現世:記憶
幼いころから何度も同じ夢を見る。
ヒゲ面の男の死に顔。荒れた地の果てで大きな爆発が起こるのを遠くから眺める光景。――そして、死体になって還ってきた女の顔。
シカマルがそれをただの夢ではないと気が付いたのはいつの頃か。はっきりと確信したのは中学に進学してナルトたちに会った時だ。初めて会ったはずなのに、シカマルとナルトは『再会』に喜んだ。たびたび見ていたその夢は、いわゆる『前世の記憶』というものらしかった。
「ナルト、サスケ、サクラ、キバ、シノ、ヒナタ……それに、チョウジといの。」
シカマルが見覚えのある顔と名前を読み上げると、やや大きめな学生服に身を包んだナルトがニシシと嬉しそうに笑う。
「上の学年にサイもいたんだ!ゲジマユとかは見当たらなかったけどな。」
懐かしい響きに思わず頬がゆるむ。なぜこんなに大切なことを忘れていられたのか、今では不思議でしょうがない感覚だった。
人が群がる昇降口で、いのとサクラが悪態をつきながら、涙を浮かべて抱き合っている。シカマルも早くチョウジに会いたかった。
「シカマル。」
「チョウジ!」
変わったのは背景と服装くらいの、シカマルの親友であるチョウジはにっこり笑って立っていた。思わず涙ぐみそうになるのを堪えて駆け寄った。
「俺たち、また集合したみたいだな。」
「今日でようやく合点がいった。」
キバ、シノも感慨深そうに頷いた。いつの間にか同期の全員が集合していた。
木ノ葉の忍の同期である9人は、第四次忍界大戦を乗り越え皆大人になり、家庭を持ち、目まぐるしく発展する里を支えた立役者となった。不思議なもので、自分たちがどう死んだのか覚えている者はおらず、ある程度大人になった後の記憶はおぼろげだ。
――そうか、アスマと、親父……。
シカマルは何度も何度も夢に見たシーンが恩師と父親の死であることを思い出した。そして、ふと気が付く。
「……ナマエ、」
ぽろっとこぼれたシカマルの言葉を拾ったのはいのだった。
「ナマエさんや、ネジさん……それに、リーさんやテンテンさんもこの学校にはいないのね。」
「我愛羅たちや先生たちとも会いてェなあ。」
次々と浮かぶ懐かしい面々を思い浮かべて、一同は少しセンチメンタルな気持ちになったが、今いるのは木ノ葉隠れの里でもなければ忍界でもない。たった12年ぽっちだが今現在はこの世界の人間として生きてきている。
前世の記憶は人によってまちまちで、ナルトとヒナタは現世でも仲良くやっているようだが、前世で添い遂げたからといって必ずしもまた恋人に、というわけでもなさそうだ。現にチョウジはカルイとの記憶はそれほど多く持っていないし、カルイがこの世界にいるのかも不明だった。
それでもシカマルは、つい前世の記憶をたどって会いたい気持ちを募らせる。夢の中ではいつも冷たく目を閉じている、一緒に大人になれなかった彼女に。最期まで好きと言えなかったナマエに、今度こそ。