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【R】

 ナマエが上忍待機所を覗くと、目的の人物と自分の師匠が向かい合っているのを見つけた。
 突進する勢いでふたりの間に滑り込むと、ナマエはキラッキラとした顔で目的の人物を見上げた。

「ガイ先生!先日新たな修行をしたおかげで瞬発力とスピードが上がったと思うんです!お手合わせ願えますか?」

 ガイとカカシはちょうどじゃんけんをして勝敗がついたところだったようで、その結果に一喜一憂する間もなくナマエがやってきた。
 パーを出したまま固まるガイに、ナマエは尻尾を振る犬のようにまとわりつく。

「待機命令中なら待ちます!わたしさっき任務が終わったところで暇なんです。」

 ニコニコと普段よりテンションの高いナマエはガイの返答を待った。ガイはじゃんけんに負けたことに感情を割くべきか、自分を慕う可愛い弟子もどきに答えるか数秒迷った。

 その時、先に動いたのはカカシだった。チョキを出していた手をそのままナマエの首の後ろに持っていって首根っこを掴んだ。
 ガイから物理的に距離が離れて驚いた上に急に首の後ろを触られて「ひゃ」と声が出た。

「そのアツ苦しいのやめてくれる。」

「カカシ先生もこんにちは。猫みたいに持つのやめてください。」

 ナマエがカカシの腕を掴むとカカシに気をつけの姿勢を取らせるように、丁寧にその腕を返却すると、またガイの方に向き直った。ガイに夢中なナマエは、いつでも会えるカカシをないがしろにする。

「ナマエに付き合ってやりたいんだが、あいにくこれから俺は任務でな。」

 ガイはいまだに手がパーのままだったので、そのままナマエの頭にぽんとのせた。普段そんなことは教え子であるテンテンにもしないが、ナマエは異常に距離が近いのでガイもつられている。
 ナマエはそんなぁと残念そうな顔をした。カカシは2人のやりとりを白けた目で見ている。

「だがな、今日はリーがいつもの場所で修行しているから行ってみるといい!ナマエの修行相手にぴったりだ!」

「そうなんですか?行ってみます!ありがとうございます!」

 ナマエはガイの愛弟子であるリーとの手合わせも楽しそうだとにっこり笑った。じゃあ失礼します!とガイにいい笑顔で言うと、ナマエは待機所から出ていった。

「カカシ先生もまた!」

 一瞬出ていってからひょこっと顔を出してカカシにも手を振るナマエをガイとカカシの2人は見送った。

「あいつに何したの。お前に夢中なんだけど。」

「ナマエは素直でいいな!」

 ガイは自身の青春についてこないネジとテンテンを思い出して、ナマエの素直さを褒めた。





 ナマエが屋外演習場に着くと、ボロボロになった木のそばでネジひとりが立っている後ろ姿が見えた。

 ――あれ、リーさんがいない……。

 目的のリーがおらずネジだけがいるので帰ろうかと思ったが、自分の視界にネジを捉えた時点で相手にバレていると思い観念して近づいた。

「ネジさん、こんにちは……。リーさんはいますか?」

「リーはさっき任務に呼ばれていった。」

「そっかぁ……。じゃあわたしはこれで、」

「リーと組手をしようとしてただろう。俺が相手をしてやろう。」

 ――えっ、やだ……。

 咄嗟に思ったことが口から滑り落ちそうになった。ナマエはガイ班の皆のことが大好きだったが、ネジのことだけは少し苦手だった。
 中忍試験のヒナタとの試合を目の当たりにして恐怖した第一印象だったし、何もかも見透かしたように遠くから見られるのが、やはり少し怖かった。ナマエには知られたくないやましいことがたくさんありすぎる。

「……じゃあ、お願いします。」

 にっこり笑ったが、きっと少し憂鬱な心の内はすべて白眼のもとで明らかなのだろうと気まずく思った。





 早めに切り上げたいと思っていたネジとの修行は、ナマエの闘志にあっという間に火がつき白熱していた。
 ナマエの戦闘スタイルに合わせて剛拳での組手になったが、普段使っていないにも関わらずネジの強さは驚異的だった。ガイほどではないにしろ、手も足も出ない。

「はぁ……はぁ……ちょっと、ネジさん、タイム……、」

「次で40本目だ。あと1本やるぞ。」

 さらに言えばネジは容赦もなかった。自分にも他人にも厳しいタイプだろうとナマエは予想していたが案の定だった。

「喉が渇いて死にそうなんです……!絶対休憩します……!」

 再び構えたネジの肩をぐいと押して水筒を目指してノロノロ歩いた。失礼なのは百も承知だったが、容赦のないネジに腹が立ちナマエから遠慮と余裕が消えていた。それに、今日はよく喉が渇く日だった。常に飲み物を飲んでいないと渇いてしょうがない。

「はぁ……、」

 コクンと喉を鳴らして息を吐くと、少し離れたところにいるネジと目が合った。意味もなくこちらが目に入っただけなのはわかっているのだが、緊張するからあまり見ないでほしいなと思った。あまり無言でいることが気になるタイプではないものの、少し気まずく思いネジに近づいた。

「柔拳ってどんな感じですか?」

「どんな、とは……。」

「後遺症とか……、修行するにはちょっと危険ですか?」

「そうだな。点穴を突くとしばらくチャクラは練れないし、そうでなくても内蔵が傷付くからやめておいた方がいい。」

「そうですよね……。」

 ずっとネジに手加減をされたままなことが気がかりだったので、思い切って聞いてみたが諦めた方が良さそうだ。ナマエの声が残念そうな音で響いた。

「手加減されっぱなしは性に合わないか?」

 ネジがナマエの胸の内をすべて見透かしたように薄く笑うので、項垂れてはい……と力なく返事をした。ネジはそんなナマエに対してまた少し笑った。一生懸命で負けず嫌いの後輩を、ネジは好意的に思っていた。

「じゃあ柔拳で相手してやろう。チャクラを流し込まなければ大丈夫だ。」

 ナマエはネジの提案にぱっと表情が明るくなり、はい!と元気に返事をした。





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