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【R】

「カカシ先生!」

「ナマエも任務報告?」

「そうです。」

 カカシとナマエはお互い任務報告へ火影邸に向かっているところでばったり出くわした。

 それぞれ任務の報告を終えると、カカシは1時間後に上忍待機所へ行かなければならないが少し時間があると言うので、せっかくふたりとも急ぎの任務が入ってないんだからと修行をすることにした。
 
「カカシ、ナマエ。ちょうどいいところに。」

「アスマじゃない。」

「どうかしました?」

 演習場へ向かうためふたりで歩いていると、前からアスマがやって来た。

「ちょっとシカマルのこと頼まれてくれねーか。」

「どういうこと。」

 アスマが言うには、シカマルとの大事な修行ともう1つの用事をダブルブッキングしてしまったようだった。そこで、カカシとナマエにシカマルの方を頼みたいと言う。

「大事な修行なんですよね?いいんですか?」

「あーシカマルの方はお前ら2人にやってもらった方が良いしな。もう1つの方はいのとの修行なんだ。」

「フーン。俺はこの後待機所へ行かなきゃいけないけどそれまで付き合ってやるよ。」

「シカマルとの修行初めてだし楽しみです!」

 ナマエはいのの修行とシカマルの修行を一緒にすればいいのにと少し思ったが、ひょっとしたらいのもアスマと色の修行なのかもしれないとその提案を飲み込んだ。
 単純にカカシと2人で修行するよりシカマルもいた方が新たな発見もあっていいかもしれないと思ったのもある。

「ナマエ……ガイに似てきたか?」

「最近ガイに修行つけてもらってから修行修行って暑苦しいのコイツも。」

 アスマもカカシもナマエをかわいそうな目で見ていたが、ナマエはあまり聞いておらずアスマの顔をじっと見ていた。

 ――アスマ先生といの……。

「どうした?」

 ナマエはカカシと普段しているような色の修行を、目の前にいるアスマと友だちのいのがしている想像があまりつかなかった。
 下世話な考えをぶんぶんと振り払ってナマエは「なんでもないです」と言った。

 ――まぁサクラとカカシ先生だってあんまり想像つかないけど。





 指定された演習場は、ナマエたちが初めて中忍試験の予選をした場所だった。ふたりがそこへ到着すると、シカマルはぼーっと空を見上げて待っていた。隙あらば修行をしているナマエとは違い、シカマルはのんびりしている。しかし、やる時はやるのでナマエからしたら羨ましかった。

「カカシ先生とナマエ?なんでここに。」

「アスマ先生に頼まれたの。わたしたちが代理。」

 シカマルはそれだけですべてを察したようで、修行の目的と内容を手短に話した。
 
 中忍試験のサバイバルとトーナメント戦をするにあたり、危険な動物や血の気の多い受験生を殺さずに――できれば気絶もさせずに止めるようになる、それがシカマルの修得しなければならない技術だそうだ。
 中忍試験の準備で忙しいはずなのに、こんな時期に担当上忍と修行?という疑問が晴れた。シカマルはいつも忙しそうで少し同情してしまう。

「今回の受験生は血の気の多そうなやつが多いんだと。」

「もうできるんじゃないの?」

「まぁある程度は。後は反復練習というか、いろんなケースで試してみるって段階っす。」

 カカシとシカマルの会話を聞きながら、シカマルは練習する必要なんてあるのだろうかと思った。





 カカシとナマエはいつもの修行より泥臭い組手をしていた。
 通常は性質変化を中心とした修行をしているが、中忍試験を想定して体術を使っている。

「っ!」

 別の攻撃に気を取られているうちにカカシの鋭い蹴りをガードなしでモロに食らいそうになり、ナマエは息をのんだ。

「あっぶねー……。」

 ナマエの目の前でカカシの脚はぴたりと止まった。シカマルが影真似の術を使ったため、間一髪のところでカカシの攻撃は当たることはなかった。シカマルはハァーと大きく息を吐き、ナマエはぺたんとその場に尻をつけた。

「死ぬかと思った……。」

 カカシはシカマルが止めることを想定して、いつもより加減をせずにナマエへ攻撃を仕掛けた。それでもまったく本気ではないのだが。

「カカシ先生殺気出てた!蹴り殺されるかと思った!」

 ナマエは座り込んだまま、やや遅れてバクバクとうるさい心臓を誤魔化すために大きな声を出した。カカシはナマエを無視してシカマルに向き合っている。

「今は影首縛りの修行中なんだから影真似で止めちゃダメでしょうよ。」

「今のはナマエが……、まぁそうっすね。カカシ先生のスピードにはまだ俺の影首縛りはついていけてない。」

「影真似でだいたいは止められるだろうけど、物理的に距離を引き離さなきゃいけない場面もあるかもしれないからどっちでもできるようにしないと。」

 シカマルは、こんな速さの攻撃は下忍に出せないとは思いつつもはいと返事して自分の課題と向き合った。
 しかし、その前にといまだに腰が抜けているナマエを起こしてやるかと思った。

「ナマエ、」

 シカマルが動くより先に動いたのはカカシだった。
 ホラ、と仕方なさそうにナマエに腕を伸ばす。その一連の動きをシカマルは見ていた。なぜかその時、いのが言っていた言葉が浮かぶ。

 ――「ナマエとカカシ先生ってなーんか空気が違うのよね。」

 ナマエの腰に手を添えて「今の見切れるようにならないと」と眠そうな目で見降ろすカカシと、「まだ無理です」と拗ねたような声を出してカカシを見上げるナマエ。
 シカマルは2人を見ながら、男女のアレコレに疎いシカマルでもようやくいのが言っていたことがなんとなくわかったような気がした。





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