前世:試験



 ナマエはガイ班の1人だった。
 シカマルとナマエが初めて会ったのは中忍試験の時だ。

「砂隠れテマリ、木ノ葉隠れナマエの試合を開始します。」

「ナマエー!気合です!」

「ナマエ頑張れー!」

「はじめ!」

 班員のリー、テンテンが声援を送る中、中忍試験3次試験の予選第5試合が始まった。

 結論から言うと、ナマエはテマリにボロ負けした。

 ナマエはガイの弟子ということもありガチガチの近距離タイプ。テマリは真逆の遠距離タイプだった。両者はそれをわかっていたからか、ナマエは合図の直後から間合いを詰め、テマリはそれを躱して距離を取ることに専念した。
 当初はナマエが優勢に見えた試合だったが、やはり一度距離を取られてしまえばなす術ない。一方的にテマリから風遁がお見舞いされ、ナマエは近づくことさえできなくなり、傷だらけで壁へ叩きつけられて決着はついた。
 1つ前のサクラといのの試合とは違ったレベルの高い女の闘いに、決着がついた後も現場は騒然としていた。シカマルはその直後に音隠れのキンと試合だった。

 シカマルに大きな怪我はないものの、千本で小さな傷がいくつかできていたので医務室へ手当に向かった。ナルトとキバの試合が始まる前にさっさと終わらせてしまおうと、熱気に包まれた会場とは真逆のシンとした廊下を歩く。

「誰もいねえのか。」

 簡易的な医務室には医療忍者の姿はなく、人の気配は多少感じるもののシンと静まり返っていた。目に入るところには傷薬もなく、早く会場に戻りたいシカマルは一番近くの仕切りのカーテンを何も考えずに勢いよく開けた。

「!」

「うわ、」

 脚の長い医務室のベッドの上には、先ほど大敗を喫したナマエが座っていた。
 シカマルから見て後ろ向きではあったが、音がしたからか顔だけ振り返って驚きで目を見開いていた。涙目どころかナマエの瞳には涙がぼろぼろと流れ落ちていた上、手当のために片腕を服から抜いていて下着の紐と背中の半分がむき出しになっていた。
 泣いていることより素肌が出ていることに焦り思い切りカーテンを閉めて、どうにか今の一連の流れがなかったことにならないかと祈った。

 布擦れの音がして少しの間があった後、ナマエはカーテンを開けた。同じ場所でバツが悪そうにするシカマルを睨みつける。服はきちんと着直されているし、目元は赤いままだったがもう涙は止まっていた。

「こんなに怪我人が出てるんだから誰もいなわけないでしょ。」

「……悪い。」

 ナマエの言うことは正論すぎて、シカマルは素直に謝った。

「ここは本格的な医療器具がないから、今は重症の人を連れて病院へ出払ってるけどね。薬と包帯はここ。」

 ナマエはシカマルに薬と包帯を渡し、シカマルはそれを素直に受け取った。

「悪いけど、自分の手当が終わったら包帯巻くの手伝ってくれる?リーたちの試合を早く観に行きたいの。」

「え、俺?」

「あんた以外に誰もいないから言ってるの。」

 ピシャッとカーテンを閉めたナマエと、そこから締め出されたシカマル。先ほどの罪悪感もあって「俺も早く戻りたいんだけど」とは言えず、隣の空っぽのベッドへ腰掛けるとささっと切り傷を手当していった。

「右腕がうまくできないからやって。」

 カーテンの内側へ招かれたシカマルは、ほぼ初対面のナマエが遠慮なく投げ出してきた片腕を見て、仕方ないとその腕を取った。利き腕で顔などを庇っていたからか、風遁でできた切り傷が多かった。

「……さっき見たことは誰にも言わないで。」

 シカマルが包帯を巻いていると、ナマエが恥ずかしそうに顔を背けながら言うので、シカマルは「さっき」と言葉を復唱した。そして傷のない真っ白な背中と、肩紐どころかホックまで見えていたピンク色の下着を思い出した。

「え、いや……、」

「ネジには泣き虫だっていつも馬鹿にされてるの。ガイ先生とももう泣かないって約束したし。」

「……ああ。」

 他のインパクトのせいで泣いていたことに関してすっかり頭から抜け落ちていたので、シカマルは余計なことを言わなくて良かったと思った。それに、試合を見ていて悔しく思う気持ちも理解できたので、気にすることもなさそうなもんだがとも思った。

「ありがとう。戻ろうか。」

 包帯が巻かれた腕の動きやすさを確かめるようににぎにぎと動かしてから、ナマエは立ち上がった。

「わたしは負けちゃったけど、シカマルは勝ったんでしょ。本戦頑張ってね。」

「サンキュ。」

 自分の名前を知っていると思わずシカマルは少し驚いたが、それぞれ仲間のもとへ戻っていった。






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