助演男優賞 | ナノ 06


 てっきりナマエと2人で海へ行くものだと思っていたシカマルは、ナマエが「いのが夏休み始まって即行きたいって」と言ってきたことによりグループで行く予定だったことを知った。え、と間抜けな声が出かけてぐっと喉元で留まって良かったと思った。

「キバが先輩から車借りられるっていうから、あともう1台。」

「何人だよ。」

「キバ、ナルト、サイ、タマキ、サクラ、いのとわたしたち。」

 シカマルの知らぬ間に想定より6人も増えていた。へーと言いながら、サイといのがいてお前はいていいんかとシカマルは思ったが、細かいことはきっともうどうでもいいんだろう。

「シカマル実家だよね?家の車借りられないの?」

「……まあ聞いてみる。」

「ありがとう!無理だったらレンタカー借りよ。」

 父親に説明するのがかなりめんどくさそうだと思ったが、まぁいいかとシカマルは思った。もともとナマエと2人で行く時は借りようと思っていた。

「じゃあテスト乗り越えて最高の夏開幕しよ!」

 ナマエは恥ずかしげもなくキラキラの笑顔で拳を挙げた。シカマルも釣られてふっと笑った。





 都内から比較的行きやすく、治安の良さそうな海水浴場は、夏本番より少し前のわりには人が多くてかなり賑わっていた。

「うおー!」

「海だーっ!」

 キバとナルトが騒ぎ、ポイポイとTシャツや短パンを脱いでいった。シカマルは海水浴なんて小学生のころぶりだと思いながら、サイとレジャーシートを敷いた。

「早くサクラちゃん来ないかなー!」

 ぐふふと笑うナルトを白けた目で見つつ、シカマルも内心はドキドキしていた。ナマエは脚の露出度は普段から高いものの胸元を露出しているところは見たことがないし、服の上からでもなんとなくわかっていたが、スタイルは良いだろう。この日のために少し絞るとへらっと笑っていた時から、シカマルも内心浮かれていた。

「キバ、タマキとはどうなの?」

「もうちょい!」

 サイがボトムを脱ぎながら聞くと、キバはピースして答えた。ナルトの家で飲んだ時にいい雰囲気とは思っていたが、キバの方もよろしくやっているようだ。

「シカマルは……、」

 サイが言いかけると、サイがシカマルの後方に視線が動いて止まった。シカマルも振り向くと女子4人がやって来るのが見えた。いの、サクラ、タマキ、ナマエは全員美人でスタイルも良く、かなり目立っていた。
 いのは黄色と黒のビキニ。サクラも髪色に合わせたピンクのビキニで、タマキは赤色のハイネック水着。ナルトとキバがうおー!とテンションが上がって手を振ると、4人も気付いて手を挙げた。

「シカマルにナマエはちょっと荷が重そう。」

 水着姿のナマエを見て、サイはにっこりシカマルに言った。ほっとけ、と思い無視した。

 ナマエはオーソドックスなホルターネックタイプの黒いビキニを着ていた。胸もそこそこあり、スタイルが良く肌が白いので似合っていた。シカマルは欠点なしかよとなんだかムカついてきた。

「海よー!最高!」

「パラソルほしくない?借りる?」

「じゃあ俺借りてくるってばよ!」

 ナマエがシカマルの隣に来て、荷物を取り出し始めた。シカマルは似合うと言ってもいいのか迷いながら黙って海を眺めた。

「いの、似合うね。」

「うふふ、ありがとう。サイってば相変わらず色白で羨ましいわ。」

 ナマエとシカマルの隣でサイといのがイチャつき始め、サラッといのを褒めるサイを少し羨ましく思った。

「本当だ、わたしより白くない?」

 ナマエがサイの隣で腕を出し、サイも腕を出した。

「まったく焼けないんだ。」

「ずるーい!」

 ナマエがね、といのにも声をかけてまたシカマルの方へ戻ってきた。視線を感じてチラっとナマエを見ると、案の定シカマルを見つめていた。ねぇねぇとナマエが顔を近づけてくるので、シカマルはドキッとした。

「わたし、このビーチで一番イケてるかもしれない……。」

 ナマエがシカマルにこそっと耳打ちするので、シカマルはキョトンとして、ふはっと笑った。

「お前自意識過剰すぎだろ。でもまーたしかに似合うけど。」

「今日のために豆乳ドーピングして夜炭水化物抜いたもん。」

「成果出てんじゃね?」

「シカマルもヒョロガリかと思ったら意外と筋肉ある!」

 ナマエがシカマルの二の腕に手を伸ばし、触れそうで触れずに手を戻した。身体を直視できない分、いつもより顔をはっきり見て会話している。いつの間にかナマエのペースで、自然とナマエのことを褒めていた。敵わねーなと思いながら、クーラーボックスから取り出した酒をナマエに渡した。

「ほら、飲むだろ?」

「わたしはカルピスにしようかなー。」

「酒飲まねーの?」

「シカマル飲んでもいいよ。わたし帰り運転してもいいから。」

「いや、俺はもともと飲まないつもりで来たから。」

「そ?まぁでも一応ね。」

 ナマエは夏だ海だと騒ぎながらも、意外と冷静で気を遣えていた。

「お前、そういうところ……ギャップだよな。」

 好きとか良いとかは言えずにシカマルは誤魔化したが、ナマエには伝わったようでにんまりと笑った。

「ありがと!」

 ナマエは夏が似合って眩しかった。

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