい。
 
 ふむ、と考えてみる。ナマエと会うのはまだ2回目だしどういう人物かわかっていないが――たしかに沙明がずっと同じ女性を口説くのははじめて見る。遠目から見ても、明らかに距離をつめているのは沙明の方だ。ただ、問題はナマエが強く突っぱねてないこと。好感度や仲のいい人はループによって変わるらしいが、ここまで恋人のようにべったりとしてるのは珍しい。

「さっきもふたりで格納庫にいたしよー、ひょっとして2人がグノーシアなのか?」

 しげみちはどうしても2人が恋仲なことが許せないのか、「格納庫だぜ、格納庫!」と意味不明な文句を言っている。
 ただし、僕は守護天使でナマエの守護に成功していたため、ナマエがAC主義者でない限りその線は薄そうだ。

「このグノーシア騒動が終わったらよー、俺の故郷来ねエ?わりとマジで。」

 沙明がナマエを故郷に誘っている……。こちらの僕を含めた5人は絶句している。ステラは嬉しそうだ。
 ナマエは大きな目をさらに大きく開いて驚きを表現した後、すっと我に返ったように目を伏せた。

「考えとく……生きていたら、ね。」

 ナマエは淡々と述べると席を立って食堂を出て行った。出ていく時に僕たちの方をチラリと見たが、何も言わず共同寝室へと行ったようだ。

「フラれてたな。」

 しげみちが軽く言うと、まあ、とステラが穏やかに食って掛かった。

「ナマエ様は断ってはいませんでしたし、まだ可能性はありますわ。」

「それにしてもナマエは……人生諦めてるカンジだよな。」

 コメットが俯きがちに言うと、他のみんなもそう思っていたのか無言になった。

「ヒュウッ!皆サンオソロイで。俺、この船降りたらナマエとイくとこまでイッちまう約束しちまったわ。」

 ご機嫌の沙明を前に僕は沙明のポジティブさにあ然としてしまった。

 残念ながら翌日ナマエはグノーシアであるコメットとシピに消された上、僕たち船員は翻弄され順調に船員は消されていった。
 最終的にグノーシアに船を乗っ取られて最悪なループとなったのだが、ひとまずナマエの特記事項が開いたので仕方がないと思い、次のループを待った。

 特記事項@ 積極性には欠けるアンニュイな雰囲気だが優しく穏やかな性格。







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