前世:解読



 夜がとっぷり更けたころ、シカマルとナマエが任務報告のため火影室へ赴くと、報告をそっちのけにしてフサカク様の背中へ掘られた暗号解読任務を託された。
 気は乗らないが暗号解読班の人を叩き起こして開けてもらい、共通鍵暗号だと教わる。

「解読できるんスか?」

「えーぶっちゃけ、鍵を知らないと無理です!」

「誰に伝えたかったのか考えて、その方にあたってみれば何か手がかりがあるかもしれませんね。」

「うーん……だとすると……、」

 シカマルは考える。

「ナルトか綱手様かなぁ。」

 ナマエは自来也の交友関係はあまり知らないが、ペインについて情報を残すとしたらこの2人かと当たりをつけた。

「それかカカシ先生かもしれねえな。……じゃあ、ありがとうございました。また何かありましたら伺いますんで。」

 去り際シカマルがそう言うと、ぽわっと頬が緩んだシホのまわりに花が飛ぶのがナマエには見えた。

「……。」

 シカマルの顔を見上げて、分厚いメガネで分かりにくいはずのシホの表情をまた観察する。じっくり見ずとも、シホの思いはなんとなくわかった。

「帰って寝てるから家に来てね!家に!」

 暗号解読班の班長が、閉まる扉に駆け込むように声を掛けてきたところで、パタンと扉が閉まった。

「じゃあ俺はナルトんち行くからよ、ナマエは……、ってなんだよ。」

 シカマルがナマエの顔を見ると、ナマエは不機嫌な顔でこちらを見上げていて驚いた。

「別に。わたしは綱手様のところへ行ってくるよ、色男。」

「色……、はあ?ちょっと待て。どういう意味だ。」

「ばいばーい色男。」





 妙木山へ行くナルトを見送ると、シカマルとナマエは暗号部へと戻った。シホと合流して3人で暗号の解読に臨む。

「この暗号の『ホンモノハイナイ』っつーのは幻術のことなのか?」

「んー……。フサカク様の話によると、自来也様は6人のペインに直接武器でとどめを刺さされたみたいだから、幻術の線は薄そうだけど。生き返ってるっていうから……傀儡とか?そういうのなのかなあ。」

 いつもより語尾が長くのんびりと話すナマエ。まぶたが落ちてくるのを懸命に抗う。眠気に抗っているのをバレぬよう目を隠すためだが、考え込むように額へ手をやった。
 任務が終わり綱手へ報告に行った際、たまたまシカマルと共に捕まってこの暗号解読任務に就いたが、任務が夜通しでハードだったこともあり限界が近かった。

「傀儡にしちゃ精度が高すぎるけど、暁相手に常識は通用しねーからな。実際不死身のヤツもいたわけだし。」

「他の情報が出て来るまで、さまざまなパターンをできるだけ推測しておきましょう。」

 シカマルとシホは言いながら、暗号の写真を見つめた。

「そうだな……って、ナマエ。」

「……。」

 ナマエの上体がゆらりと傾いたのは、写真を覗き込むためだと思ったのに、そのままシカマルの肩にぽすんと頭が乗っかった。

「寝てやがる……。」

 シカマルも眠気が襲っていたので、リアクションが薄かった。それにナマエは普段から距離が近いのでこのくらいでドギマギすることも『ほぼ』ない。少し心臓が早くなったが。

「暗号部に仮眠室がありますよ。ナマエさんのこと、わたしが案内しましょうか。」

「いやまあとりあえず起きるまで寝かせとけ。こいつたぶん2徹してるから限界が来たんだろ。」

「あー……でも……、」

 シホがもじもじと何か言いたげにシカマルに寄りかかるナマエを見る。シカマルに好意を持つシホとしては、ナマエがシカマルの肩を借りているのがかなり気になる。
 静かに目を閉じていたナマエがん、と声を出してシカマルの肩口ですうと匂いを嗅ぐように息を吸い込んだ。

「す、――……ん?」

 シカマルも嗅がれたようか気がして、寄りかかるナマエを見たので、目をパチリと開けたナマエと目が合った。

「ちっか、!何!?」

「何じゃねえよ。寄りかかってきたのはお前だろ。」

 ナマエは椅子ごと後ろに吹き飛ばされたかのようにシカマルと距離を取った。寄りかかっていたナマエがいなくなりシカマルはようやく自由に動けるようになったので首をコキコキと動かした。

「ごめん……完全に寝てた。」

 ナマエが少し赤い顔を手で隠しながら申し訳なさそうに言うので、シカマルは「知ってる」と答えた。ナマエはシホにも、赤い顔を瞬時に青くしてごめんなさいと深めに謝っていた。寝ていたことより、目の前でシカマルの肩を借りたことに重きを置いて謝罪している。

「シホさん、ここって仮眠室あるかな?15分だけ寝てきていい?」

「ありますあります!案内しますよ!」

 シホが立ち上がると、ナマエと並んで歩き出す。

「すみませんね……。シホさんは眠くない?」

「わたしは大丈夫です!」

 2人の会話を聞きながら、シカマルはまた暗号の写真へ目を落とした。2人の姿が廊下へ消えると自らの肩口に鼻を寄せた。嗅がれたよな……?とあまり回らない頭で考えながら。






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